■技術者の育成 8  (No.548)

成長を続ける要は生き甲斐を感じていることである。生活をするために働くことには違いないが,仕事をすることがそれに縛られているようでは,伸び伸びと働くことができない。技術者として働く以上,新しい製品を創造するとか,ヒット商品を生み出すとか,目指す目標が重要で,その目標を達成することが生き甲斐になるのである。

  技術者としての生き甲斐

技術者として企業で働くようになったことは,ただ漫然となったのではないだろう。大きな野望を抱いていたかどうかは別にしても,何らかの希望をもって技術者として歩むことにしたはずである。理数系が得意で,工学部に入り,レールが引かれた道を何となく歩んでいて,今日の技術者になったと云う人も中には居るだろう。いずれにせよ,技術者として仕事に就いた以上,得意な技術を活かして仕事ができることが幸せである。

技術者とは,何か専門的な技術を持って,企業に貢献する使命があり,それを確実に成し遂げることができれば,一人前の技術者と云える。一人前になるまでに,並々ならぬ努力が必要で,その過程で得られる知識・技術力・判断力・洞察力など挙げれば限りが無いが,それらの能力が技術者としての成長を促してくれるのである。この成長の大きな源が技術者としての生き甲斐である。

  技術者としての歓び

技術者にとって,新しいものを創造できる歓びは何者にも代え難いものである。世にないものを自らが設計し,技術を駆使して,顧客の要求に応え,感動を与えることができるのは技術者としての本望でもある。苦労して創り上げたものが商品として世に出る歓びは一入である。ヒット商品とまでは行かなくとも,顧客に認められた商品が市場に出回ることは,それまでの苦労が一気に吹っ飛ぶものである。己の力が,少しでも世の中に貢献した証しであり,これまでの努力の賜物である。

私自身は部品の技術者だったので,開発した製品が直接顧客に喜ばれた経験は無い。しかし,貴重な部品開発で,その部品が無ければ,製品として成り立たないようなキーパーツで,製品開発者から非常に喜ばれた経験はある。もちろん,その過程では,なかなか要求された性能が出なく,幾多の困難を経験し,製品開発者と共に共同開発とまでは行かなくとも,改良した性能をテストして貰い,その評価結果をフィードバックしてさらに性能を高め,ようやく製品化できるレベルにまで達したときの歓びは忘れられない。こうした,高い目標にチャレンジし,それに到達できた瞬間の歓びは格別である。

技術者にとって,特許を取得できるような技術を搭載できた製品を開発することは必然的なことである。他社より抜きん出た技術により,一歩先を行き,追随を許さないことができたことは望外の歓びでもある。やはり新製品には,特許・実用新案が盛り込まれていることが重要で,競合他社が易々と類似製品で追随をすることを回避できる。開発スピードが速まっている今日,他社を一歩,いや半歩でもリードし,創業者利益を得ることは重要なことで,二番手の改良製品が一番儲けを得る時代は昔のことである。

はやり何と云っても,経営に貢献できた歓びは違う。もちろんそのためには,上述したような顧客に感動を与え,特許を取得できた優良製品で,市場に認められた製品でなければならない。企業の技術者にとって,自分の技術を磨き高めることは目的ではあるが,それが商品と結びついてこそ価値が認められるものであり,結果として企業にどれだけ貢献できているかである。企業貢献のできないような技術者では,なかなか歓びも味わえず,生き甲斐も見出しにくいのではなかろうか。

企業貢献がバロメーターの一つ

 

[Reported by H.Nishimura 2017.10.02]


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