■集中力を高める 3  (No.530)

一つのことに夢中になったり,没頭することがあるが,これは必ずしも集中力が高まった状態とは云えない。集中することと,没頭することはよく似ているが違う。これについて述べてみよう。

  集中力と没頭の違い

勉強や仕事などを,他のことに煩わされることなくやりたいとの思いはあり,集中力があればできるのではないかと思っている。確かに,集中することができれば効率よく成し遂げられ,思い通りの結果に導くことができる。だから,集中力を高めたいと思うのである。好きになることが集中力を高められることは前回に述べた。

ところで,好きなことをやっていて,それに没頭して時間の経つのを忘れてしまった経験はおありだろう。確かに,一つのことに集中していることだが,むしろ夢中になってしまっている状態であり,我を忘れてしまっている状態で,心ここにあらずである。つまり,心をコントロールされている状態ではなく,むしろ心を奪われてしまっていると云った表現の方が正しい。この状態は,求めている集中力ではなく,集中力を高めている状態とは違う。

一番分かり易いのは,趣味などで時間の経つのを忘れてしまっていたり,ネットサーフィンしていたらいつの間にか30分や1時間が過ぎてしまっていた経験は誰しもある。これは集中力を高めてやっていたからではなく,無意識の中でそうなってしまっていた,と云うことであり,無意識状態では集中力とは無関係である。夢中になるとは一点に焦点を定めてはいるが,目的を持った状態ではない。

つまり,集中してやることと没頭との大きな違いは,意識しているか否かで違いである。対象(物)に対して,意識して目標を定め,その一点に焦点を定められれば,単純な無意識の没頭ではなく,集中力を発揮できる状態にあることになる。

  没頭することは集中力には役立たないのか?

ただ,没頭することもできない人は集中力を発揮することもできないのではなかろうか。没頭もできないと云うことは,一つのことに夢中になることができず,何かと気が散って落ち着きのない状態であり,精神的にも不安定な状態に陥っていることが多い。逆説的な言い方になるが,集中力を高めるには,先ず没頭できるようになることから始めても良い。つまり,没頭すると云うことは,嫌なことでは無いはずである。好きだからこそ没頭できるのであって,興味が無ければ没頭すらできない。

最初は趣味でも,好きなことでも良い。それに夢中になることができればよい。没頭したり,夢中になっている状態は無意識の中でやっているので,自分でも良く判らないことが多い。しかし,そうした状態になることができれば,次は,何らかの目標を作ることである。大それた目標でなくてよい。小さな達成しやすい目標から始めれば良い。そうして,小さな達成感を味わうことができれば十分である。それは小さな歓びになってくる。

この歓びを味わうために,何とか努力しようと云う気が出てくればしめたものである。無意識が意識した状態に移ってくるのである。これは当に集中力を高める第一歩である。要は意識して,目標を達成しようと云う意欲である。この意欲が集中力を醸成してくれるのである。こうして,興味を持ち意識して没頭できることができれば,それを勉強や仕事に活かせば目指す集中力アップに繋がることになる。

 

興味を抱き,没頭することから始めよう

 

[Reported by H.Nishimura 2017.05.29]


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