■技術者の眼 5 歴史とは?  (No.582)

歴史の話題の講演を聴く機会があった。明治維新の話題だったが,ある程度は判っていることもあり,興味深い話だった。

  明治維新とは?

江戸末期の話題は何度となく聞いているが,ペリー来航の開国騒動から,尊王攘夷運動が始まり,幕府を倒そうとする動きが盛んになり,そして幕府側についていた薩摩が,いつのまにか長州が同盟関係を結び,倒幕を試み,徳川慶喜の大政奉還によって,徳川幕府は終焉した。非常に複雑な動きで,何となく全体の動きは判っていても,未だに十二分に理解はできていない。歴史好きな人にとっては,興味があるのだろうが,私にとっては詳細な動きの一つひとつを理解しても,何の役にも立たないと思っている。

しかし,今回の講演では,ある一つの見方だが,明治維新は関ヶ原の戦いに素因を持つ政権の簒奪であった。関ヶ原の戦いでの西軍の大将毛利輝元,島津義弘など関ヶ原の恨みが長州・薩摩に残っていたと思われるとのことである。かなり穿った見方のように聞こえるが,そういった見解もできるのだろう。そう言われれば,そんな見方もできないことはない,との感想である。

歴史の検証とは,都合の良いことも悪いことも白日に曝すこと。知って,理解して,正しく伝えることが重要であり,歴史の評価は100年経たないと正しい評価にならない。世界で唯一日本人だけが歴史の評価ができていないとのことだったが,歴史の検証や評価についてはなるほどと思ったが,日本人だけが歴史の評価ができていないことについては私には十分な理解ができなかった。

歴史の本流を歩いている人では無い講演者だったので,頷ける点もあったが,そうとは言えないのではと疑問を抱くことも多かった。

  歴史とは?

よく言われていることだが,歴史は勝者によって語り継がれ,残されて行くものなので,真実とは別に,勝者の歴史となることが殆どである。敗者は恰も悪者のように扱われてしまう。だから,明治維新も薩長を中心とした内容で歴史が語られていることが殆どである。それは致し方無いことで,学生時代に歴史を学んだことと,社会人として改めて世の中の仕組みを理解してから学ぶこととは自ずと違ってくるのが当然である。

歴史とは中学・高校で教科書を基にして学ぶが,指導要領が変わって,坂本龍馬や吉田松陰と云った歴史上の人物が消えるとされている。人物を暗記するのが目的でなく,坂本龍馬を知らなくても明治維新は理解できるとの見解だそうである。大学の共通テストが思考力や記述力を重視されるようになり,人物を暗記する必要が無くなったからのようである。限られた中で学ぶ以上は致し方ないのだろう。

私自身,学生時代にそれほど歴史に関心が無かったのだが,齢を重ねるにつれて歴史をじっくり見直してみようと云う気はある。どのような人物がどのように関わっていたのか,テレビなどで歴史を紐解く番組など,興味深く観ている。それで生活が変わるなどとは全く縁遠いものなのであるが,関心はある。なぜそうなったのかはよく判っていない。

  今の世の中は?

歴史と云う観点から,昨今の政界の騒動を見てみると,歴史に残るとまでは行かなくとも,惨憺たる内容で,民主主義が崩壊しているような状況が起こってしまっている。学校で学んだ,司法・行政・立法の三権分立した民主政治が歪められてしまっている。これはただ事ではない!!

多くの国民がそのように感じているが,大きな権力をもった為政者が襟を正さず,何でも自分の思い通りに進むとしていることが腹立たしい。もちろん,大衆の眼ばかりを気にしたポピュリズムは決して良いとは言い難いが,あのときの日本が間違った舵取りをしていたのだ,と歴史が知らしめる日が100年後に来ないようにしたいものである。

歴史を振り返ってみて感じること

 

[Reported by H.Nishimura 2018.06.04


Copyright (C)2018  Hitoshi Nishimura