■技術者の眼 10 高校野球100回記念大会  (No.591)

甲子園で高校野球の100回目の記念大会が始まった。記念大会とあり,大阪,兵庫など南北に分けられ,参加校が56校と増え,熱戦が17日間に亘って繰り広げられる。昨年は母校が出場して甲子園まで応援に駆けつけたが,今年は県予選で敗退し,テレビでの観戦である。

  100回の記念大会

大正4年に始まり,戦争での中断があって,今年で丁度100回目の記念大会とあり,いろいろな盛り上がりを見せている。一方で,例年に無い猛暑が続いており,熱中症の対策に注意が払われ,ペットボトルを後のポケットに入れた入場行進であった。56校の入場行進で一同が揃い,開会式が始まる直前には,水分補給のタイムが設けられ,選手一同,及び関係者一同が,ペットボトルから水を飲む瞬間が映し出されていた。

始球式は元巨人やヤンキースで活躍した松井選手が行い,抽選で偶然にも引き当てた母校の星陵高校がバックを守ると云う場面があった。放送で初めて知ったが,2日目以降決勝戦まで毎日第一試合の前に,高校野球で活躍したレジェンドが次々と始球式を行う設定がなされていると云う。ザッと紹介されたが,昔懐かしい顔ぶれの面々が出てこられ,これもなかなかの演出である。

甲子園での高校野球は,球児達の憧れの場であるが,日本人の誰にとっても,都道府県の代表が戦いを演じるので,母校が出場していなくとも郷土愛を感じさせる一面があり,一大イベントであることには違いない。それが積み重ねられ,100回も続けられたことは,それだけの魅力があるものなのである。

  炎天下の中の甲子園

球児の憧れである夏の甲子園であるが,この猛暑で熱中症の人が続出している中,炎天下での試合に異議を唱える人も出てきている。熱中症対策は十分配慮されているとはいえ,熱中症で倒れる人が居ないか心配である。特に,選手達は若く,日頃の鍛錬を十分こなしてきている体力をもっているであろうが,スタンドで応援する人達である。

私の場合,暑さに弱く,熱中症症状を起こした経験が何度かあり,例え今年に母校が出場したとしても,この暑さが続く限り,甲子園のスタンドでの応援は遠慮したと思っている。日陰がなく,特に3塁側は午後の太陽を真正面から受け,体温を遙かに超える周囲温度になることは確実で,水分補給を十分したとしても,私の体力ではとても耐えられる自信は無い。

また,応援を始めると,一球一打の変化に気を取られ熱心さが昂じて,ついつい熱中症対策を忘れてしまう危険性を孕んでいる。特に,接戦など手に汗を握るような場面があればあるほど,廻りにも感化されてしまうのが応援席である。応援する人は球児達と違って,日頃から身体が十分鍛えられているとは言えない人々も多い筈である。特に,卒業生である年輩者達も多く見られ,この暑さに耐えられない人が続出するのでは無いかと心配である。

高校球児の熱中症などの懸念から,真夏の甲子園での大会を,ドーム球場で行うべきではないかとの意見が出ており,それは高校野球の意義を知らない人々の意見だとの反論もある。確かに,聖地甲子園出場を目指して頑張っている球児に,いきなり甲子園では無く,大阪ドーム球場で夏の大会を行うと云えば,反論する球児が殆どだろう。それほど甲子園のネームバリューは高いものがある。

球児達だけでなく,猛暑の中での応援者たちのことを心配して,冷房の効いた大阪ドーム球場で行うことには賛成である。夏の甲子園大会の意義は多少消えるかもしれないが,水分補給タイムなど小手先の対策では対策できない暑さである。早朝やナイターでの試合も検討されているようだが,これも気休めにしか過ぎない。確か,都道府県の予選では,こうした試みも行われたようである。

甲子園球場で,重症者や死者が出てからでは遅い。しかし,高校野球連盟など関係者ではなかなか変更は難しいようである。しかし,関係者が真剣に議論すべきことである。もちろん,変更することに反対する意見が多いことは承知の上であるが,人命には代えられないことである。文部科学省もなかなか口出しできない状態にあるのかも知れないが,開会式の挨拶をするならば,責任を持って指導するべきではなかろうか?

猛暑の中,甲子園での重症者が出ないことを祈りつつ,応援しています!!

 

[Reported by H.Nishimura 2018.08.06]


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