■海北友松展  (No.526)

海北友松展が京都国立博物館開館120周年を記念して開催されている。

  展覧会に行くきっかけ

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京都国立博物館で海北友松展が開かれており,それを見に出掛けた。私自身これまで美術展や博物館などを訪れることは数少ない。京都の神社仏閣を巡る中で,宝物館などに展示されている国宝や重要文化財を見ることはあっても,わざわざ美術展を見に行った記憶は殆ど無い。

そんな私が,今回の海北友松展を見に行こうと思ったのは,昨年度京都検定を受検するため,京都のいろいろなことについて学ぶ中で,美術に関する箇所があった。これまで歴史や美術などで安土桃山時代から江戸時代の絵師,狩野一門や長谷川等伯などは有名で,京都の有名な寺社仏閣の襖絵などを描いたものは知っていたが,海北友松については初めて聞く名前だった。それも今回まで,「かいほくゆうしょう」と覚えていたが,“かいほく”ではなく,“かいほう”と読むことを知った次第である。

狩野派でもなく,長谷川派でもなく,それでいて京都の有名寺院の襖絵などを描いた,特に迫力ある雲龍図を見て,どんな人なのだろうと興味を覚えた。ただ受験用に名前と描いた絵を覚えたのが昨年末である。そのタイミングで,今春京都国立博物館で展覧会が催されることを知り,更には今年に入り,新聞でも大々的に取り上げられていたので,この機会を逃すまいと思っていた次第である。

  海北友松(かいほう ゆうしょう)とは

安土桃山時代の天文2年(1533年)に近江の浅井家の家臣の海北家に生まれた武家の出であり,若い頃は禅門に入り東福寺で修業したと云われている。このとき狩野派から絵を学んだようで,豊臣秀吉に画才を認められ,晩年は画に専念したと云われている。

画の多くは水墨画で,中国の宗の時代の画法で,独自の画境を開いている。絵師としての活躍は60歳を過ぎてからで,その筆致は非常に魅力的で,大胆且つ繊細なものである。絵心がそれほどあるわけではない私でも,その絵には非常に惹かれるものがある。

彼は建仁寺本坊の大方丈障壁画が全50面に亘る壁画を残している。そんなに多くの壁画があったことも今回初めて知った次第である。その代表的なものの一部を紹介する。建仁寺は「友松寺」とも云われるほどである。

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雲龍図(建仁寺 重要文化財)

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竹林七賢図(建仁寺 重要文化財)

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松に叭々鳥図襖(建仁寺 禅居庵 重要文化財)

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梅図(建仁寺 禅居庵 襖絵の一部)

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梅図(建仁寺 禅居庵 襖絵) NHKの放送よりカメラで撮り込み

ネット上での全体の画像が無かったので一部しか無いが,テレビで放送があったので,そこからカメラで撮って全体の図を得た(左右に展示のガラスの切れ目が入っている)。この絵は枝振りの鋭さと空間の配置が絶妙で,非常に気に入ったものだった。

建仁寺以外にも各所に重要文化財として残されているものがある。

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花卉図屏風(妙心寺 重要文化財)

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月下渓流図屏風(ネルソン・アトキンス美術館)

この2枚は晩年の水墨画の最高傑作との呼び声が高い作品だが,昭和33年に米国ネルソン・アトキンス美術館の所蔵となって以降,日本に帰ってきたことは無く,今回60年振りに里帰りし公開されたものである。

今回の展示は,第一章の絵師の始まりから,第九章の墨技を楽しむまで,博物館の2フロワーを使っての展示で,十分な見応えある作品が次から次へを現れる。

  展示会を見終わって

美術展など殆ど行ったことのない私なので,絵心はよく判らない。ただ,趣味のカメラで写真を撮りまくっているので,その風景写真を狙うアングルと今回の迫力ある画とは,どこか共通点があるように感じられた。特に,風景画の枝振りの何とも言えない大胆な迫力と人を魅了する稲妻のような画には,写真では撮れない美しさを感じた。

また,名前をようやく覚えたばかりの海北友松であったが,60歳を過ぎての晩年の大活躍に触れ,今回の作品を通じて改めて親しみを覚えると共に,500年以上経った今日でも優れた作品は人の心を打つものだとしみじみ感じた次第である。

海北友松を新たに知るよい機会となった

 

[Reported by H.Nishimura 2017.05.01]


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