■リオオリンピック観戦記 2 (No.491)
リオディジャネイロでのオリンピック競技が終わった。今朝方の閉会式で幕を閉じるが,日本のメダルラッシュに,日本中が感動を覚える場面が繰り返されている。
女子レスリングの逆転劇
女子レスリングで金メダルラッシュだった一日があった。しかも,3人とも逆転劇での勝利であった。48kg級の登坂選手が残り5秒でポイントを挙げ逆転で金メダルを獲ったかと思うと,次の58kg級で伊調選手がこれも最後の瞬間(残り5秒ほど)での逆転で,オリンピック4連覇の偉業を達成する。残念ながらライブでは観なかったが,繰り返し放送されるテレビを観ながら,素晴らしい瞬間に感動を覚えた。
さらに,69kg級の土性選手がこれも先にポイントを獲られるが,取り返し最後には同じポイントだったが,高ポイントの2点を挙げたため,勝利したのだった。彼女もオリンピックは初めての経験なのに,自分の実力を遺憾なく発揮して勝利の女神を呼び寄せた。先の2人に続く,奇跡とも云うべき逆転劇だった。
いずれも,最後まで諦めない勝利への執念が見事に結実した瞬間だった。言葉で云うといとも簡単に聞こえるが,それを為し得る実力は4年間の厳しい練習の賜物であり,何としても金メダルを獲りたいと云う気持が誰よりも強かったのだろうと想像する。
さらに続く逆転劇
女子バトミントンのダブルスの金メダルも凄かった。1ゲームずつ取り合った最終ゲームで,16対19と後2ポイントで相手に勝利が転がり込むと云う絶体絶命のピンチから,一気に追いつき5ポイント連取して逆転すると云う離れ業をやってのけた。相手に決して気の緩みがあったわけではなく,積極的に攻める姿勢からの気迫からポイントを稼ぎ出したように見えた。最後の開き直りでもなく,普段の自分たちの実力を出そうとする松友選手のネット前での積極性が見事だったように見えた。高校時代からペアを組み,お互いの特長を活かした呼吸のあったプレーは素晴らしかった。
卓球男子団体決勝で,中国チームに敗れはしたものの,水谷選手が中国選手に一矢を報いた戦いも見事だった。10数回の対戦で一度も勝てなかった相手に,第5ゲーム7対10でマッチポイントを取られながらも,粘り強く戦い同点まで挽回し,一気に勝ち越した瞬間は底力を見せた瞬間だった。これもなかなかできることではないが,今回のリオオリンピックには最後の女神が微笑む瞬間が何度も訪れたように感じたのだった。
100m×4のリレー
これは私にとっては意外だった。決勝を迎え,予選がアメリカに次ぐ2位とはいえ,ジャマイカが当然金メダルを狙ってくるので,上手く行けば銅メダルは獲れるかも知れないと予想していた。しかし,蓋を開けると何と堂々とした2位の走りだった。9秒台を出す選手が居ない日本チームにありながら,解説で知ったのだが,バトントスの上手さでその分をカバーしていたとのことである。
詳細な部分まではよく判らないが,各個人の100m走の最高記録を足しあっても40秒は切れない。それなのに4人のリレーになると37.60秒と縮まる不思議さ。これは如何にバトンタッチの瞬間に加速できているかがポイントで,前の選手が早く加速し過ぎるとバトンタッチができないリスクが生じる。この限界に日本チームは挑戦していたようである。
試合後ボルト選手が日本チームを讃えていたように,バトンタッチの技術が素晴らしいものだった。試合後の何度も流されるビデオを観ると,1走と2走のバトンタッチがややスムーズではなかったように見えたが,後のバトンタッチはそれは見事になされていた。誰かがコメントしていたが,あの記録は誰かが9秒台を出して走っていたのではないかと。山縣選手のスタートダッシュ,桐生選手の追い上げの走り,そして最後のケンブリッジ選手のボルトと並走しながら最後まで落ちない走り振りは凄く印象に残ったものだった。
個々の選手が更に個人の記録を伸ばし,或いは4人を凌ぐ若手が台頭し,東京でのオリンピックでは金メダルを夢では無いことを証明して見せてくれた。
最終結果
日本のメダル数は,金 12個,銀 8個,銅 21個,合計 41個と過去最高のメダル数を獲得して終わった。
多少気掛かりなこと
今朝の毎日新聞に依ると,五輪「国策」で躍進,とある。つまり,JOCは五輪に向けた選手の強化策を採っていると云う。国立スポーツセンターやナショナルトレーニングセンターなどで,若手の優秀な選手を育成しているようである。今回のメダリストの中にもそうした国策によるプログラムで成し遂げた者がいるようである。
国策で力を入れることは決して悪いことではなく,反対でもない。オリンピックと云う舞台で,世界一を目指すことはスポーツ選手にとっては最高の目標であり,それを国が援助してくれることはありがたいことである。日本では起こり得ないことと思うが,今回のロシアのように国がメダルを獲るために,不正に加担したようなことになっては,本来のオリンピック精神に反することになる。
プロが認められ,アマチュアの最高スポーツ競技だったオリンピック精神は歪められた形にはなってきているが,アマチュアとはいえ,プロと何ら変わらない待遇が行われている今日,昔のような精神を言い出しても通じないが,お金を掛けて育成することがどこまでが許されることなんかは良く考える必要があるように思われる。メダル数を求め,国民を高揚させる効果は大きいが,気掛かりなことではある。
多くの感動をありがとう!!
[Reported by H.Nishimura 2016.08.22]
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