■集中力を高める 5 (No.532)
集中力の話題から
藤井4段の25連勝
将棋界が沸いている。中学生のプロ棋士藤井4段が今日(6/11)現在,連勝記録を25まで伸ばしてきている。並々ならない新人が現れている。毎日新聞に藤井棋士の母親の言葉が掲載されていたが,それによると,5歳の時隣に住んでいた祖母に駒の動かし方の書いてあるスタディ将棋を買って貰い,みるみるうちに引き込まれたそうである。
近所の将棋教室に通い出し,詰め将棋の問題を解いていて,「考えすぎて頭が割れそう」と幼稚園児とは思えない言葉を発したそうである。また,小学2年の頃,地元のイベントで谷川九段(17世名人)に指導してもらう機会があり,飛車,角抜きのハンディをもらって健闘したが,負けそうになって,「引き分けにしようか」と偉大な先人の優しい提案に,聡太さんは盤を抱えて号泣し,お母さんが周りに謝りながら,地下鉄の駅まで引きずって行った。それでも聡太さんは,ぶつぶつ文句を言っていたそうである。「まだ対局を続けたかったのか・・・勝負の執念に驚きました」とお母さんは語っておられる。
小学4年生でプロ棋士養成機関の奨励会に合格し,大阪で月2回開かれる例会に付き添い,中学校に入るまで,午前4時半に起床し,新幹線で通ったそうで,負け越したら口もきかず,6連敗したときは会館を出たら大泣き,新幹線でも泣き続けていたと云う。だが,一方では将棋によって,集中力は益々研ぎ澄まされて行ったとのことである。小学5年で司馬遼太郎の「龍馬がゆく」を読破したと云うから驚かされる。お母さんの言葉では,「集中力と負けず嫌いが聡太をここまで成長させた」とのことである。
人は「天才」の一言で片付けるかもしれないが,生まれながらの素質はあったものの,集中する力は将棋によって伸ばされていったことは間違いない。子供のやりたいことをそのまま伸ばしてやる親の役目とは云え,子育ては見事と言わざるを得ない。
錦織の壁
全仏オープンで準々決勝でアンディ・マレーに第1セットを獲りながら逆転負けを喫した。第1セットの調子からは,勝てる見込みもあったように見えたが,ズルズルとマレーの術中に嵌ってしまった。この対戦では,マレーが第2セット以降特に変わったことはなく,むしろ錦織が自滅したようである。
今回に限らず,錦織は技術的には,ベスト10の強者と戦っても,互角の戦いを挑める力を持ち合わせている。どうもここ一番と云うときに弱さが出てしまうようである。メンタル(精神的)な脆さとも云えるが,要は集中力を持ち続けることができないようである。海外の選手よりは小柄で体力的な強さは若干劣るものの,俊敏さや鋭い打球で互角に戦えるようにはなってきているが,まだまだ大きな壁がある。
小柄ながら世界を制したマイケル・チャンコーチに仕え,指導を受けているが,もう一つ伸びが止まってしまっている。練習量がどれだけなのかよく判らないが,どこかに故障をしている状態をよく見掛ける。体力的な強さが足りないのかも知れない。スポーツ選手でも,多少のケガをモロともしない体力的に強い選手もいるが,故障がちの選手もいる。ランキングを維持しようとすればある程度試合に出続けなければならない。
私などが言うことでは無いが,錦織に必要なのは集中力を持続できるメンタル的な部分ではないか,と云う気がしてならない。ここでもう一度,メンタル的なものを磨くことをして世界一に挑戦して欲しいと願うばかりである。
勝負は集中力が大きくものを言う
[Reported by H.Nishimura 2017.06.12]
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