■大企業の品質問題 6 (No.569)
品質問題の続き
第三者での検証の必要性
昨今の大相撲やレスリングの問題を聞いていると,その業界内での問題解決はなかなか難しく,公平を期するには利害関係の無い第三者機関が行うべきだと云う意見がある。確かに,問題の真相は判らないながらも,力関係の作用で有耶無耶にされてしまった例があるから,こうした意見が出されるのだろうと感じている。一般的な感覚として当然だと云う気がする。
これまで述べてきた一連の品質問題でも,上司部下の力関係は歴然とあり,問題の真相を素早く克明に把握するには,第三者的な人が入って調査し,原因を追及することが不可欠なような気がしないではない。白黒を付け,悪かった点を明確にし,人間関係を含めて公平に裁くことにおいては必要な手段の一つではあるが,こと品質問題においては,公平に裁くことが重要ではなく,問題の本質を把握し,如何に改善をするかが重要であることから,第三者機関に委ねることは望ましいとは思えない。
第三者には公平な判断はできても,具体的に一連の問題を改善する方法を見出すのは難しい作業である。したがって,こうした品質問題に第三者が関わることは極めて少ない。法律違反や人権問題にまで発展すれば別だが,通常の今回のような一連の品質問題に関して云えば,やはり内部の関係者による改善が最善策と云えるだろう。
ただ,内部の関係者となると身内でのやり難さや甘さが出るようでは,本質的な改善に繋がらず,有耶無耶のまま終わってしまい,完全な再発防止策が採れないことが起こってしまう。だから,内部の関係者とはいえ,第三者的な感覚は必要で,問題の本質に迫ることができなければいけない。世間的な体裁やスマートな解決策を打ち出すことではなく,地道とも云える品質問題に真摯に立ち向かう弛まぬ努力が必要なのである。
品質問題の根幹
品質問題は企業を揺るがす大問題である。したがって,問題を起こした企業は必ずと云ってよいが,トップ自らが平身低頭でマスコミを通じて世間にお詫びをしている。このことは,企業全体の信用,企業イメージを大きく左右し,チョットしたミスでは済まされないことを物語っている。既に繰り返し述べてきているが,これら一連の問題は,企業風土の問題も抱えていることが多い。したがって,一連の関係者を叱責処分するだけでは済まされないことである。
該当の企業がどのような解決策をしているかは知らないが,トップ自らがこの問題にどれだけの危機感を抱いているかでも,その対応が変わってくる。多くの企業が,トップ自らが対策本部長となり,指揮命令をされていることと想定する。ここまでは企業の存亡に関わることとして当たり前のことである。
重要なのは,トップ自らの対策本部長と云った体制を取るだけではなく,最重要問題として,トップ自らが率先垂範することはもちろんのこと,実際にはトップに代わる実力者が如何に采配を振るえるか否かである。関係者の反省を含めた実務者が問題を反省し,改善策を検討することは必要ではあるが,それに総てを委ねるようでは本当の意味での解決策にはなっていない。関係者が改善策を検討すること以上に,重要なのはこうした風土を醸成してきた仕組みにあり,その仕組みの改善策は実務者任せではなかなか困難であり,不可能と言わざるを得ない。
トップに代わる実力者がその仕組みの欠陥を見抜き,分析させ,再発を防止できるシステムを作り上げることができるか否かに総てが掛かっていると言っても過言ではない。もちろん,実力者独りでできるわけではなく,しかるべき人物を当事者に選定し,速やかに,且つ大胆に振る舞うことが不可欠である。もちろん,関係当事者を巻き込んでの対策活動であり,企業全体として一丸となって取り組めるかどうかである。
結果は問題を起こした企業の今後の動向で判明するが,トップの指揮命令が行き届き,実務レベルまでが一体となった改革ができた企業こそが,「災い転じて福となす」ことができるであろう。
企業内での改革が進むことを願う
[Reported by H.Nishimura 2018.03.05]
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