■技術者の眼 11 栄枯盛衰  (No.592)

「沙羅双樹の花の色,盛者必衰のことわりをあらわす。おごれるもの久しからず,ただ春の夜の夢のごとし。・・・」とは,平家物語の一節である。繁栄を極めたものは必ず滅びて行くことを示したものである。企業の繁栄も当にその通りである。

  携帯電話の好調

携帯電話が依然好調をキープしている。携帯電話が普及し,その後スマートフォンが出て,その便利さが人気を呼んでいる。今やスマホかガラケーを持っていない人は極限られた状態になってしまっている。我々の70代世代でも携帯電話を持っていない人は数えるほどしかいない。連絡の手段として貴重な媒体で,持っていないと仲間外れにされてしまうほどである。

スマホの機能が高機能化して,パソコンの代わりをするほどになっており,パソコンのメールよりも携帯のメールの方がいつでも,どこでも簡単にできる便利さになっている。前述したことがあるが,カメラ機能も高機能化して,一昔のバカチョンカメラよりも上回り,小型カメラの販売をも低迷させてしまっている。

不思議なもので,スマホを十分使えなくとも,持っていると云う人が結構多い。実際,スマホの高機能化に十分ついていって使いこなしている人はどれほどいるだろうか?ラインも便利なもので,スマホを持っている人の殆どが利用している。仲間との連絡に必須のアプリケーションになっている。しかし,使うことに苦労している年輩者は結構居る。つまり,機能を使いこなす前に所有することが先決なのである。そのブームに乗って買う人が居るから当然販売が伸びる。

流行はスマホにも見られるように,機能を十分使えそうだから購入するというより,みんなが持っているから自分も持ちたい,或いは持たざるを得ない状況におかれて持っていると云う人々が圧倒的に多いのである。もちろん,若い人は興味本位に,次々と新しいアプリケーションに順応し,やがて使いこなすようになっている人も多い。類は友を呼ぶと云う現象である。

  テレビ・ビデオの衰退

携帯電話の盛況の中で,一昔の王者だったテレビ・ビデオ業界は様変わりしている。飛ぶ鳥を落とす勢いのあった業界も,今では多くの工場が閉鎖に追い込まれてしまっている。20世紀後半のテレビ・ビデオ業界の勢いはすごいものがあった。とにかく,企業内の売り上げのかなりのウエートを占め,アナログからデジタル化,さらには大画面化などと家庭内に大きな波を押し寄せて行った時代だった。

社会人になって半世紀が経つが,企業の盛衰,業界の盛衰など一世を風靡したものが,次々と衰退して行く姿を垣間見してきている。テレビ・ビデオ業界のように,あれだけの王者だった業界が,今ではその姿が全く見られなくなってしまっている。つまり,いつまでも永遠に王者たりうるものは世の中にはあり得ないのである。

だから,今絶好調の携帯電話業界もいつまでも繁栄し続けられると云うことはなく,いずれ衰退する時期が来る。テレビ・ビデオ業界と同様に。何かが,それが定かではないが,置き換わってくるに違いない。もちろん,ガラケーがスマホに置き換わったように,次世代のスマホが次に続くかも知れない。だが,長い眼で見れば,それも時間の問題で,やがてスマホに代わるものに取って代わるだろう。

技術者は,今から,スマホに代わるものの開発に取り掛かる必要がある。ピッタリ何か判っていれば苦労しない。一昔前には,携帯電話がこれほど普及するとは思われなかったように,20年後にはスマホに代わる便利なものが世の中を席捲しているように思う。

携帯電話に代わる新製品を見つけ出そう

 

[Reported by H.Nishimura 2018.08.13]


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