■職場の問題点とその解決策 20 リーダが育たない 3  (No.500)

企業では,昔のようなきっちりしたピラミッド型の組織はだんだん少なくなってきている。フラット型と称して,誰か一人がリーダになり,残りはすべてフラットである。所謂,文鎮型の組織形態である。流動性が高く,変化に富んだ社会では必要として生まれてきたものである。しかし,旧来の組織とは違うことも多い。

  誰もがリーダになるチャンスあり

昨今は組織が流動的であり,従来のようにリーダになるには段階を踏んで,徐々に近づいていくようなスタイルは減ってきている。旧来は,組織責任者になる課長になるには,係長で十分経験を積み,課長代理のような経験をしてその位に付くことが殆どであった。ところがここ10年ほどは,マネジャーとか,リーダとか称して,段階を十分踏まずとも,ある日突然(とは言い過ぎかも),リーダに指名されることが起こっている。

変化の激しい今日にあって,従来型の組織では,意志決定に時間を要して早い決断,対応が間に合わず,大きなチャンスを逸してしまっていることが起こり,スピード重視の組織にならざるを得なくなってきている。要は,何層構造もあるような組織体では,順次上に上がって行くのに時間を浪費してしまっていることがある。そこで,簡素化された組織が自ずと生まれてきている。

また,流動的な組織であることは,きっちり決まったやり方で組織形成がなされるのではなく,その場に最適な組織体で対応することになり,場合によって誰もがそのリーダになり得るチャンスが与えられている。そこには年功は殆ど関係なく,能力のある最適な人が選ばれる。つまり,誰もがその場に相応しい才能を有していれば,リーダとして抜擢されることがあるのである。

  リーダ教育が不十分

こうしたようなリーダの抜擢は,それ自体は組織を活性化させ素晴らしいことであるが,組織論から言えば,リーダ教育などリーダとしての素養を十分教育されずになってしまうリーダが現れることになり,強い組織を作り出すことからはやや弱点をさらけ出したやり方になってしまう。

リーダとしての素養は一朝一夕にできるものではなく,やはり経験を積み上げて作り上げられるものであり,通常はその教育訓練がなされて,育成されていくものである。もちろん,リーダとして抜擢されるのであるから,能力的には優秀な人材ではあるが,教育訓練を十分受けた人とは差ができてしまう。

もちろん,リーダになって育成すると云うことも行われるが,じっくり育てる猶予は無いから抜擢されるのであり,且つ企業間の競争ではライバルも多く,のんびり構えているようでは負け組に落とされてしまいかねないのである。リーダがしっかりしているかどうかは,企業の生命線でもありうる。

  若手抜擢・女性抜擢のリーダ

さらに目立つのが,若手抜擢や女性リーダの抜擢である。長い目では重要なことで,活性ある企業では当たり前のことである。これはリーダ育成も含めて考えられており,決して悪いことではない。むしろ,組織を活性化させる起爆剤でもある。

ただ,風潮に流され,十分な素養も無いまま安易にリーダにすることは,些か疑問である。十分な戦略の下で,計画的に行われているのであれば良いが,無理やり,数字合わせのためにリーダに仕上げてしまっているケースもある。これは勧められたことではない。通常は行わないことを無理やり実行するにはそれなりの理由があり,上から与えられた数値目標など,人数合わせが行われているようでは,その部下はたまったものではない。

一つの判断ミスが,企業を揺るがすようなことまでは起こらないにしても,組織の弱体化は不可避である。そうしたことが起こらないように,バックにその一段上の幹部がバックアップするとか,大きな支障が出ないまでに手を打てるようなことになっている必要がある。

案外上の幹部は無頓着でも,その部下が目を光らせて,問題点を容易に見つけ出しているものである。

  全体把握が出来ないリーダ

才能があるからリーダに指名されても,なかなか全体を把握するようなゼネラリストの感覚が不十分なリーダも居る。確かに,その場面の対応には最適なリーダであっても,一つのことだけに集中できるような場面だけではない。リーダになれば,多くいる部下の各々の課題も把握し,その優先順位を付けながら仕事を進めることになる。

二つ三つの仕事を並行にしながら,優先順位を付けることは,これまたリーダとして必要な要素である。この判断をできるためには,取り巻く環境下で,全体を総合的に見極め,優先順位が高いものから解決を図らなければならない。時間的に迫ってくるものを優先しているようでは,リーダとしての資格はない。誰でもできることである。

  課題解決はできても課題形成が不得手

これまでの担当者としての優秀な経験から,課題解決には人一倍優れた才能を発揮する人がいる。リーダとしても重要なことである。ところが,この課題解決型の能力は,起こった問題を素早く解決する能力には優れていても,将来を見据えて起こり得ることを事前に察知して,予め手を打つことができるとは限らない。

リーダには,リスクに対応することなどを始め,事前に起こり得ることを予測する課題形成能力が必要である。これがなかなかできない人が居る。これでは,リーダとして十分な素養があるとは云えない。課題解決力は,課題形成力を持っているからこそリーダとして相応しいのであり,解決力だけでは優秀な担当者止まりと云えよう。

特に部下を多く持つリーダは,目標に対する課題形成をしっかりして,部下に各々適切な指導をしながら,チームとして成果を上げて行かなければならない。そこでの課題形成力はリーダとしての生命線でもある。

昨今の組織でのリーダの問題点は多い

[Reported by H.Nishimura 2016.10.24]


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