■職場の問題点とその解決策 13 生産性の向上策 5  (No.488)

これまで生産性の着目点は,稼働率だったり,管理工数の低減だったり,仕事の効率を如何に上げるかにあった。しかし,よくよく考えてみると,仕事の効率が上がったと云っても,その結果として生まれた商品が売れなかったとしたら,果たして本当に生産性が向上したと言えるのだろうか?

  効率よく仕事をすることとは?

生産性の向上は,如何に効率よく目的とする仕事をするかが問われている。製品開発で作り上げた商品が売れるか売れないかは結果であって,先ずは目的とする仕事(例えば製品開発)を如何に効率よく仕上げるか否かである。物づくり現場での生産性向上は,指標として効率性があるのは当然である。

したがって,生産性に直接貢献しない管理工数などは少ないに越したことはない。ただ,大勢が仕事をしている以上,バラバラで仕事をしているようでは,全体として効率が上がらないので,ある程度の管理者の仕事は必要不可欠なものとなることは十分理解できる。ただ,漫然と仕事をしていると,以前に述べたようにバカにならない管理工数を要していることが起こっているのである。

ただ無闇にスピードアップを求めたり,数字上の効率だけを求めるのは,偏った見方になる危険性もあり,よくよく生産性とは何かを考えることは重要なことである。ソフトウェアのところで述べたように,ソフトのコード行数をどれだけ早く書き上げたかどうかと云った点ばかりに焦点を当てていると,少ない行数で仕上げた優秀な技術者を見落とすリスクがあることをよく理解しておくべきである。

  真の生産性とは?

だが,効率だけを云々するのも,真の生産性に注目するならば,必ずしも正解とは言い難い。企業としては,やはり付加価値をどれだけ付けられたかで評価されるので,付加価値を如何に少ない工数で作り上げられたかを議論すべきではないだろうか?

しかし,付加価値を生産性の尺度にするのは,容易ではない。一人当たりの売上高の指標では,販売額の大小が付加価値とは比例していないので,生産性としての判断はできない。利益は付加価値の一部であるので,一人当たりの利益額で見るのも一つの指標だが,利益も付加価値よりも,他の要因,例えば円のレートで大きく変化し,これも指標としては使えない。

生産性 = 付加価値/工数 =OUTPUT/INPUT

(労働生産性=限界利益÷従業員数=(売上高÷従業員数)×(限界利益÷売上高))

一般的な指標として,上記のような労働生産性がある。これは,付加価値を云々できる指標である。売上高や利益ではなく,限界利益に注目することである。ただ,産業によって大きく左右されるもので,多額の設備投資を要する業種は労働生産性が高く,多くの人手を要する労働集約的な業種は労働生産性が低くなる。したがって,他業種との比較は少しムリがあるが,同業種で比較することはできるのではなかろうか?

労働生産性について調べてみると,国別の比較では,日本は先進7カ国では一番低く,2015年度では経済協力開発機構(OECD)加盟の34カ国中21位と低迷していると云う。これは,上述した産業によって差があり,日本のように失業率が低いと生産性の低い産業にも労働者が多くおり,ギリシャのように国が破綻寸前で,労働生産性が低い産業では雇用が保てず,結果的に労働者数としての割合が少なくなり,計算上労働生産性としては高くなることになっているようである。また,労働者数に国外からの流入者はカウントされていなく,日本のように国外からの労働者が少ないと,比較的低い結果になると云う。ネットでの情報なので,十分理解したものではない。

ただ,過去の経験から,生産性の議論を,労働生産性でしていることは,あまりお目に掛かっていない。これは製造現場での経験だからそうなのかも知れないが,企業としての生産性を計る重要な指標の一つであることを見直したいものである。

物づくり現場の技術者としては,労働生産性の向上に繋がるのは,やはり如何に市場で受け容れられる(ヒットする)商品を作り上げるかに掛かっているように思える。作業効率云々よりも,生産性を向上させる手段としては,ヒット商品を如何に創り上げるかに掛けた方がよさそうである。

 

生産性向上の究極は,売れる商品を如何に生み出すか!!

 

[Reported by H.Nishimura 2016.08.01]


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