■技術者の眼 17 600回を迎えて (No.600)
いつしかこのエッセイも600回を数えるに到った。
ホームページの経緯
エッセイを書き始めて10年余り,毎週書いていてついに600回になった。当初は退職したばかりで,再就職を果たし,まだまだ元気で活躍できるが,その一方で若い技術者に少しは伝承したいこともあり,このホームページを作ることになり,毎週いろいろな出来事や再就職した職場で出くわす,新しい感覚をそのまま書き綴ってきたものである。
以前にも述べたが,元々勤めていた職場で,身近な出来事に対する考え方を述べるコーナーを設けたホームページを,自らが進んで立ち上げていた経緯があり,若い人に好評だったので,それを退職してからも続けようとしたもので,以前は職場の仲間に向けたものだったが,不特定多数の若い人に閲覧できるようにしたものである。
元の職場のノウハウを開示している訳ではないので,別段咎められることはないだろう。エッセイの中の僅かでも,世の中の若い技術者に少しでも役立つことがあれば望外の喜びであると思っている。
若い技術者に伝承したいこと
新入社員として入社して,上司から仕事のやり方については詳しく指導され,そのうちいろいろな失敗も重ねながら次第に成長して行く過程を歩む。しかし,昨今の状況を知らないので精確には判らないが,基礎的なことを丁寧に指導される機会は昔ほど多くは無いように感じている。
技術者として,実験などを任されるが,それに対して,目的,実験内容,結果,観察・評価,考察など一連の流れの報告書をまとめ,上司に提出する。最初の内は,それに対して上司から事細かにチェックされ,時には書き直しを命じられるなど指導されたものだった。もちろん,当時は手書きであり,文字がきれいか,乱雑かでも,受ける印象が違ったものだった。
それが最近では,パソコンでの文章であり,上司の添削指導も,直接的なことは少なく,メールでのやりとりで済まされてしまうことが多い。そこでは,生の,息の掛かったやりとりはできない。確かに,昔と違って便利なツールがあり,それらを活用することが必須である。だから今のやり方を否定するつもりはない。ただ,それらを補うものが必要である。だが,現実的には何もできていない。
我々が若い頃には,経験を積んだ先輩が居て,積極的に指導していただいた。今の上司にそれを求めるのはなかなか難しい。ならば,我々が教えて貰ったことを惜しみなく若い世代に受け継ごうではないか,と思った次第である。直接の指導ではないので,理解が難しいことがあるかも知れない。文章だけでの片方向での伝承なので,十分に伝わらないことも危惧する。
しかしやらないよりも,少しでも伝承できれば,それで十分である。もちろん,論理的に十分で無い部分もあるだろう。記述した内容の半分,否30%でもよいので伝わればよい。あとは,自分たちの頭で考えてくれればよい。自分たちの頭で考えることも非常に大切なことで,言われたままを呑み込むよりも,自分の知識として有意義なものになる。
こんな思いをしながら,齢を重ねてきた。殆ど私の頭の中の知識は出し尽くした。したがって最近は,身近な出来事に関する見方について述べることが多くなってきている。一側面の見方で,それらを押しつける気持は毛頭無い。ただ,一側面の見方から,自分の考え方を見出して貰えば十分である。
自分の頭で考えてみよう
[Reported by H.Nishimura 2018.10.15]
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