■職場の問題点とその解決策 19 リーダが育たない 2 (No.498)
自分に優秀なスキルがあればリーダになり仕事ができると思っている人も多いが,仕事に対する優秀なスキルとリーダとしてのスキルは別物である。
チームとしてのリーダの役割
自分に専門的な優秀なスキルがあれば,チームの仲間を引っぱっていく力も備わっていると思われがちである。これは,上司から見てもそうだし,自分自身でもそう考えている人が多い。確かに,専門的に優れている人は,他人より優れた才能を有しているので,リーダとしての役割も,十分やりこなす力を持っている人も多い。だが,必ずしもそうでは無いのである。
前回でも述べたように,能力があるだけに自分独りで何でもやってしまおうとする傾向がある。ここが落とし穴で,自分独りでできる限界がよく判っていないことが多い。一番重要な役割は,自分の力を最大限に発揮することではなく,チームとして部下の力を最大限活かし,組織力を発揮させることであり,部下がどれだけ伸び伸びと仕事ができる環境を与えることができるかであり,専門的見地からの能力も必要とするが,それ以上にチームとしてのバランス,全体を把握して統率するなど,組織力を高めることが大きな仕事なのである。
だから,専門的に一人で仕事をすることが非常に得意な人でも,集団で仲間を使って仕事をすることが苦手な人も居る。特に変人とまでは行かずとも,専門バカ的な一つのことに集中することが得意な人は,得てして集団で仕事をすることを嫌う。こういった人は幾ら専門的知識や能力が高くても,リーダとしての仕事には向かない。むしろ,専門的な技術者としての役割を発揮する方が,組織的にもその方が有効だし,本人にとっても幸せなことである。管理職よりも専門職の幹部として育成する道が作られているのはそのためである。
要は,その人が組織人としての役割を果たすことに向いているかどうかを見極めておく必要がある。一般的には,その人の性格など見極めれば大凡は見当が付くが,なかなか見極めができない人も結構居る。やらせて見ないと判らないこともある。経験を積ませてリーダとして育てて行くことも必要なことである。
プロジェクトマネジメント力が必要
通常,技術者のリーダは,プロジェクトを遂行することがしばしば起こる。余程大きな組織の技術幹部ならいざ知らず,通常の技術リーダは,部下を使ってプロジェクトを完遂させることが一番の仕事となることが多い。そこでは,プロジェクトマネジメントと云う,技術的専門能力よりも,マネジメント力が必要となってくる。
一般的にプロジェクトとは,未知なることへの挑戦であり,経験していないリスクや環境変化への対応が必要となってくる。目標に対して,如何に先を見通して,幾つかの課題を克服して前に進むかが重要になってくる。ここでは,専門的な深さよりも,視野を広げた洞察力が必要で,必要な情報が的確に入ってくることも必須要件である。顧客要望への対応や,ライバルの動向など,競争下でのリーダとしての采配が成否を分けることになってくる。
プロジェクトマネジメントを知識として吸収し,活用することはもちろんのこと,知識としての見識よりも,現場第一線での応用力と云った場面場面での最適な判断力が必要となってくる。もちろん,初めから何でもできる人は居なく,幾つかの失敗を経験しながら,次第にその判断力の精度を高めて行くことになる。
上司や幹部からのムリな要求
専門的に優れたリーダが苦手に感じることが,上司や幹部からの要求への対応である。技術的な内容のように,きちっと論理的な判断では済まない要求への対応もしばしば起こる。無理難題な要求も結構起こってくる。それは論理的に矛盾していると逆らっても,上からの命令指示は絶対的なことが多い。有無を言わさず行動しなければならないことがある。
こうした対応は,組織で活動している上ではあまり珍しいことではない。トップが変わり方針が変わることなんて日常茶飯事の出来事である。こうした,技術面では割り切ることのできないことがリーダには降りかかってくる。もちろん,論理的に反論することが禁じられている訳ではないので,主張すべきところは堂々と行って構わないが,通常一般的には,道理が通用しない現実が多い。
これが企業での活動であり,それに一々文句を付け,前に進み出すことを怠っているようでは,なかなか世の中を渡って行けない現実がある。もちろん,すべて迎合してしまう必要は毛頭無いが,上手く自分の中で消化して活動が前向きに進んで行く方策を見つけることが必要なことも多い。決して世渡り上手な技術リーダにはなって欲しくない。それを部下達が見習うと,日本の将来の技術開発の未来への展望が無くなってしまう。
技術リーダの役割は重要である
[Reported by H.Nishimura 2016.10.10]
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