■労働力不足の問題 (No.610)
先日,移民政策について述べたが(No.605),日本の労働力不足はいろいろな問題を引き起こしている。外国人に頼らなければ,企業として成り立たないような業種や人手不足が深刻な問題になっている業種もあるようである。
生産年齢人口(15歳〜65歳)の減少
日本では団塊の世代が生産年齢人口から外れ,老年人口(65歳以上)になり,働き手の肩に多くの扶養人口が乗っかかる構図になっていることをよく耳にする。年金が破綻するのではないかと云われるのも,こうした人口構成が大きな要因である。
生産年齢人口は,戦後どんどん増加してきたが,1995年のピーク時には8700万人強だったが,それ以降減少を続けており,2050年代には5000万人を切ると予測されている。ピーク時の1995年には生産年齢人口の割合が70%近くあったものが,2018年には59.77%と60%を下回ったとのことである。
こうした生産年齢人口の減少傾向は,長寿命化と共に,不可避な問題で,定年延長や働き方改革などと労働者が生活しやすい環境を整えようと躍起になって進めようとしている。もちろん,こうした動きは重要なことで,安全・安心な社会生活を目指そうとしていることは良く理解できる。しかし,「一億総活躍社会の実現」などと,スローガンだけが踊り,国民が納得して全体で盛り上げるような活動には到っていない。
本当は,年齢に関係なく,豊かな生活をするために少しでも働きたいと云う人が,その秘めたエネルギーを生産性向上に貢献できるような社会づくりで,少しでも年収が増えることで幸福感を味わいたいと願う人が報われるような社会である。アベノミクスは株価などの上昇に見られるように,持てる人には貢献するような施策は目立つが,多くの国民が願う,些細な幸福感には全く届いていない。これでは,生産年齢人口減少による労働力不足には何ら応えていない。
低賃金労働
生産年齢人口の減少は,労働力不足の大きな要因の一つではあるが,低賃金労働の問題も大きいようである。つまり,日本人は裕福になったせいか,安い賃金の仕事には就かなくなってきている傾向がある。もちろん高い賃金の仕事に就きたいのは当然だが,敢えて汚い,きつい,危険な,とされる所謂3Kの仕事を回避する。最近,新3Kと称し,きつい,帰れない,給料が安いなどと云われるものも出てきているようである。
この低賃金労働の労働力不足を補っているのが,外国人労働者である。本来は,日本人がきつい仕事であっても,それ相当の賃金が貰えるなら働きたいと云う人は居る。低賃金だから働き手が無いのである。したがって,本当に労働力が不足しているのではなく,働く場所が無いのである。経営者はそれでも必要とする労働力を,何とか低賃金でも働く外国人に委ねるのである。
労働力が不足しているから外国人労働者を増やせと云う論理は,現状から見ると一見正しいように写るが,実は安い労働力を求めている経営者側の論理で,それが恰も,生産年齢人口が減少しているからだと付け替えしているだけで,仕事に相当する賃金を払いさえすれば,労働力不足は改善できる部分は大いにあるのである。
この傾向は,きつい,汚いと云った仕事に限らず,大企業でも安い賃金に抑えるため,正規従業員ではなく,非正規従業員で賄うことで,賃金を抑えている。株価が上がり,景気は回復傾向にあると云う日本経済であるが,企業の内部留保は増加しているが,全体としてはまだまだ低賃金で労働者を苦しめ,なかなか実生活の景気改善の感触が沸かないのは,こうした低賃金労働と云う根深い問題を抱えているのである。
外国人労働者を増加させる法案も,こうした日本経済の歪みを助長することはあっても,真からの労働力不足を解消させるには,程遠い安倍内閣特有のパフォーマンスでしかないと言えるのではないか。
国民の実生活が豊かだと実感される社会の実現を!!
[Reported by H.Nishimura 2018.12.24]
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