■集中力を高める 1  (No.527)

集中力を高めることで,十分な力が発揮できたり,思いの外良い結果が得られたりすることがある。いろいろな場面で集中力が高められるか否かで結果が大きく違ってくることを経験したことは誰もあるだろう。

  集中力はどのように発揮されるか

スポーツなどで,ここ一番と云うときに実力を発揮できる人と,その逆で全く実力が出せない人がいる。前者は,ここぞとばかり一点に集中して完遂しようと力を出し切ることができる人で,集中力がある人だと云い,後者は,ここだと云う緊張感が走り,思い通りに身体が言うことを効かない状態で,金縛りにあったかのような状態に陥り,実力が全く発揮できない人である。

この違いはどこにあるのか? 先ず前者は,日頃からの練習や訓練で,起こるべき事態を予測し,成功するやり方を学んでおり,いざと云うときに慌てず冷静に判断でき,リラックスした状態で,事に当たるので,練習通りの実力を発揮できるのである。こうした成功のイメージを持っているだけで,結果に大きな違いが出てくるのである。

他方,後者は,練習や訓練をしていない場合はもちろんのこと,練習していても,成功するイメージよりも,失敗するのではないかとの畏れが先になり,それが正常でない緊張感を呼び出し,いろいろなことを考えてしまい,結果が伴わない状態になってしまうのである。能力に差が無くとも,精神状態の違いが結果を左右することはよくあることである。

ここぞと云うときの意識・無意識の違いによって,集中力を発揮できるか否かが違ってくるようである。いざと云うとき,意識し過ぎてもいけないし,意識しない緊張感の無い状態でもダメで,適当な緊張感は必要である。つまり,意識よりも無意識と云った方がよいのかもしれない。この無意識に依る感覚が,意識を素直にさせ,一心に物事に集中する力に変えているように思われる。

この無意識の感覚を養うことが集中力を高めることに繋がっているようである。しかし,この無意識の感覚をどのようにすれば養えるのだろうか。先ずは,日頃の生活リズムから考えてみよう。

  生活リズムの中の集中力

我々が生活をしている中で,知らず知らずのうちに集中力を高める,或いは集中力を発揮する機会を作っている。

  @時間やステップで区切る

だらだらしながら何かをやっているようではなかなか身に付かないことが多い。要は真剣に取り組んでいるかどうかで,結果が大きく違ってくる。ときどき休憩を取りながら,気分を一新して取り組むことが効率的なのである。

具体的な例は,学校での授業である。時間割があるように,小中学校では50分授業などが多い。つまり,物事を学習するのに適切な時間割である。長時間同じことをしていては,飽きがきて,なかなか思うように頭に入らない。子供にとって,集中力が維持できるのが,せいぜい小1時間程度である。10分程度の休み時間を取って,次の授業に移る。これが子供にとって最適な学習時間だからである。大学生になると90分程度の授業時間になるが,これは大人になってくると集中できる時間も長くなり,内容も複雑となり,ある程度の時間が必要だからであろう。

何か大きなことをするには,いきなり最終目標でなく,小さく区切って,その中で小さな目標を作り,それを順番に達成していくやり方をするのが常套手段である。これは,区切ったことで確実に目標を達成しながら進むことで,達成感ややりがいを感じながらできるからである。つまり,手に届くような近くの目標を設定することで,それに向かって集中でき,実力を発揮できる確実な方法である。

  A予習をしておく

いざというとき力を発揮するには,やはり事前の準備が必要である。そのときになって初めてやるのと,事前にやっておいてどうすれば良いかを知っているのでは,全然違ってくる。子供の頃は学んだことを自宅に帰って復習して覚えることが重要だったが,だんだん大きくなると予習しておくことが効果的で,授業中に集中できて覚えることができるからである。

予習して授業に臨むのとそうでないのでは,授業を受ける楽しさが変わってくる。つまり,事前に予習しておくと,授業の内容が良く判り,その場での理解力が違ってくる。そのことはつまり,頭に入ることが充実しており,これで少し復習をすれば,予習・授業・復習と3回繰り返すことになり,記憶力がアップするのは間違いない。

また,予習をすることは,興味を持ったり,関心を抱いたりして,事前にポイントを掴むことである。或いは,疑問に感じたことは素直に記憶して,授業のときにしっかり聞くことである。そこでも疑問が残ったら先生に質問すればよい。そうして理解することができれば,確実に自分のものにしたことになる。興味を持った点や関心のあった箇所は授業でより詳しく知ることで知識となり,それが更に進めば知恵を発揮する原点にもなりうる。

  Bルーティーンを決める

よくスポーツ選手がやっているのが,手順を決めておいて物事に当たることである。これは決まったことをすることによって,平常心を保つことで実力を発揮しようとするもので,他人が同じことを真似しても殆ど効果は無い。

スポーツ選手に限らず我々でも生活の中でルーティーンを決めている人も居る。朝起きてからの一定の動作,何気なくやっていても,それが自然と決まったやり方だと,違ったやり方をすると違和感を覚える。一日が平穏無事で済むには決まったやり方を踏襲するのが自然体であり,生活のリズムが整い,平常心が保てるのである。

いざというときに実力を発揮できるのは,ルーティーンを決めていて平常心で事に当たれる優れた能力である。いろいろなことを考え,思い悩むことが多い今日,常に平常心を維持し,実力が出せるルーティーンを持っていることは誰もができることではない。日頃の何気ない行動の一つが大いに役立った経験は重要なことである。

 

以上のように,日頃何気なくしていることが,集中力を高めることに繋がっている。

 

いざというとき,集中力を高められることは素晴らしいことである

 

[Reported by H.Nishimura 2017.05.08]


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