■職場の問題点とその解決策 12 生産性の向上策 4 (No.486)
生産性を向上させる上で,検討課題になる一つに稼働率を如何に上げるかと云うものがある。つまり,設計者が本来の仕事である設計に掛かっている時間の割合を示すもので,本来以外の仕事(?)に時間を採られるようなことをしていては,仕事の生産性が上がらなくなってしまうからである。断っておくが,設計者が遊んでいる時間ではなく,必要な仕事をしているのであるが,生産性の観点で見ればムダな時間なのである。
管理工数の曖昧さ
グループで仕事をすると,必ず設計者以外にリーダが兼務するような管理者と呼ばれる存在が居て,全体の統率を取るなど全体をバランスよく効率的な仕事になるように配慮している人が居る。こうした人は,設計の実務をすることは少なく,仕事の内容が管理的なものであり,設計工数とは別の管理工数としてカウントされるのが一般的である。
仕事の規模や難易度,複雑度,更には関係者との調整が必要など仕事内容で大きく左右される。10人の設計者に対して一人の管理者であれば,全体の1割であるが,5人の設計者に一人の管理者だと,全体の2割にもなり,設計効率が悪く,即ち全体の稼働率が低下することになる。
管理工数の適当な割合は,仕事内容で大きく左右されるため,適切な値と云うのは仕事内容に依存する。もちろん,管理工数としては少ない割合の方が,仕事が捗ることは言うまでもなく,管理工数を削減することは生産性向上につながる。しかも,この管理工数は管理者だけの工数ではなく,設計者の所有する作業時間内にも,会議の打合せ,日報・週報など管理的な書類作成,メールチェックなど雑務の数々が含まれている。
設計者の管理工数は微々たるものと思っているととんでもない。8時間労働であっても,8時間まるまる設計に当たる訳ではなく,上述した実務に約1割,多い部署では15〜20%が管理工数に取られていることも珍しくはない。実際,技術部門の設計部署で,作業時間の統計を採ってみたことがあるが,自分たちが考えている以上に雑務に追われ,管理工数を増やす結果が出たのである。
稼働率の考え方
一般的に,WBSなどで仕事を分解し,作業時間を割り出し,メンバーを割り付けるが,設計者の稼働率を考慮した上で,配分を考える。この前提となる稼働率を90%とするか,85%とするかで,5%の違いが生じる。たかが5%と思っていても,大きなプロジェクトだと,日程に影響を及ぼすことが起こってくる。したがって,これまでの実績から,仕事内容を考慮して適切な稼働率をはじき出して計画することが重要である。
そうした観点から,仕事内容を詳細に分析し,できるだけWBSに落とし込み,作業時間の割り当てをきっちり行うことが必要なのである。もちろん,詳細分析に時間ばかりを要して,管理工数を増やしているようでは,本末転倒なので適切な割り切りも必要である。ただ,曖昧な部分を多く残してしまうと,結果的に次への改善に繋がらなくなってしまうので,曖昧な部分は少なくしておこう。
稼働率を上げる施策
@稼働率を意識する
稼働率はただ漫然と作業をしているだけでは良くならない。稼働率と云う考え方をメンバーが意識するだけで,向上する方向へ向かうことが多い。そのためには,稼働率を正しく測定することが必要である。これも測定に時間を取ることを少なくする方法の工夫は必要である。見た目(感覚的なもの)よりも,意外に稼働率が低いことに気づかされる。ずっと測定を続ける必要はなく,2W程度も測定すれば,そこそこ正確な値が出てくる。
A作業を分析する
作業分析すると,不必要な時間を割いていることに気づかされる。また,メールチェックなど,自分たちが思っている以上に時間を費やしていることにも気づかされる。こうした結果から,メール時間を制限している部署もある。また,WBS以外の仕事を極力無くすことも必要である。メールは容易に多くの人に配信が可能であり,メールの洪水を起こしているきらいもあり,メールを少なくすることも必要である。
B非作業時間を無くす
組織が複雑化すると連携など余分な作業が発生することがあり,連絡体系は極力簡素化することが望ましい。一番効果が大きいのは,会議を減らすことであり,連絡会なども最適化を図り,効率よく進めること。特に,集合時間の厳守,事前準備の徹底など細かい配慮が効率化を促進することになる。パソコンに向かっての作業は,非作業時間の把握が難しく,メンバー間での意識を高めるなど一工夫が必要である。
稼働率を意識して仕事をしよう!!
[Reported by H.Nishimura 2016.07.18]
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