■大坂なおみ選手が快挙 (No.614)
全豪オープンテニスで,大坂なおみ選手が全米の4大会に引き続き優勝する快挙を成し遂げた。これによって,女子テニスのランク1位になることが決まった。
テレビにくぎ付け
1/26の午後5時半からNHKの裏番組で放送が始まった。丁度大相撲も翌日に千秋楽を迎えると云う14日目の好取組で,貴景勝,玉鷲が優勝を争っているところだったので,テレビを2画面にして観ていた。2人の相撲が終わると,テニス観戦だけに切換,ほぼゲーム開始の場面からずっと見続けることができた。
試合内容は色々な番組で解説されているので詳しく説明してもムダなことだが,流石決勝戦とあり,息詰まる熱戦だった。大坂なおみ選手はサーブが好調で,第1セットは共に相手にブレークチャンス(相手のサーブのときに勝つこと)を与えるが,ここと云うときの集中力で凌ぎ,お互いキープ(自分のサーブのときに勝つこと)を続け,6対6のタイブレーク(勝ちゲームが6ゲームずつになったとき,7点先取した方が勝つルール)に持ち込まれた。
相手のクビトバ選手(チェコ)は長身のサウスポーで,外側に切れるサーブを武器にここまで勝ち進んでいるだけに,大坂なおみ選手もこのサーブへの対応がままならなかった。しかし,試合の経過と共に対応できるようになりだし,タイブレークの2本目を,ストレートに打ち返しポイントを取ったところから,流れが大坂なおみ選手に傾き,7−2で第1セットをものにした。
第2セットに入っても大坂なおみ選手の好調は続き,第2ゲームで先にブレークされたものの,その後第3ゲームをブレークバックすると,一気に大坂なおみ選手に流れが行き,5−3となり,第9ゲームでは40−0ともう1ポイントで優勝が目の前になり,誰もがこのまま大坂なおみ選手がチャンピオンになると固唾を呑んで見守ったが,そこからクビトバ選手が必死にくらいつき,3ポイントを取ってジュース(40−40で,2ポイント先取した方が勝つ)となり,その勢いのままクビトバ選手が逆転するねばりをみせた。
こうなると流れは一気にクビトバ選手に傾き,続く3ゲームを連取されてしまい,このセットを落としてしまった。観ていても明らかに冷静沈着なクビトバ選手に対し,大坂なおみ選手は苛立ちが前面に見られ,このままだと大坂なおみ選手が負けてしまうのではないかと心配された。後からの解説者も多くが,このまま大坂なおみ選手が負けると思ったと言われている。
1セットずつ取った第3セットが始まり,その前にトイレ休憩を取り,精神統一を図った大坂なおみ選手が立ち直りの気配を見せた。感情を押し殺し,何とかしようと云う執念が見えた(後ほど彼女は,ロボットのように感情を抑えたと言っている)。第3ゲームをブレイクに成功すると,そのままキープを続け,5−4で迎えたサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップ(自分のサーブで勝てばチャンピオンになるゲーム)で40−10から中央に強烈なサーブを打ち込むと,流石のクビトバ選手もリターンを返すことができずゲームセットとなった。
夕食を食べながらの観戦で,試合開始からゲームセット・表彰式まで約3時間テレビに釘付けされた。
技術面の素晴らしさ
私も健康維持のため,週に1回テニスをやっているので,テニスのことはよく判っている。大坂なおみ選手の特長は,先ずは女子選手では優れた早いサーブが打てることで,これは大きな武器で,追い込まれた状況でサーブでポイントが取れることで,幾度かの場面でサーブが活かされてきた。
またストローク(打ち合う)に於いても,強烈なフォアハンド,バックハンドストロークがあり,ラリー(打ち合いが続いている状態)では決して引けを取らない素晴らしさを兼ね備えている。今回の大会でも,打ち負けした場面はそれほど見掛けなかった。ただ,相手もさることながら技術面で素晴らしい選手が多く,アンフォーストエラー(自らのミスショット)をさせられる場面も多々あった。しかし,それにも勝るウイナー(相手がボールに触ることもできない打球)が,試合が進むと共に増したことも素晴らしかった。
特に対戦相手との比較に於いて,サーブに対するレシーブの立ち位置が前で,ファーストサーブではベースラインギリギリに立ち,セカンドサーブになると,ベースラインの中1メートルの立ち位置を取り,相手にプレッシャーを掛け続けた。これは勇気の要ることで,スピードサーバーのボールへの対応が非常に難しくなるが,いとも簡単に受けとめる技術が備わっていた。
また,試合中の適応能力も凄かった。決勝戦のクビトバ選手との対戦は,サウスポーで外側に切れて行くサーブに対して,最初は全くボールに触れることもできなかったが,1セット目の後半から立ち位置を半歩から一歩外側にシフトさせ,確実にリターンの対応ができるように変わって行った。サーブで崩してポイントを取るクビトバも,大坂なおみ選手の対応力の素晴らしさに為す術もなかった。
精神面の成長
大坂なおみ選手の弱点は,何と云っても精神面の弱さである。つまり,負けが込んでくるとイライラが始まり,それが前面に現れ,ラケットを投げつけたりして,相手にイライラしている状態を見せてしまうことにある。今回の全豪オープンテニスでも,最初の頃は,特に粘り強い相手には,そうした面が見られ,危うく負けてしまうかと思われる場面があった。
しかし,そうしたいらついた場面でも,グッと堪え精神統一するために自分の感情を抑制しようとする場面があった。決勝戦の第2セットを逆転されたときなどがその典型で,涙顔を見せながらも,トイレ休憩を挟むことで何とか精神面を落ち着かせようとしていた。感情を表に出すことは,スポーツ選手ではありがちなことで,決して悪いことではない。自分を鼓舞すると共に,相手を威圧することでもある。
ただ,大坂なおみ選手と対戦する相手は,技術面では押されることが多いので,精神的な弱みを上手く引き出し,イライラさせることでミスを誘う作戦を立ててくる。相手はそこに勝機を見出す。これをはね除ける精神面のタフさが求められ,これを今回の大坂なおみ選手は見事にやってのけたのである。
コーチからのアドバイスが一切受けられないグランドスラムの大会において,大坂なおみ選手が一段と大きく成長した場面がみられたのである。だから,勝つべくして勝ったグランドスラムでの勝利であった。
大坂なおみ選手,全豪制覇おめでとう!!
[Reported by H.Nishimura 2019.01.28]
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