■ワールドカップ 決勝トーナメントへ進出 (No.586)
昨今のマスコミはワールドカップ一色である。特に,二大会振りの決勝トーナメント進出に日本中が騒いでいる。
ワールドカップの大会はオリンピックを凌ぐ
オリンピックは子供の頃から有名でなじみ深く,世界中のアスリートの祭典である。4年に一度の大会に,オリンピックの出場を目指して頑張る選手は多い。オリンピックで金メダルを獲得することは非常に名誉なことであり,アスリートであれば憧れの頂点でもある。
それに比べると,サッカーのワールドカップは馴染みは浅く,日本が初めて本戦に出場できたのは1998年である。オリンピックにおいてもサッカーが競技種目に入っており,1968年のメキシコシティで行われたオリンピックで銅メダルを受賞しているが,記憶には無い。サッカーは野球などに比べ,日本ではそれほど人気のあるスポーツでは無かった。
サッカーがプロ化されたのが,1993年で10チームでJリーグとして開催,欧米から有名選手を連れてきて,話題を呼び,サーカー熱も次第に盛り上がってきて,2002年には日韓合同のFIFAワールドカップが開催され,一般の人にも馴染みが出るようになってきた。
よく知らなかったがFIFAワールドカップはサッカーの大会の最高峰で,全世界のテレビ視聴者数や経済効果はオリンピックを凌ぐ世界最大のスポーツイベントだそうである。2018年のFIFAワールドカップの賞金総額は6億9100万ドル(約700億円)と云われ,優勝賞金は3800万ドル(約400億円)で,日本の決勝トーナメント出場チームには1200万ドル(約13億円)が支払われると云う,非常にビッグな大会である。
日本の戦術の是非
今回Hグループで戦った日本の下馬評は低く,FIFAランクでも61位と一番低く,監督が2カ月前に交代すると云うハプニングもあって,3連敗するのではと云われていた。ところが蓋を開けてみると,今まで勝ったことの無い(特に前回大会では0−4で敗戦した)コロンビアと初戦が当たった。
この戦いは,日本時間の9時から始まったのでテレビで観戦していたが,いきなりの攻撃で勢いづき,相手のディフェンダーがハンドでレッドカード退場となり,香川選手がPKを決め,さい先良いスタートを切った。同点に追いつかれるも,後半追加点をとり,2−1で予想を覆して勝利をもぎ取った。セネガル戦は,夜半だったので観戦はしなかったが,2−2の引き分けで,残るポーランド戦を勝つか,引き分けで決勝トーナメント出場が可能となり,有利な展開だった。
ところが,ポーランド戦はこれも夜半なのでテレビ観戦はしていなかったが,翌朝ポーランド戦には敗戦したが,勝ち点,得失点差,総得点,直接対決の結果で差が無く,新たに追加されてルールのフェアプレイポイントの差(日本が4,セネガルが6)で,日本の進出が決まったことを知った。
同時刻開催の最後の試合は,お互いの有利不利が出ないように配慮されており,息詰まる試合で,後半0−1でポーランドに先攻された時点では,日本が3位に落ち出場を阻まれる状況だったが,その5分後にコロンビアがセネガルに1−0で先攻し,得失点差など総てが同じになるセネガルと,フェアプレイポイントの勝負になると判った時点で日本の戦術が変わった。
要は,これ以上ポーランドに失点することはおろか,イエローカードを受けることもあってはならないと残り10分をボール廻しの非攻撃的な戦術を採ったのだった。しかし,他のコロンビアとセネガルとの試合で,セネガルが追いつき引き分けたならば,勝ち点でセネガルが上回り,コロンビアにも得失点差で負け,決勝トーナメント出場ができないと云う瀬戸際だったのである。
ボール廻しと云う不本意な選択をせざるを得なかった日本に対し,批判の声は大きい。しかし,目的は単なる勝ち負けではなく,決勝トーナメントに勝ち上がることであり,結果としてはその目的を達成したのである。その後のマスコミでの西野監督の判断を正否する声がいろいろあるが,攻めないボール廻しと云う戦術が,柔道などにある戦意無しの罰点が無いルールの中では一つの手段としてありだろうと感じる。
今回の判断の成否は,決勝トーナメントでのベルギーとの一戦に掛かっており,互角ないし勝利すれば,誉め讃えられるだろうし,無様な負け方をすれば,ポーランド戦の戦術を否定する声が大きくなるだろうと想定する。
勝負の世界は厳しい
[Reported by H.Nishimura 2018.07.02]
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