■技術者の眼 9 電子部品が好調 (No.590)
電子部品の受注が最高を記録したとの報道がある。スマホ向けの受注が低迷したにも拘わらず,自動車向けがそれを補ったとのことである。
電子部品の用途
電子部品そもそもは,家電メーカの機器を構成する部品で,家電メーカの一部門,或いは,家電部門を支える主要な部品メーカがあり,日本の電子部品は世界の需要に応えてきている。小型化,高性能化,長寿命化など,その特長は日本の技術が駆使された業界で,世界に誇れる業界である。
家電製品が一時期の画期を失い,携帯電話,スマホに電子部品の需要にかなりのウエートが掛かっており,その景気の動向に大きく左右されてきていた。しかし,昨今の自動車は機械系から電子系へと移り,自動車用としての電子部品の需要が急速に高まってきている。私たちが開発設計を行っていた20世紀後半などでは,自動車向けの電子部品は数も少なく,品質が非常に厳しいことから,積極的に売り込む部品メーカは限られていた。
しかし,流れは確実に電子化へと移ってきた自動車に,電子部品は必要不可欠なものであり,車内の通信システムや運転支援システムなど幅広い利用が見込まれてきている。生産台数はスマホには及ばないが,自動車に使われる電子部品の数は数倍から10倍に増えている電子部品もあるようである。つまり,そこそこの需要が見込まれているのである。また,安定した需要が見込める市場である。
自動車向けの需要
ご存じのように機械系中心だった自動車が,ハイブリッド化から電気自動車と完全に電気系の自動車に変わってきている。更には複雑な通信システムや安全運転を謳い文句にした安全システムなど,電気系の制御無くしては成り立たない車に変貌しているのが実態である。しかし,電子部品は元々は家電製品向けで,安定した環境下での使用が基本で,そのまま自動車に使えるものは少なかった。
需要は新たな技術開発を促進し,今では自動車環境(−40℃〜85℃)に十分対応できる電子部品が多くなってきている。しかも,家電用電子部品と変わらない安価で大量な生産を可能にし,安心して使える電子部品になってきている。新しい材料の利用やプロセスの改良により為し得たもので,地道な努力であるが品質の改良は日本の技術の底力である。
電子部品各社の需要動向も,明らかに自動車用部品が主流を占め,さらにその勢いは留まるところを知らない様子を見せてきている。生産販売はもちろん,自動車用を目論んだ増産投資なども活発に行われているようである。これは電子部品に於ける日本の技術力を認められたもので,日本の電子部品無くして自動車が作れないと云っても過言で無くなってきている。
トランプ大統領が自動車の規制など,独断と偏見に満ちた政策を敢行しているが,そうしたパフォーマンスも限界があり,日本の電子部品業界が米国に対してそっぽを向くようなことになっては,ひとたまりもないのではないかと云う気がしてならない。製品として見える形,自動車やスマホと云った花形商品には,それを支える重要な電子部品が大きな下支えになっていることを見くびるようなことがあってはならないのである。
日本の電子部品業界の技術者たちよ,今の自動車(特にこれからの電気自動車)を支える重要な部品を開発設計していることを大いに誇りをもって頑張って欲しいものである。
電子部品の開発設計者たちよ,誇りをもって仕事に当たれ!!
[Reported by H.Nishimura 2018.07.30]
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