■アベノミクスは失敗  (No.480)

安倍首相が増税を先送りすることを新しい判断をしたと述べ,衆参同時選挙はやらず,参議院選挙で国民の真を問うとしている。日本経済が伸び悩み,格差が広がっているにも拘わらず,アベノミクスの失敗を認めず,さらに推進すると述べている。このことは,将来に大きな禍根を残すことになり,再度,政治の話題を取り上げることにした。

  新しい判断とは?

安倍首相は前回の選挙で,増税を先送りにするが,2017年には経済条項を入れずに増税を実施するとして大勝利を収めた。これはアベノミクスを推進することで,経済が活性化し,生活が豊かになるとの見通しに立った判断で,それを国民は信じたのだった。しかし,日本経済だけが負け組になっている現状において,雇用者増加などアベノミクスは未だ道半ばと主張し,失敗だとは一言も言っていない。

そこで持ち出されたのが,「新しい判断」をしたと,前回の約束を棚に上げ,堂々としている。テレビなどの討論でも言われていたが,大人はこのように約束したことを破っても「新しい判断」で済まされる世界なのかと,子供達が見てしまうのではないかと。要は政治の世界は,一般国民の素直な気持ちとは全く掛け離れたもので,多数が支配していれば何でも許されるようにも見えてしまう。

自分の失敗や間違いをごまかそうする言葉が,「新しい判断」と云う言葉になってしまいそうな雰囲気さえ出てきている。三本の矢と云って三本目の経済政策が上手く行かないと,新三本の矢にすり替え,性懲りもせずアベノミクスを言い通す神経に腹立たしさを覚えてならない。また,こんなことを許している自民党の体たらく,更には,野党の腰砕けに,政治不信に陥らざるを得ない心境である。

2020年にはプライマリーバランスを黒字化するので,2019年の増税がギリギリであるとの説明もあるが,果たしてそうなるか疑問視せざるを得ない。要は将来に禍根を残すような政策は,一見近視眼的には国民にありがたい施策で,人気取りにはなる。即ち,当面の参議院選挙には勝ちたいと云うものでしかない。確かに,今日のような状況下で増税はより消費意欲を減らし,経済を活性化するには向かないことは,政治家でなくとも誰しも判っていることである。

しかし,この原因は何かと云えば,アベノミクスの失敗そのものである。世界経済の影響はそれほど無い。国民の消費意欲が上がらないのは,実質賃金が伸びず家計が苦しくなっており,しかも格差が広がって,国民の多くの低所得者層にしわ寄せが行っているからであり,日本の政治の失策である。これを隠そうとする以外の何物でもない。

  このままで本当に良くなるのか?

増税は社会保障などに充てるとしていたことが,遠のき益々格差が広がって行く様子である。一般国民の多くは,将来の禍根のことはあまり気にせず,目先の生活がどうなるかに関心が集まる。つまり増税先延ばしは賛成である人が大半である。プライマリーバランスがどうのこうのと議論している国民は殆ど居ない。しかし,政治家がそれであっては困る。将来の子供達に,今の大人のツケを払わすことになってしまい,日本がおかしくなる危険性を孕んでいる。

正直,アベノミクスが成功すると思っている国民はどれだけいるだろうか?一億総活躍社会など,ネームバリューは派手だが,本当にこのままで日本は良くなって行くのだろうか?アベノミクスは未だ道半ばで,成果は上がって行くと主張する自民党の議員の主張をマスコミで報道されているが,心の底から本当にそう思っているのだろうか?安倍首相しかいないので,同調しているだけでは無いだろうか?

そもそも,掲げた政策の総括無しにリセットを繰り返す政治家,これがまかり通るのが日本の政界である。サミットでも世界から笑い者になった日本,アベノミクスが上手く行っているとはG7の首脳は誰も信じていない。これが世界の常識である。それなのに未だアベノミクスにすがりつく日本。安倍首相に誰が鈴を付けるのか?最近は,ただ参議院選挙に向けて国民の顔色を窺い,人気取りに終始している今日の政治は,衆愚政治になっているようにも採れる。

すべては歴史が証明するであろうが,21世紀に日本で行われたアベノミクスが日本をダメにした,と云われないように,与野党問わず,今の政治家が日本の将来と真摯に向き合って,重要な役割を果たして欲しいものである。その背後にいる国民もしっかり政治に関心を寄せ,目先の損得に動かされず,将来を見据えてしっかりとした目を持ちたいものである。そのためには,政策そのもの善し悪しにも大いに関心を示そうではないか。

  国民の声が届くか?

政治家は国民に選ばれた人であり,誰よりも日本の将来を見据えて,言動することを求められている。だから,国民は通常は政治家に日本の将来を委ねている。しかし,その言動に疑問を感じたとき,国民は黙っていてはいけない。それを示す唯一の機会が選挙である。残念ながら衆議院議員の解散総選挙は行われない見通しで,7月に参議院議員の半数の選挙のみが行われる。

安倍首相は,アベノミクスの推進の信を問いたいとしているが,それにしっかりと応える権利が国民にはある。参議院の半数のみなので,衆議院の総選挙に比較すれば政局への影響は少ないとはいえ,国民の声を届ける大きな機会である。日本の将来,特に子供へツケを廻すことになりかねない重要な局面に,国民の声がしっかり届くことを期待したい。

*プライマリーバランス:基礎的な財政の収支(国債費関連を除いた)

アベノミクスをしっかり判断しよう!!

 

[Reported by H.Nishimura 2016.06.06]


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