■集中力を高める 4  (No.531)

集中力を高める方法は身近なところにもいっぱいある。その一つに,会議の議事録や講義内容のノートの取り方で,きっちり記録しようとすれば,その間の会議内容や講義内容に全身を集中させることが必要で,これができれば集中力アップにつながる。

  会議の議事録の取り方

特別な訓練をしたわけではないが,人よりも議事録を的確に書くことは得意な方である。中には一字一句まで丁寧に書こうと録音して議事録を書く人も居るが,通常,会社での会議の議事録をそこまで詳細に書く人は居なく,またその必要もない。大筋の内容が整っていれば,会議に出た人はそれで十分だし,関係する人も会議の内容の要旨がきっちり判ればよいのである。

発言者まで特定して,記録することも少ないが,会議の雰囲気が伝わった方が良いには違いない。そのためには,議論の過程や意見のやり取りの詳細が判った方が理解しやすいことも多い。記録するには,発言者の言いたいことを素早く理解し,書き留める必要がある。だから,耳を澄まして,発言者が言わんとすることを集中して聞き取ることが不可欠である。一般的に,発言者は自分では判るように発言したつもりでも,なかなか伝わらないことがある。また,論理矛盾をした発言もよくある。

そんな様々な発言者をおいて,議論の流れや,意見対立の構図を頭の中で整理しながら記録することが求められるので,ある程度経験を積まないとできない。新人や若い人に議事録を書かせることが多いが,余程上司がしっかり添削しないと,肝心な中身が無い議事録になってしまっていることが多い。それの多くは,議論の中身が十分理解できないまま記録を採ろうとするからである。だから,議事録は会議の内容が良く理解できる人が執った方が懸命である。

一時間程度の会議でも,内容に集中していないとなかなか思うように記録できない。一字一句を追い掛けると,とても記録スピードが足りず,遅れが生じ,次第に中身の検証もできず,肝心なことがぽっかり抜けてしまうことも多い。したがって,自分の記録できるスピードと,肝心な内容を逃さない記録の仕方のコツを覚えなくてはならない。耳を澄ませ,集中する力はこうして磨かれて行くのである。

私の記録方法は,ノートやメモ書きで記録するのではなく,ずっとノートパソコンを使って記録している。特に,一字一句を追わず,要旨を逃さないようなメモ書きを心掛け,会議の後で,文章を整えるようにしている。こうすれば,発言の一字一句とは異なっても,要旨のズレがないため,発言が間違って受けとめられるような事態は避けられる。だから,全体を通して内容が締まり,分かり易い議事録が出来上がる。もちろん,会議中の集中力は研ぎ澄まされて維持されている。

会議にノートパソコンを使用し始めたのは,ノートパソコンが出だした1990年代から,会社で会議があればノートではなく,ノートパソコンを持って会議に臨んだ長年の努力の賜物である。当時は,ノートパソコンが出だしたばかりで,会議などの記録に用いる人は先ずおらず,目立った形にはなったが,気にせず会議に迷惑は掛けないような注意は怠らなかった。また,これを許して貰える環境があったことも幸いした。メモ用紙やノートに記録して,議事録を書き直すよりも効率的であり,後からの加工も簡単だし,整理して保存することも容易で,これほど便利なものは無いと先を見越していたのである。今では,ノートパソコンで記録することは珍しいことでは無くなっている。

もちろん,こうした記録が上手く採れるのも,慣れたからというのではなく,事前準備も重要で,会議があれば,事前にレジメなどの資料に目を通し,どんな内容が行われるかを予め把握しておくことによって,大凡の推測ができ,頭に中の整理ができていることが秘訣である。集中力はこうした怠りのない事前準備な中で活かされるのである。

  講義内容のノートの取り方

未だに,大学の講義を聴講生として聞く機会を得ている。学生の殆どが講義の板書などを必死にノートに写しているが,私は独りノートパソコンを持って,講義を聴きながらキーボードを打っている。もちろん,教師の板書を書き写すことはもちろん,話された内容でこれはと思うことは,そのままキーボードを打つことにしている。ブラインドタッチができるほど早く打つことはできないが,話されている要点を打ち込むには十分なスピードである。

これは前述した会社での会議などにノートパソコンを持ち込み活用していたことの延長線上であり,私にとっては通常の作業の一環である。ノートに書き写している学生がやっていることと何ら変わりは無く,むしろパソコンのデータとして保存できているので,いつ何時必要となれば,パソコンのハードディスクに整理されたデータを見ればよく,活字が必要な場合は,プリンタで打ち出せば十分である。写真や画像を一緒に見たいケースでも,文章の中に取り込めば良いし,あるいは関連するフォルダを作って,整理して保存しておくことも可能で,ノートは特別なケースを除いて,持っていない。

ノートパソコンさえあれば誰でもできることではない。前述した会議の議事録同様,講義内容の要旨を素早く理解しなければならない。もちろん,講義を受けている状況なので,内容をすべてその場で理解できないこともあり,ただ記録に集中しているだけのこともある。目は講師の様子とパソコンの画面を追いながら,耳は講師の言葉を的確に捉え,これはと言うような発言はメモに残すようにしている。十分な文章になっていない部分は,復習したり,次回の予習のときに整理したりすることで整うようになっている。

なかなか学生に同様のことを推奨するのは難しい。なぜなら,小学校以来,授業はノートに記録する習慣が身に付いている。ノートパソコンが普及したとはいえ,高校生のときから,自由自在にこなすことはなかなかできることではない。スマホなど画面を見ることや,ツイッターなどつぶやく文章は書けても,講義のノートを取れるほど充実はしていないだろう。もちろん,中にはできるという学生もいるだろう。一見,授業に集中していないように思われがちだが,逆で集中力を高めて聞くことで,ノートと同様に記録できるのである。

ノートパソコンを活かした集中力を高めてみよう

 

[Reported by H.Nishimura 2017.06.05]


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