■技術者の眼 7 特別警報 2(西日本豪雨災害)  (No.588)

先週,発生したばかりの豪雨について述べたが,その後1週間経ってその被害の大きさに改めてビックリしている。広島,岡山を筆頭に200人の死者に上ってしまった。連日,ボランティアが支援に入っておられるが,ここ2,3日の猛暑に2次災害の危険性もあり,熱中症で搬送されている人も多いと報道されている。

  土石流災害

広島が被害が一番多いが,マスコミからの情報では,土石流により家ごと押し流されてしまっているなど,その被害の酷さには眼を覆いたくなる惨状である。特に,巨大な岩石が山から落ちてきている状況を見るにつけ,こんな危険なところに家を建てることを許可すること事態に疑問が沸く。

もちろん,平時は静かな山が望める穏やかな場所なのだろうが,今回のような災害が起こることを事前に予測できなかったのだろうか?専門家(?)か評論家(?)かよく判らなかったが,テレビに出られている災害関連の方の説明では,なだらかな山になっているのは,強い岩盤の山ではなく,表層が脆く崩れやすいので,そのような形になっており,豪雨など山肌を削り取るような症状になれば,脆く一気に土石流が発生するのは当たり前だ,と言われている。大きな岩石が滑りや転がりで先頭になって落ちてくるのは自然のことのようである。

今回の豪雨が50年に1度のようなめったに起こらないものなので,ここまでの被害が発生する想定ができなかったと云えばそれまでだが,そもそもこうした危険が発生する可能性を秘めているところへ住宅を造ることを許認可すること事態が大きな問題のように感じてならない。よく知らないでの感想だが,見るからに家屋も新しく,新興住宅地のようなところが被害に遭っていることから,そんなことを感じる。

また,以前に被害が遭ったので砂防ダムを作ったりして,対策を講じたので大丈夫だと思っていたとの発言もあったが,砂防ダムを呑み込んだような被害が発生している。対策が不十分と云えばそれまでだが,そもそも再発防止に対する甘さがあったのか?,それとも地形上どんな砂防ダムを作ったとしても,危険性は回避できない場所だったのか?大きな反省材料である。

被害に遭われた方には本当に気の毒でお悔やみの言葉も見つからないが,こうした危険が想定される場所に住むことを回避させられないのかと云う気がしてならない。なぜなら,同じような被害は,また忘れた頃には必ず発生すると思われるからである。広島だけでなく,こうした災害の発生する危険性のある場所を云いだしたら,全国各地に数えきれなくあって収拾が付かなくなるのかもしれない。ただ,何もしないと同じ事が繰り返されると思われる。

立地条件は被害の発生確率と対策費用のバランスを取ったところの選択が行われているのかも知れないが,人の命に関わるようなことを机上の計算で済ませられるようなことがあってはならない。甚大な被害が想定されるところには,強制的に人家を造らない,既にあるところは行政執行で立ち退いてもらうなどの措置も必要なのではないかと感じた次第である。

  河川決壊による被害

岡山の真備町の惨状は眼に余るものがある。河川の決壊によって2階に達するような水が押し寄せてきたそうである。平屋建てのお年寄りの被害が大きく,溺死が多かったようであるが,聞いただけでもゾッとする。逃げるところがなく,水に呑み込まれた無念さに心が痛む。

また,年輩者は経験上,ここまでの水害になるとは想定もされておらず,逃げ切れると思っておられて逃げ遅れた人もいるようである。ハザードマップなどで危険性を知らされても,自分の身に降りかかるとはなかなか信じられず,最悪の事態を想定すればそうかもしれないが,そんなことは起こりえないと信じている。人の心理はそのように働くことが多い。

昨今,南海トラフの被害想定でも巨大な被害が上がっているが,それをまともに自分の身に降りかかると思っている人がどれだけいるだろうか?人の心理は自分に都合の良いように理解され,判断されることが多い。私自身がそうである。詳しくは判らないが,今回の被害の真備町の人々の中にも,よもやこんな被害が発生するとは想定もしていなかった,と思っておられたのではなかろうか?

警報の指示が遅かったとか云うこともあったのかも知れないが,夜中の増水に逃げる術を失い,運を天に任せ,何とか納まることを願って居た人も多かっただろう。或いは,経験上の自己判断で何とか被害を免れるだろうと思った人も多かったのではなかろうか?予想を遙かに超えることが起こったとき,立ちすくむしかないのは仕方ないことだろう。

ダムの放流の問題もあるようだが,ダムの決壊による甚大な被害の発生は回避しなければならない,と云うのがダムの管理者の使命だろう。だから,限界以上の豪雨での放流はやむを得ないと云うことになる。下流の人に,ダムの状況が判るわけは無い。ハザードマップはこうしたダムの放流状況も加味して作られているだろうから,自己判断で決めつけるのは止めて,やはり早めの避難が一番である。

いろいろ勝手なことを述べたが,被害に遭われた方の一日も早い復旧を願う。

 

平成最大の豪雨被害はいろいろな問題を浮き彫りにさせた

 

[Reported by H.Nishimura 2018.07.16]


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