■職場の問題点とその解決策 14 コストダウン 1  (No.489)

新製品の開発は技術者としてやりがいのある仕事の一つだが,いきなり誰でも工学を学んだからできると云うものではない。かと言って改良技術的な仕事からできるかと云うとそうでもない。通常一般に技術者としては,開発を中心とした技術部か,又は従来あるものの改良などを中心とした工場技術に配属されることが多い。新人技術者にとっては,どちらもハードルが高く,徐々に経験を積んで技術を身に付けることである。ここでは,改良技術であるコストダウンについて考えてみる。コストダウンとは,広くは企業活動全般に亘る費用について削減して,利益を上げることであるが,ここでは技術者としての観点でのポイントに絞って論じよう

  コストダウンの狙い

技術者が関与するコストダウンは,製品改良の一つで,材料費を下げるか,工数を下げ労務費を削減するか,製品に要する原価の一部を削減することで利益を拡大しようとするものである。企業に於ける技術の仕事としては,製品開発ほどの派手さ,注目度は少ないものの,確実な収益源で,地道な技術活動であり,欠くことのできない仕事である。

製品寿命の短い製品には向かないが,いきの長い製品には非常に大切な仕事で,コストダウンした分はそのまま収益となるため,事業計画を立てる段階などでは,重要な仕事として,計画目標の数値をクリアすることが技術部門の役割として科せられる。もちろん,その計画の中には,確実に実現できるものや,ある程度チャレンジ的なものも含まれる。100%確実なものが見出せれば良いが,なかなかそうは易しいものではない。

なぜなら,容易に思いつくようなものは,既に開発する段階で検討が加えられていることが多いからである。しかし,開発時には無かった材料や部品が出てきたり,開発期間では十分検討する時間が無かった課題など,コストダウンを図ろうとする題材は探せば幾つかは見つかるものである。

また,工数削減の一つに,設備投資をすることで為しうることもある。即ち,従来は人手に頼っていたものを機械設備で補う,或いは取り替えてしまうことで,工数を削減して効果を出そうとするものである。ただ単に設備を導入するのではなく,事前に設備投資に対する効果を算出し,投資効果が十分なことを確認した上で実施することになる。

  事業計画時の検討

コストダウンの活動は常に行われているが,通常は綿密な計画の基に行われることが多く,その最たるものが事業計画である。事業計画は,非常に重要なものであり,年間を通しての計画が立てられ,事業体としての収支の検討が細部に亘って行われる。技術部門の役割は,新製品開発計画はもちろん,コストダウン計画も収支には直接大きな影響を及ぼすため,綿密な検討が行われる。各製品毎に,コストダウンのネタを洗い出し,限られた技術者でできるだけ効果の大きい案件を選び出そうとするものである。

技術部門としての検討は,効果金額と実施時期の目標値を明確に立てることである。即ち,コストダウン検討がいつまでに完了し,現場で実施できる時期がいつになるかを明確にし,年間を通しての効果金額がいくらかを示すことが求められ,それを事業計画の中に組み込まれる。つまり,コストダウン効果が事業計画の一部となるのである。したがって,確実に実施できないと事業収支を狂わす要因となるため,技術部門のリソース(担当者)がその仕事に充てられ,技術者の仕事が事業と確実にリンクされ,完遂することを余儀なくされるのである。

また,技術者にとっては,このように事業計画では確実に実施する案件が求められるため,事業計画立案時だけでなく,日頃からコストダウンのネタを探しておくことが必要で,常に意識していないと容易には見つからないものである。こうした仕事は,製品内容に精通するなど,ある程度経験を積まないとできず,新人は先輩技術者の目の付けどころなど,実践の中で学ばなければならない。

また,新人技術者としての役割は,自らネタを探し出すよりも,先ずは先輩から与えられたネタを,目標値通りに確実に実現させることであり,そうした経験から,自分の仕事が事業の収益に結びついていることを実感することが大切である。幾多の経験を積むことが,技術者として幅広い知識を得ることになり,その繰り返しが,経営に貢献できる重要な仕事を任される技術者に育って行くことになる。

コストダウンは技術者の重要な仕事である

 

[Reported by H.Nishimura 2016.08.08]


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