■技術の進化 2 AIの行方  (No.615)

技術の進化に関して,その代表的なものの一つにAI(Artificial Inteligence 人工知能)があるが,これについて述べてみよう。

  AIとは

AIとは,Artificial Inteligence で日本語では「人工知能」と云われている。「言語の理解や推論,問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピュータに行わせる技術」(ASCU.jp 2018)とも定義されている。要は,コンピュータで人間が行っている脳の働きをしようとするものである。このAIと云う言葉は古く1956年に初めて使われたものである。

  AIの進化

現在のAIは第3次AIブームと云われており,1960年代の第1次ブーム,1980年代の第2次ブームを経ている。その間,いずれも本来の人口知能の実力が理解されないまま,限界が見えた段階からブームが去っていたとされている。それが2010年以降,現在の第3次ブームが始まり,現在に至っている。

我々がよく知っているのは,AIが将棋,オセロ,囲碁などの名人と戦い,AIコンピュータの方が勝ったと云うニュースである。つまり,人が経験と勘で戦う事に対して,AIではこれまでの勝負などから,駒の進め方の方法について,あらゆるパターンを認識して,相手より有利な戦法を採ることができるようになってしまった,と云うことなのである。つまり,人間が思考する能力以上にAIのコンピュータが思考できるまでになってきているのである。

これらは,AGI(Artificial General Intelligence)と呼ばれ,特化型人口知能と呼ばれ,個別の領域に特化して発揮する人口知能のことで,人間以上の能力を持つものが多く実用化されつつあり,コンピュータ将棋や自動運転技術などがある。また,もう一方で,GAI(Growing Artificial Intelligence)と呼ばれる,汎用人口知能と呼ばれるものがあり,これは特化型と違い,異なる領域で多様で複雑な問題を解決する人口知能のことである。

第3次ブームの特長は,ビッグデータ(大量データ)の普及,ディープラーニング(深層学習),人工知能の影響力や脅威が拡散などが挙げられている。コンピュータの能力が上がるに連れ,大量のデータを素早く活用・判断ができるようになり効率化など役立つ機能が増して来ており,また一方では,ディープラーニングと云われる技術では,人間の神経細胞の仕組みを模したシステムが作られ,多層構造のニューラルネットワークに大量の画像,テキスト,音声データなどを入力することで,コンピュータがデータに含まれる特徴を各階層で自動的に学習してゆくものである。

  AIを人間に例えると

以上のように,AIの技術がどんどん進んでいる。人間の能力を追い越す勢いで,それを危惧する人もいる。それが,シンギュラリティー(Singularity)と云われる技術的特異点で2045年頃には到達するとも言われている。(詳細は後述) しかし,私が見るところでは,人の成長と似通っており,幼子がどんどん記憶力を上げ,まるで天才のように感じられる時期がある。AIについても同じで,記憶力の量が膨大で,計算するスピードが人間の能力を遙かに超した領域に入ってきていることは間違いない。

人の成長同様,教えられたことを記憶し学習する能力は付けた小学生から中学生時代に,現在(2019年)のAIはいるように感じられる。つまり,まだまだ一人前の大人にはなっておらず,子供の優れた天才レベルである。記憶に基づく判断力,即ち,過去の事例から未来を予測し,進むべき道を選ぶ判断力は十分付いてきているが,記憶にない新たなことに対する判断力,対応力はまだ不十分な未成年である。

人としての成長はこれからである。記憶力が抜群で,計算スピードも正確無比であることは,ある程度優秀な人間には違いないが,それだけでは,まだまだ人間としては不十分で,さらにより広く経験を積むことで学習し,新たな出来事に対しても,対応できる能力を付け,更には新しいことを創造する能力を付けてこそ,人間の大人として一人前になれるのである。ただいま,その進化系の途中である。

一人前の大人となるためには,まだまだ時間が掛かり,いつになるかは今のところ予測が困難である。人間に取って代わって,人のする仕事などが無くなると喚くのはまだまだ時期尚早である。もちろん,優秀であるには違いないので,単純な作業はコンピュータロボットがする時代になることは間違い無いが,創造力を働かす知的分野への進出には時間が掛かるであろう。

  シンギュラリティ(Singularity  技術的特異点)とは

シンギュラリティと云う概念は,人工知能の権威であるレイ・カーツワイル博士によって提唱された「未来予測の概念」で,人口知能が発達して,人間の知能を超えることが想定され,それが2045年頃には人間生活にとっても大きな変化が起きる,とされるものである。即ち,半導体の進化で用いられたムーアの法則(トランジスタの集積度は18カ月毎に2倍になる)同様,人工知能の進化も指数関数的に進化し,その延長線上で2045年頃には,人工知能が自ら人工知能を生み出すことが可能になり,人間の脳以上の働きをすることになると推測されるものである。

このことは,最近話題になっているビッグデータの活用やディープラーニング(深層学習)が益々盛んとなり,ロボットが現在のような作業ロボットではなく,人間の知的作業にも進出してくると予想される。また,昨今のIoT技術に関しても,さらに進化した人工知能を活用した社会が実現されているだろうと云われている。

  AIの行き着くところ

AIに関していろいろな話題が挙がっているので,否応なしに飛び込んでくる情報に惑わされてはいけない。ただ,AIの進化は留まるところを知らない。将棋やオセロの名人に勝ったかと思っていたコンピュータAIが,いつの間にか接客ができるまでになっている。どんどん人間に近づいてきていることを知らされる。

多くの人々は,その進化の真髄を知らず,マスコミなどで報道される程度の知識しか持ち合わせていないので,人間の知能を超えるようなAIの実現はあり得ないとたかを括っている。自動車の組み立てなど,危険を伴う単純作業はロボットに置き換わってしまっているのは随分以前のことであり,日本人が避けているような仕事を外国人労働者が賄っている今日であるが,こうした仕事は確実にAIロボットが行うようになるのは時間の問題である。

良い意味でこうした日本人が回避したいような仕事を,AIロボットに委ねることに反対する人は少ないだろう。しかし,それがいつしか,自分たちが生活するために働いている仕事まで,AIロボットに奪われるようなことがあっては一大事である。だが,当然のごとく,そうした時期はやってくるだろうと想定される。

そうしたとき,人の拠り所となる仕事はどんなものか?頭を働かせた知能作業だと云っても,AIロボットの方が知能は優秀で,人が出る幕は無いだろう。AIロボットがどこまで頭が働くか疑問だが,人でしかできないひらめき,創造力を活かした芸術,或いは臨機応変な対応力を必要とする仕事など,まだまだAIロボットの進化を想定しても苦手とすることはまだまだ多い。また,AIロボットを上手く動かせるような職業が新たに出現することも想定される。

むしろ,AIロボットが特長とする部分はロボットに委ね,人が得意とする部分は人が行うようにする棲み分けが必要になってくるのではなかろうか?

AIロボットが社会で活躍する時期は迫ってきている!!

 

[Reported by H.Nishimura 2019.02.04]


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