■大企業の品質問題 4 (No.565)

品質問題の続き  

  的確な反省ができるか?

今回の一連の品質問題は根深いものがあるように感じられる。それは,一部門のミス,例えば設計不良,製造不良,検査ミス,或いは部品不良など,これまでの品質問題とは違った短期的な問題と云うよりも長期的な企業体質にも関わる重要な問題でもある。偽装と云う問題点が浮き彫りにされているが,偽装していると云う認識は担当している人にはそれほど感じていなく,これまで通りのやり方を踏襲しているだけだった,と云う意識でしかなかったのではないか。

もちろん,総ての担当者がそう思っていた訳ではなく,一部の担当者は疑問を抱きながら仕事を続けていたかも知れない。しかし,そうした疑問を疑問として上司に上げ,議論されていたのだろうか?これまでの習慣として余り疑問も感じず,言われたままの仕事を続けていただけと云う担当者もいるだろう。

今回の一連の問題に対する反省は,一言ではなかなか済まされない。組織ぐるみ的な要素が大きいだけに,簡単に改善ができる訳には行かないような気がする。つまり,マスコミなど表面に出てくるのは幹部が頭を下げ謝罪することであるが,永年の慣習を根本から変えるのは容易ではない。組織の末端までが,一連の問題をシビアに見直し,根本的な体制から更には意識改革まで行わねば,抜本的な改革には到らない。即ち,また時が経てば同じ事が起こるのではないかと云う危惧である。

今回のことを教訓にして,新たな組織体制で,意識改革が末端までできることが重要で,今回の問題について内部での徹底的な議論がなされ,末端の従業員まで,或いは外部から来ている臨時工にまでも,新たな感覚が生まれるようにして欲しいものである。

  どこから改善するか

今回の問題の改善は企業風土を変える大仕事である。こうした場合,トップ自らが先頭に立って陣頭指揮するのが必要である。その思いが従業員の末端まで行き届けば,改善は進むだろう。企業の存亡にも関わるとの危機感が醸成されればスムーズに進むだろう。

しかし,これは理想であって現実にはいろいろな問題が蠢いていて,組織間の駆け引きもあり,絵に描いたようにスムーズに進まないのが現実である。実際問題として,今回の問題は企業全体に関わると云っても,実際には問題に関連した組織責任者が責任を負わされ,過去の踏襲と云っても現在の責任者が責任を負うのは当然のことだろう。

責任の取り方は幹部の判断で行われ,適切な処置は実行されるだけで,そんなに問題ではない。どのように改善するかが重要で,責任者が責任を取って終わりではなく,改善することが使命で,ここでの旗振り役が必要となる。明るみに出ている問題の企業は一流の大企業ばかりであり,当然旗振り役のトップは社長であろうが,実質の旗振り役は幹部から選ばれ,臨戦体制的な組織が作られ改善が行われると云うのが一般的である。

もちろん,末端での地道な改善も重要だが,このような重要問題は上からの指揮命令がどの程度徹底できるかで,改善の内容も変わってくる。今回の問題のような重大問題に当たり,如何に上手く改善が進むかどうかによって,企業イメージも大きく左右されるし,周囲からの信用度も大きく影響される。ピンチをチャンスにとはよく言われるが,関連企業は是非ともこの問題をチャンスに変換できるような取り組みをして完全復活して欲しいと願っている。

ピンチをチャンスに

 

[Reported by H.Nishimura 2018.02.05]


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