■大企業の品質問題 5 (No.566)
品質問題の続き
設計品質は大丈夫か?
ここまで品質に関わるいろいろな問題が噴出してくると,本当に気になるのは設計品質は大丈夫だろうか?と心配になってくる。なぜなら,これまで明るみに出ているのは,データの偽装に始まる一連の検査に関わるものであり,落ち度は品質を確保すべき検査部門などが手抜き,又は水増しをしたような製造現場での欠陥である。
あまり議論をされていないが,設計的な品質確保は十分だったのだろうか?設計そのものの余裕が不十分で,規格ギリギリの製品が多く,それ故にデータを偽装していたのではなかろうか?と云う疑問である。検査データを扱う部門がやり玉に挙がっているが,不正をしているのだから当然と云えばそれまでであるが,データを測定しても規格外れが多く,つい納期などに追われ,やむを得ず不正をしていたとなれば別の問題が提起される。
これは一般的な議論ではそこまで踏み込むことができないことが多い。なぜなら,設計的な品質を外部の人が指摘するのは困難極まることが多いからである。もし,前述したように製品そのものが規格ギリギリのものが多い場合,検査部門の問題もさることながら,設計的な問題であり,その場合は問題がもっと深刻である。そんな大きな問題が潜んでいなかっただろうか?
技術者だったから言えることであるが,問題の製品をさらにセットの製品に組み込んだり,またはそのまま実使用する場合においても,製品の規格ギリギリでは普通は使っていないことが多いので,実用上の問題が発生することは殆ど無いだろう。しかし,規格ギリギリの製品が多いような設計をしていた場合,そもそもの製品の実力が無いような設計になってしまっていると云える。
これは技術力そのものが低い,或いは要求品質が高く満足できるレベルに達していないものしか作れない状態に外ならない。過剰品質ならともかく,実用レベルの品質要求ならば,こうした製品が世の中に出回ること自体が大きな問題である。問題の争点がそのレベルまで行っていないのでよく判らないが,設計品質にまで及ぶとしたら根本的な問題である。
設計品質の確保は重要
では,この設計品質はどのようにして確保されるのか。技術者ならば経験も豊富で,直ぐに判ることであるが,製品設計する過程には,品質を確認する関門,DR(デザインレビュー)と云うものがあるのが一般的である。これまで,何度かDRについては述べて来ているので,(DRのあり方)ここでは詳細は省くが,世の中に安定した品質を有した製品を送り出すための有識者によるチェックで,こうした関門を経ることで技術者の行き届かぬ点を補うものである。
この関門では,過去の問題点の再発を防ぐことはもちろん,市場でのトラブルやさらに製品に組み込まれる部品の場合など,規格に対する余裕度なども十分審議されて品質を確保するようになっている。今回の一連の問題があった製品で,DR段階での検証がどこまでできていたのだろうか?外部に公表するチェックでは無いので外部からは指摘のしようもないが,関連部門の当事者であれば十分見直しができるはずで,こうした地道な検証が重要で,そのことが企業体質の改善のきっかけにもなるはずである。
製造現場での欠陥とちがって設計品質の欠陥は致命的なものが多い。何か現場で手直しするとか,検査をやり直すとか云った類の不良手直しでは済まされない。市場でのトラブルの原因になることさえ起こり得る問題である。もちろん,開発する技術者としては,設計品質の確保は絶対的に必要なことである。ただ,注意を払っていても問題発生が皆無とは云えない。技術者の予想を遙かに超えたことも希には起こり得る。実際,開発現場で何度かリワーク(顧客先での回収取り替え作業)と云う苦い経験もある。
設計品質は大丈夫だったのか,冷静に見直しを
[Reported by H.Nishimura 2018.02.12]
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