■技術者の育成 9 (No.550)
技術者だけでなく,人の育成は個性を活かし伸ばしてやることである。人には欠点も多いが,その欠点を補うことで平凡な人を育成するよりも技術者は個性を活かす,何か一つでも尖ったものを持っていることをより磨き,他にない特長を大きくことが望ましい。
個性を活かす育て方
技術者にとって個性は大切な宝物である。新しい創作は,個性から出た発想であり,個性が豊かであるほど良い創作が生まれる。逆な言い方をすれば,個性が埋もれてしまっているような組織,雁字搦めの安定した組織では,一定の成果は見込めるものの,飛び抜けた,或いは光った創作物はなかなか出てこないものである。
技術者には一定の成果を期待し,組織力でより大きな成果を上げることを求めるが,それだけでは平凡なもので,技術者として本当に世の中に貢献する働きができているかと云えば,それだけでは不十分である。もちろん,基本的には組織力を高め,組織力で競争していくことは重要なことであり,それを否定はできない。しかし,技術者としては未だ物足りなさがあり,やはり他の人が考えつかないような創作をすることで,世の中に貢献したいとの思いは強い。
私自身の経験からは,以前にも何度か述べているが,若い技術者には,失敗を畏れずいろいろなことにチャレンジして欲しい,と言っている。つまり,若い人のチャレンジ意欲を潰さないように心掛けてきた。自分がやろうとチャレンジして失敗することを畏れていては,何も新しいものは生まれない。だから,躊躇するよりチャレンジすべきだ,と。要は,前に転んで失敗することは何も畏れることはない。それよりも躊躇して,やらなかったと悔やむようなことはするべきではない,と。
人の上に立った場合,上司などの顔色を気にして,失敗が起こらないようにルールなど,管理的なことを中心に組織力を強化するような進め方もあるが,それよりも,若い人の失敗(もちろん前向きチャレンジしての失敗など)は自分が責任を持つから,伸び伸びとやって欲しい。ただし,その報告は正確に素早くとした方が,若い人が力を発揮できる機会が広がるものである。
やり甲斐を感じさせる育て方
やり甲斐のあることをすることで,人は成長することも述べたが,その方法の一つとして興味のあることに没頭させることがある。技術者に限らず,人は興味のあることには寝食を忘れて没頭できる性質がある。没頭できないようなことは,本当に興味があるものか疑わしい。要は没頭できる,即ち一つのことに集中することで発揮される能力は絶大なものがある。
即ち,若い技術者が興味を抱き,何とかものにしようとするような姿を見逃してはならない。そういうときは,静かに認めて,好きなようにやらせることが一番である。もちろん,すべてが上手く行くとは限らない。むしろ失敗することの方が多いだろう。そのようなとき,失敗を叱責することなく,そのような姿勢は大いに勧め,次のチャレンジに繋がるような評価をすべきである。
上司に認められることは誰しも嬉しいものであり,そこからやり甲斐を見出して行くことも多い。若い芽が潰されないように,正しく評価してやるべきである。褒めるばかりでもダメで,指摘すべき所はしっかり言い,本人が納得できるようにすべきである。ここで難しいのは,同じ言い方でも,受け手の性格で大きく変わってくるので,その性格をよく見抜き,褒めて育てる方が向いているか,或いは,厳しく指導して育てる方が向いているか,見極めることも育て方の大切な極意である。
どちらにせよ,上司と部下とに深い信頼関係が築かれていなくてはならない。言葉だけでは足りなかったり,言い過ぎたりすることは,そのときの状況や感情でブレることはしばしば起こってくる。しかし,そもそも両者に信頼関係があれば,問題は大きくならない。部下がこの人だったら付いていって間違い無い,と思われるような上司であらねば,人は育たない。
技術者の育成法は様々である
部下を大きく育てることは上司の大きな使命である
[Reported by H.Nishimura 2017.10.16]
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