■科学技術の発達について 4  (No.518) 

通常一般の技術者は新しい製品を開発することに一生懸命であり,自分の開発した製品が世の中に貢献することを目標に,生き甲斐を感じている。そうした若者の夢を無くすようなことがあってはならない。

  純粋なる開発を目指して

今回の議論は,そもそも科学技術の発達が良き面と悪い面とがあって,特に問題視されているのが,自然科学はおおきな視野で捉えることなく,小さな問題を解くものであって,人間社会にあっては,残念ながら大きな問題が見過ごされてしまっているのではないか,と云う問い掛けである。

確かに技術者は,小さなと云われればそれまでだが,これまで誰もができなかったことを新たに発見,発明して喜びを感じている。大きな見地からか,小さな見地からかは問題にせず,新たな技術の解明に,発見に日夜努力を重ねている。その技術者の姿に対して,大きな見地からの見方が足りないと云うのは失礼であると思う。もちろん,それが明らかに武器を目的としているとか,人間社会を損ねるようなもので無い限り。

技術者は,純粋に技術の中身を追い掛け,極めようとしている。それ以外の雑念が入るようであれば,なかなか期待されるような技術開発はできないのである。一点に集中し,それを極めようとするから,解が見つかるのであって,そう容易いものではない。人間社会の発展に少しでも貢献しようと努力する姿なのである。

今日の日本が技術大国になりえたのも,こうした技術者の地道な,且つ純粋な技術開発の賜物であって,多くの日本人がその恩恵を被っているのである。

  極限を追い掛ける技術

私が携わってきた部品開発でも,如何に小さくて,しかも高性能なものを産み出すかが重要であり,その極限の追求に粉骨砕身しているのである。最近では,殆どの人が持っている携帯電話やスマートフォンにおいても,何百と云う数の電子部品が搭載され,電子部品が各々の機能を発揮することで,あんなに小さくて高性能なものが出来上がっているのである。一昔から,どんどん小型化,高性能化されてきて非常に便利になってきているのも,こうした技術者の努力に依るところが大なのである。

しかし,大きな見地から別な確度で見れば,電子部品の小型化,高性能化は,北朝鮮に代表されるようなミサイルにも無くてはならない部品の一つでありうる。だから電子部品をどのように使うかは,部品技術開発をしている技術者には,関与できないものであり,ミサイルなど人間社会の望まないものを作り上げるのは,製品開発側の責任である。

ミサイルなどにも利用されるリスクがあると云って,小型化,高性能化の部品開発を止めれば,皆さんが便利に,且つ重宝に使っているスマートフォンだって,あのように小型にはなり得ないのである。今回の問題提起は,明らかにこのような部品開発にも言及したものではないと受けとめるが,科学技術の発達は,部品・材料に留まらず,いろいろな技術者の努力によってなされていることは明らかであり,これを否定することは誰もできないだろう。

  若い技術者に向けて

若い技術者にとっては,大きな見地からの議論はさておき,与えられた技術開発に専念し,今までに無い新しい発明,発見を目指して欲しい。それが会社に貢献し,広く世の中に貢献できるものになるよう努力を惜しまないで欲しい。それが若者の特権であり,多くの人が望む姿である。日本が技術大国であり続ける源泉でもある。

もちろん,開発している技術がどのように使われるかは十分知っておいて欲しい。ただ,悪知恵が働く人間は必ず居る。目標としている開発の利用が,どのような範囲に及ぶかは考えておいて欲しい。開発途中で,社会の文化発展に貢献する技術では無く,軍事的や武器などへ利用されることが明らかになった場合は,一度立ち止まって,その開発目標が世の中にとって良いものなのかどうかくらいは熟慮し,あらぬ方向に利用されようとするならば,勇気を持って開発中断する意見具申をして欲しい。

技術開発は日本の宝物である

 

[Reported by H.Nishimura 2017.03.06]


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