■職場の問題点とその解決策 15 コストダウン 2 (No.493)
コストダウンは技術者の重要な仕事であると云うことを先ず述べたが,それでは具体的にどのようにコストダウンを図って行くのか,そのやり方について述べてみよう。
コストダウンのネタの見つけ方
材料費
原価の中で材料費が占める割合は大きく,それに目を付けるのが一番である。材料費は現状が各々どれだけ掛かっているかが明確であり,それよりも安い部材を探すことである。他で使っている部材や新しい素材など,検討する範囲は広い。また,技術者自身だけでなく,購買担当者がメーカーからの提案や或いは異なるメーカーの部材の検討を依頼してくることもある。
現状の部材は開発時に適切と判断したものであるから,安易な変更は落とし穴もあり気を付けなければならない。また,変更の検討に時間が掛かったり,或いは検討するコスト(設計変更の検討や信頼性の確認など)よりも少ないコストダウン効果しか出ないものは避けなければならない。
もちろん,購買部門独自で,購入方法の検討や,メーカーとの交渉など,材料費を削減する方法が検討され,設計者が関与せずに行われることも多い。ただ,設計者は全く関与せずではなく,こうした購買活動も把握して状況を知っておくことは必要なことである。
工数削減
工数も原価に占める割合は材料費ほどではなくても,結構割合を占めることがある。したがって,工数のムダな部分を削除することは効果的なことである。通常は設計者が工程変更する前に,製造担当者で実際に工程を流し,ムダな部分はすぐ判り,改善を加えることも多い。もちろん,製造仕様の範囲内での僅かな調整であるが,習熟と共に確実に工数削減が計れて行くものである。
製造仕様を変更しなければならないような改善提案は,設計者のところへ案件が上がってくる。現場からの提案は重要だが,技術的な背景など十分理解した上での提案では無いので,製品仕様に合致するかどうかの見極め,或いは検討コストと効果金額との比較など,設計的な見地からの検討が必要である。ただ,現場第一線からの提案は,実務的な内容であり,机上で検討しただけでは判らないものもあり,貴重な提案も多いので重要視して扱うことが必要である。
機械化
人件費の工数は結構高額になるため,機械設備の導入でコストダウンを図ろうとする試みも多い。海外の労務費は安い時代もあったが,だんだん高騰してきているので,昨今は機械設備化できる場合は初期段階から導入を検討していることが多い。昔は,機械による自動化で工程人員を減らし,コストダウンに貢献することも多かった。
ただ,新製品の導入時には機械化が間に合わない場合もよくあることで,そうした場合,機械化のメリットを享受するため,一定期間後に機械設備の導入を検討することもある。ただ,機械設備は専用化することも多く,製品寿命との兼ね合いや,汎用化への展開など,機械設備の償却が十分出来るか否かの検討は十分なされるべきである。
歩留向上策
製造工程では,投入したものが100%製品化される場合は殆ど無く,何らかの不良品が出てくる。この良品化の割合を歩留と云って,歩留の悪い製品は,歩留を向上させることでコストダウンを図ることができる。部品を組み立てるアッセンブリ工程を主とする場合は不良品は少ないが,材料から作り上げる工程では不良品と云うより製品化できる割合を歩留と称してその割合を高める努力がなされている。この歩留向上策は,即ち不良品として廃棄するものが減り,良品化するのだから改善ができれば効果も大きい。(歩留改善については,別途後述して解説)
設計段階でのコストダウン
一度製造工程で流れ出した製品をコストダウンするには,結構な検討が必要で,それに掛かる費用は大きい。開発した費用とまでは行かなくとも,設計変更の検討・手配,さらには改良品の信頼性確認試験などに費用を要し,また,製造工程の変更など習熟度が上がってきたものをリセットしてしまったり,ロスとみなされることが結構多い。
こうしたことを回避するため,設計段階でコストダウンのネタなどは徹底的に検討してしまうことが行われる。特に,商品寿命が限られているものなどは,製品化の後にコストダウンを検討する余地など無い。したがって,製品設計と共に,コストダウン設計を同時に行うもので,新製品開発ステップの少なくとも具体化設計の段階で,あらゆるコストダウンの検討を採り入れるのである。
部材の点数を削減することはもちろん,部材の単価を見極め,できるだけ安価で品質確保可能なものを選定,標準化や共通化を意識しながら検討を進めることが重要である。同時に,実際に製品を作る製造工程を想定して,工数を如何に少なくさせるかも検討しなければならない。
注意点
セットメーカの場合は,最終ユーザの顧客が対象なので,コストダウンを図ることに対して,改良品として製品価格を下げ,購入しやすい製品にするなどの処置で済むが,部品メーカなどは,勝手にコストダウンすることが間々ならず,ユーザの承認を必要とする場合がある。特に,自動車メーカへ部材を納入している場合など,製品仕様に使用している部材の名称などを記載していることや,管理工程図の提出などを求められ,製造工程の変更もユーザの承認を必要とされるケースが多い。
もちろん,ユーザにおいてもコストダウンによる変更に対する検討が必要となり,提案のタイミングや効果金額の提示などによって承認が下りないこともあり,部材メーカの独断は許されないシステムになっていることが多いので,十分な配慮をする必要があることを確認しておこう。
コストダウンのネタは現場に転がっている!!
[Reported by H.Nishimura 2016.09.05]
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