■技術者の育成 4  (No.543)

これまで技術者の育成について,組織強化や個人の成長を取り上げたが,これらは誰もが考えることで,どのようにすべきかを考えていない企業は無い。しかし,現実はなかなか思い通りに行かないもので,理想と思える組織強化ができることは先ず難しい。その一つが,与えられた人材(限られた人材)でやり遂げなければならないからである。

  人材のバラツキ

新製品を開発する場合,必要と思われる技術を持ったメンバーでチームを構成できるとは限らない。あてがいぶちと云えば言葉は悪いが,組織に居るメンバーでやることを考えなければならない。もちろん,全く手の届かないような技術が必要な場合は別だが,大概は何とかなるだろうとの想定でスタートすることが多い。

技術者はそもそも技術を持ったメンバーで,真面目に取り組む者が多いが,その中でもバラツキは多い。バラツキと云うより,技術者自身が個性のある特長を持った者が集まっていると云う方が正しい。したがって,リーダたる者は,各技術者の個性を十二分に把握した上で,その個性を活かすような仕事を与えるようにしなければならない。

苦手なことを一生懸命やらすより,得意なことを自由奔放にやらせる方が成果に結びつくことが多い。何故なら,苦手なことはどうしてもやらされている感が拭えず,効率的にも良くなく,一方,得意なことをやらせば,リーダが期待する以上の成果を出すケースが良くある。つまり技術開発は未知な部分への挑戦的な内容が多く,興味を抱けばより技術者魂が揺すぶられ,アグレッシブな取り組みをする者が多く,そのことが結果的に成果に繋がって行くからである。

人の個性はバラツキがあって当然で,その個性を如何に目標と関連づけるかが,リーダにとって大きな役割となる。それを上手くマネジメントすることが,組織強化にも個人の成長をも助長するのである。

  やる気のない人達

技術者の中には,一部だがやる気の無い人達も居る。個人ならまだしも,その雰囲気を組織内に蔓延させるような人も中には居る。こうした人を如何に組織の中で活かすかはなかなか厄介な問題である。

先ず,こうした人達がどうしてそうしたことに陥っているか原因を把握しておくことは必要である。一番多いのは,年齢もそこそこ行き,出世する見込みから遠ざかってしまった人達である。かといって,仕事をサボって何もしないのではなく,与えられた仕事を何も考えず,ただ黙々とこなしている人達である。技術の仕事の中には,ルーチンワーク的なものも無い訳ではないが,やはり技術としての本来の業務は,創造的な仕事であり,やる気を出してアグレッシブに行動することである。

年配になってくると,なかなかこうした本来の仕事がマンネリ化して,つい言われたことだけに終わってしまっている人達である。技術力が無いわけではなく,やる気が起こって居ない状況下にあるので,それを払拭することが必要となってくる。決して怠けている訳ではなく,真面目にコツコツ仕事をする人の方が多い。仕事のやり方を変えたり,改革をしようとはせず,極めて保守的である。技術力に関してはこれまでに培ったもので,高いものを持っている。

この年配になると,リーダの方が年齢的に若いケースが多くなり,リーダ自身がなかなか年輩者に指揮命令的なことが思い通りにできないようになり,つい任せた状態,酷い場合は自由放任にする場合だってありうる。しかし,数少ないメンバーでチームを構成している以上,勝手気ままは許されない。こうしたことで悩ましいと思っている若いリーダも居る。

こうしたケースに於ける一番の解決策は,その技術者が身に付けている得意なことに関する仕事に振り向けることである。技術者としてのプライドもあり,小間使いのような業務をさせていては,反って意欲低下になり,その雰囲気が廻りに伝染することで,全体の業務も低下してしまうことも起こり得る。そんなことにならないように,少なくともやる気の出るような業務に配置すべきである。つまり,組織全体でプラスになるよう段取りを考えることもリーダには必要なことである。

真面目な技術者ほど,やる気の出るような仕事とそうでない仕事では極端に成果が変わってくることが多い。ベテランになれば全体の仕事の状況も素早く察知できることが多いので,リーダが指示するより,自分で何ができるかを考えさせ,提案させるようなやり方をすれば,自ずとやり甲斐を見出し意欲的に仕事に取り組み始める技術者もいる。いろいろな個性ある技術者が多いので,各々個人的な性格も含めて,意欲を喚起させることが必要である。

技術者の個性を把握し,やり甲斐ある仕事に従事させよう!!

 

[Reported by H.Nishimura 2017.08.28]


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