■技術者の眼 2 スマホの領域  (No.578)

スマホの便利さは生活のスタイルを変え,商品としての領域を拡大しつつある。

  コンパクトデジカメを完全に駆逐

昨今はスマホで写真を撮っている人が圧倒的に多くなっている。カメラの売り場でも,コンパクトデジカメが年々スペースが減ってきている。つまり,コンパクトデジカメで写真を撮るメリットが殆ど無くなってしまったのである。データではコンパクトデジカメは2008年をピークに年々減少し,現在ではピーク時の生産量で1/10以下の,金額的にも1/7以下だそうである。

この最大の要因は,スマホがコンパクトデジカメに取って代わったからである。最近のスマホは画素数でもコンパクトデジカメに匹敵するレベルになっており,大きく引き伸ばしても十分耐えられるものであるが,そもそも写真をプリント印刷することも少なくなってしまっている。それよりもネットでFacebookやInstagramと云ったSNSでの便利なやり取りを利用する人が殆どになってしまっている。

確かに,スマホで撮った写真をそのまま画像で直ぐ送れる便利さは,一度使うと快感であり,情報の伝達に文字だけでなく映像で伝えられると云う現代人にはもってこいのアプリである。コンパクトデジカメが廃れたのは,技術の進歩によるもので,銀塩フィルムがデジタルデータに置き換えられた現象に似通っており,その流れに逆らうことはできなかったのである。

技術の進歩は我々の生活スタイルをいとも容易に変えてしまう。その現場に居て技術の進歩を担ってきた技術者だが,若者の流れについて行くことがなかなかできなくなっている自分に気がつく。

  パソコンを脅かす

最近のスマホはパソコンをも脅かしている。コンパクトデジカメのように駆逐されるまでには到っていないが,パソコンを使わずにスマホの利用で十分だと云う人も多い。特に,パソコンのメールはスマホのメールで置き換わりつつあり,何時でも何処でもメールのやり取りができる便利さは,いくらパソコンがもがいても追いつけない。

立ち上げの時間も,スマホは瞬時に立ち上がるのに対して,パソコンは暫く待たなくてはならない。特に,Windowsのバージョンが上がるごとに,立ち上がりに要する時間が長くなってきている。オフィスなど仕事で一日中,点けっぱなしで使うには立ち上がり時間もそれほど気にはならないが,個人の使用に於いては立ち上がり時間に時間が掛かるのは多少イライラもする。

唯一,スマホがパソコンに叶わないのは,大きな画面で全体を見ながらする作業で,部分的な拡大は十分可能だが,それだけでは不十分で,画面の大きさはどうしようもない。したがって,スマホがこれからも進化しても,デスクに座っての仕事にはパソコンを追い抜くことはできないだろう。物理的に伸縮可能なスマホができれば別だが。

セキュリティに関しても,まだまだパソコンよりもスマホの方が劣っているように思われる。もちろん,これはソフトの問題で,スマホの利用範囲が今以上に広がれば,この問題は容易に解決されるだろう。ただ,携帯可能なスマホである以上,盗難や落とし物など,物理的なセキュリティには弱く,このことについても何らかの対策が講じられよう。

一方パソコンの方も,携帯可能な軽いものが出てきており,スマホとの境界はどんどん狭まっており,使い方の便利な機能を搭載したパソコンとスマホの両方の特長を活かした第三世代のスマホ・パソコンが出てくることも容易に想像される。そうなると,スマホからの進化系か,パソコンからの進化系か判らなくなってくる時代がやってくる。

そもそも,スマホ自体が携帯電話の進化したもので,パソコンの機能を取り込んだものであり,この進化の流れは更に続くだろう。いずれにせよ,我々の想像以上の便利なものが現れ,若者の流行に我々年輩者は後からついて行くことになるだろう。

スマホが我々の生活スタイルを変えつつある

 

[Reported by H.Nishimura 2018.05.07]


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