■平昌 冬季オリンピック 2  (No.568)

2018 平昌冬季オリンピックが閉幕した。金メダル 4,銀メダル 5,銅メダル 4,合計13個と云う予想を超える,冬季オリンピックとして最多のメダルを獲得した。

  小平 スピードスケート女子500mで金メダル

世界選手権で負け知らずの小平が,今回のオリンピック,スピードスケート女子500mでも金メダルに輝いた。ソチで5位入賞に終わった後,スピードスケートでは群を抜く強さのオランダへ2年間留学して,技を磨き,積み上げてきた結果が今回の金メダルに繋がったようである。

500mの競技は,一瞬で終わり,しかもタイムを競う競技なので,誰が1位になるか最後まで息を抜けない。今回の女子500mの競技でも,小平は最後から3番目で出走,オリンピックレコードを出し,暫定1位に入ったものの,後続の選手の結果を待たねばならない。彼女の次の出走に強力なライバルの韓国の李相花選手が居て,その結果が注目された。

息を呑むような緊張感が漂う中,中間地点では李選手が早かったが最後に少し膨らんだ分,小平選手に僅かに及ばず,小平選手の金メダルがほぼ確定した。最終出走の選手がその記録を破る可能性が少なかったからである。そうして最終出走者の競技が終わり,金メダルが確定し,日本中が沸いた瞬間だった。

その後の小平選手の韓国の李選手を讃え合う映像が流れ,その態度に賞讃の声が出ている。試合後にスポーツ選手として相手を讃え合うことは当然の仕草だが,両国の関係が今一つしっくりしない中での微笑ましい光景であった。後で流された映像で初めて知ったことだが,小平選手がオリンピック記録を出し,レース直後のガッツポーズは当然のこととして,歓びを全身で表し,日本の応援団に応えることは慎み,次の出走者に対しての配慮で,観客に静まらせるようなポーズを取ったことも,人としての礼節をわきまえたことで,清々しかった。

  女子パシュートでの金メダル

チーム日本の勝利とも云えるこの競技は,オランダとの決勝戦で,オランダチームがメダル獲得者ばかり3人をチームとしているのに対し,日本は高木美帆選手だけがメダリストであり,個々人での記録ではオランダが圧倒的に優勢な立場だった。しかし,隊列を重視し,力を温存しながら滑るチームワークの良さがまざまざと感じられた瞬間だった。

最初の2周は日本がリードし,その後は自力に勝るオランダが先を行き,見ている私たちには,流石オランダの底力があると感じられた,しかし,解説者はまだまだ大丈夫,1秒程度の遅れは想定内だ,0.45秒しか遅れていないので逆転できるとの実況に固唾を呑んで見守った。最後の2周になり再び日本のリードになり,最後周では1秒近く引き離し,ゴールでは約2秒程度の差がついての圧勝だった。

記録を後で見ると,日本チームの1周のラップが殆ど一定に対し,オランダチームは,最後の2周が明らかに疲れが出てかタイムロスがある。この違いは,隊列を乱さない体力を温存する日本の戦略が,最後の2周に現れたものであり,チーム日本として殆ど一緒に寝食を共にし,チームワークで戦った証拠でもあった。

このようなチームワークが活かされる勝負には日本は強い。しかし,他の国もこのままでは無く,日本の戦略を十分研究し,戦い挑んでくることは明らかであり,個々の能力を最大限磨くことが今後とも必要となるだろう,と感じた次第である。

  新種目 スピードスケート女子マススタートで高木菜那が金メダル

これには正直驚いた。準決勝前段階で解説者は金メダルも狙える競技だと云われていたが,パシュートとは違い,個人の力が必要な競技で,且つ駆け引きも非常に重要な競技に日本の選手がどれだけ対応できるか,心配していた。

その心配が第2組に現れ,佐藤選手が転倒に巻き込まれ決勝に出られなくなったしまった。高木(姉)選手は1組で上手い戦術で,最初の4周でポイントを挙げ,体力を温存した状態で,決勝に進んだ。しかし,佐藤選手と協力して,上手く滑る決勝を描いていたので,大きな誤算だったようである。

ここで解説者は,2人で滑るよりも遠慮せず自分の力を信じて滑る方が力が発揮できると,やや奢ったような解説に,私などは疑問符を付けながら聞いていた。日本としては1人だけになった瞬間,メダルの期待は薄くなったと感じていた。

この競技は自分のスピード・持久力など力業も重要だが,それ以上に相手との駆け引きが重要視される。高木(姉)選手は体力を温存する作戦で,自力のあるオランダの選手の後にピッタリ着く作戦だったようである。その高木選手の後に,韓国の強力な選手がピッタリと着く展開で進んでいった。

小柄の高木選手が前の選手を風よけに体力を温存したのは,経験知があり,最後に力を発揮できれば勝てるとの戦略だったようである。最後の2周になって競争が激しくなり,オランダ選手がスピードを増し,高木選手と韓国の選手がその後を続いた。最後の1周もその状態は続き,このままで終わるかと思った最後のコーナーで,オランダ選手が少し膨らんだスキを見逃さず,内側から抜き去った勝負勘は素晴らしいものがあり,そのまま振り切りゴールした。

この瞬間,スケートリンクはもちろん,テレビでも応援していた日本中が沸き返った。あの小さな身体で,最後まで力を温存し,これぞと云うときに発揮された瞬発力は,練習の成果の賜物であるが,大舞台でそれをやってのけた高木(姉)選手は見事だった。パシュートに次ぐ金メダル2個を獲得する女子では初めての快挙だった。

  カーリング女子の銅メダルもあっぱれ

同じ日,同じ時間にカーリング女子の3位決定戦が行われていた。2時間を超える長丁場の試合なので,なかなか全部を見る気にはなれず,スピードスケートのマススタートを見ながら,ときどきチャンネルを変えて,進み具合を確認していた。イギリスとの対戦は互角で,最後までもつれるような展開を見せていた。

スケートが終わり,感激も一入の中,チャンネルを切り替えると,最終エンドになっており,日本が4対3で勝っているようにもみえたが,最終エンドはイギリスが後攻であったので,互角の戦いだった。最終エンドとあり,作戦タイムを互いに取ると云う緊迫した中,日本のスキップの藤沢が最終を投じ,狙いよりもやや短めで,ファーストストーンはイギリスで,延長戦にもつれ込むと思われた。

イギリスは最終投で,日本のセカンドストーンをはじき出し,2点を取って逆転する狙いだったようである。1点だけでは,同点となり延長戦に入っても後攻が日本に代わり,不利な立場になってしまうので,勝つためには正しい選択だったようである。後でニュースでイギリスのコーチも正しい選択で,簡単なショットではなかったが,決められるショットであったと報じている。

しかし,イギリスの狙いとは逆に狙ったラインから外れ,自分たちのファーストストーンを押し出し,日本のストーンが中央に留まってしまうことが起こってしまい,ザ・エンドとなった。日本には,タナボタ(と云うのは失礼だが・・・)の勝利を掴んだのである。ただ,我慢強く最後まで堂々と戦い続けたことによって,女神が微笑んだのだろう。

今回ほど感動を与えた冬季オリンピックは初めてだった

 

[Reported by H.Nishimura 2018.02.26]


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