■日本の企業が危ない (No.608)
先日の毎日新聞(12/6)の記事で,日本の企業の研究開発費が外国企業に劣っていることが載せられていた。
毎日新聞の記事
2011年と2016年の企業に於ける研究開発費のランキングが載せられており,2011年ではトヨタがトップで,ベスト30にはパナソニック(13),ホンダ(14),ソニー(18),日産(20),日立(24)と自動車,電機業界の大企業が並んでいたが,2016年では,日本の企業はランキングが大きく落ち,トヨタ(13),ホンダ(21)とベスト30には,この2社しか入っていない状況だった。
記事に拠れば,2003年頃,NECの基礎研究所にカナダのベンチャー企業が量子コンピュータの共同開発を持ちかけてきたが,余りにも小さなベンチャー企業で,釣り合いが取れないと断ったそうだが,NECが進めていた汎用型の開発ではなく,特化型の開発に集中し,実用化に成功し,日本は遅れをとってしまっている状況にあるという。
日本の企業は大企業病に陥り,事業の転換が上手くできず,基礎研究は縮小する一方,学術論文の数も減ってきており,多くの研究者がリストラされ,大学などへ移籍するなど,「大企業は贅肉を落とそうとして,脳みそを切り落としてしまった」と言う人もいる。基礎研究ができなくなったことに危機感を抱き,基礎研究を見直そうとする動きもあるようだ。
なぜ,こんな状況に陥ったのか?
企業は収益を出すことが最低不可欠とされ,景気が好調なときは資金に余裕があり,ムダのように見える,実現までに長時間を要す基礎研究に費用を捻出することもできる。2011年では日本企業が未だ余裕が残されていたのである。しかし,昨今の競争激化に伴い,日本の企業も自動車業界のトヨタなどを除き,経営的には苦しくなってきている。
こうした状況下で一番リストラされやすいのは,収益の出ていない事業であり,成果がなかなか見えない基礎研究などがやり玉に上がるのは,必然的でもある。また,研究開発の内容もどんどん変わりつつあり,開発スピードも速まり,特にソフトウェア技術を活かした開発には,目まぐるしい進化があり,研究開発費への支出もソフトウェアの会社が上位になってきている。
物づくり中心の日本企業が変貌を遂げた新しい業界に追随できていないのは明らかである。今更追い掛けようとしても,益々開くばかりで太刀打ちはできる筈もない。後から追い掛けることよりも,高品質の物づくりはまだまだ日本が得意とする分野である。ソフトウェア技術が発展しても,人が使うものはやはり小型化や高品質が求められることは間違いない。日本の特長を捨てることはない。これらの特長をまだまだアドバンスさせる技術は重要視されることは明らかで,若き技術者たちは惑わされることなく,日本の特長を活かした開発技術に邁進して欲しいものである。
研究開発費が絞られている現状を打破せよ!!
[Reported by H.Nishimura 2018.12.10]
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