■技術革命 (No.522)
技術革命と云う言葉が適切かどうかはよく判らないが,技術革新とも云われ,言葉の厳密な意味は置くとして,新しい技術によって,世の中が大きく変わり,我々の生活をすっかり変わらせてしまった技術がある。特に,我々の世代は,その技術の変遷を身を以て体験してきている。それらについて述べてみよう。
LSIの進化
真空管だったラジオが,トランジスタに置き換わり,小型ラジオが普及した時代。高度成長期を迎え,テレビが一般家庭に入り込むと,トランジスタを集積したICが出現,すぐにそれが巨大化して,LSIになった。これまで,1個ずつの部品を集めて,機能を出すために搭載していた電気製品が,小型化・集積化の進展に伴い,少ない部品で多機能の製品が作れるようになった。
それは,これまで少なくとも目で見えるものだった部品が,目では見えない,特殊な顕微鏡でしか見えないような微細技術の発展と共に,接続部の故障が減り,信頼性も確保されるようになって行った。我々の世代が入社して,先ず出くわした技術革新の一つであった。
マイクロコンピュータ
この集積技術の最たるものがマイクロコンピュータの出現である。これまで大掛かりな装置としてコンピュータが作られていたが,そのコンピュータの性能と同等の機能を,机上に置けるようなもので実現できるようになってきた。これを成し遂げたのがマイクロコンピュータである。最初は4bitから始まり,8bit,16bitと進み,パーソナルコンピュータ(所謂,パソコン)が普及し始めた。
一方で,マイコンは家電機器にも搭載され,これまでのハードウェアの機能を,ソフトウェア技術で実現できるものになって行った。ソフトウェア技術は,我々の時代は大学生の講義で,大型のコンピュータの言語であるFORTRANを学んだだけである。簡単なプログラミングでコンピュータが計算してくれることを初めて知ったのである。(真空管からトランジスタへの移行が講義で行われていた時代である)
企業で技術部へ配属され,トランジスタでの回路設計から,IC化した回路設計,次にマイコンを利用した回路設計と新しい技術を次々取り込んだ懐かしい時代で,パソコンの前身であるマイコンの動作を,技術部の仲間と一緒に検討し,その利用を目指した懐かしい時代である。
インターネット
一方,パソコンは当初のMS−DOSの文字の世界から,Windowsが出現し,画像処理ができるものへと進化し,インターネットなるものが会社でも話題になり始めた。当時インターネットが今日のようになるとは思えず,ただパソコンの遊びの道具として興味を惹かれる程度のものだった。ただ,世界がどんどん近くなってきた感じがあった。
会社内でのイントラネット(社内限定のインターネット)が普及をし出し,日常の処理にイントラネット無しでは仕事のならないようになったのは,パソコンが社内に何台も入ってからで,その当時は,デスクトップパソコンから,ノートパソコンへと進化して行った。デスクトップパソコンは社内にあったが,個人持ちのノートパソコンを社内に持ち込み,利用していた時代もあった。企業秘密の情報もあったが,その当時は情報管理はそれほどやかましくはなく,重要なものはコンピュータよりもハードな紙の状態だった。
インターネットの拡大は,あっと言う間に拡がり,各家庭にもパソコンが普及するとともの,単なる情報源としてのインターネットがいつの間にか双方向で利用できるものになり,オンラインショッピングなどへの拡大に貢献した。情報に価値を見出す世の中にすっかりマッチングした技術であり,個人の利用がここまで進むとは,インターネットの初期から知っている者にとってはただ驚くばかりである。
携帯電話
携帯電話も,当初は重い無線機のようなものだったが,これも小型化・高機能化がみるみる進み,いつの間にか個人が手軽に持てるものにまで進化してしまった。これは,電子部品の小型化とソフトウェア技術が上手く噛みあったすぐれものであり,今や個人の必需品であり,個人用の電話やメールとしての便利さは十分理解できる。
さらに,携帯電話はパソコン機能を有し,今や電車の中で,本を読んでいる人より,スマホを片手に見ている人ばかりである。テレビが普及したとき,「一億,総白痴化」と大宅壮一が産み出した流行語だが,当に,当時のテレビに相当するのがスマホではないだろうか?技術革新は進むが,人の能力は進むどころか,衰える傾向にあるように感じられる。
ロボット
ロボットは早くから注目され,21世紀には活躍するものの一つに挙げられ注目されていた。これも当初は,人間の手作業を置き換えるものの一つと考えられて,工場の装置の一つから始まったが,これも進化を遂げ,今ではAIとしてロボットが人間の頭脳と勝負するようなものにまでなってきている。
人の仕事の代用品のようなロボットであるが,AI機能を搭載して,益々人間に近づいてきている。既に,人間の記憶や計算力ではコンピュータロボットが上回っているが,残る創造力にも挑戦中で,やがては人間の発想力にも近づく日がやってくるものと思われる。これからも技術革新は際限なく続くだろうが,人間を超えることは無いだろう。
いろいろ技術の進化の経緯を述べたが,我々の世代は技術革命,技術革新が華々しい時代だったことをつくづく思う次第である。
[Reported by H.Nishimura 2017.04.03]
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