■バーニング・プラットフォーム (No.424)
あまり聞き慣れた言葉ではないが,改革など本気モードで取り組むときに,用いられる言葉である。企業内の改革に取り組んでいたとき,コンサルタントから教わったものである。
バーニング・プラットフォームとは?
この言葉は,北海油田を採掘するやぐらのプラットフォームが火災にあったことに由来しており,何人もの犠牲者が出たそうである。しかし海に飛び込んで助かった人もおり,彼らは,命に関わる危険と察知し,やぐらからは10m以上もある夜の海に,それも凍える寒さをもろともせず飛び込み助かったそうである。つまり海に飛び込むことで命が助かる可能性があると認識したことがそうした行動をとらせた,と云う教訓で,企業などで大きな変革を行おうとするときの気持,姿勢を示している。
企業内での改革では,命に関わることまではないが,今までやってきた仕事の内容,制度などを変えることには大きな抵抗がある。この抵抗をもろともせずに大海に飛び込むような勇気,即ち,今のままではいけないと理解して真剣に(命がけで)取り組まないと実現できない意識が重要であることを呼びかけるもの,それがバーニング・プラットフォームである。
バーニング・プラットフォームは,全員が信じてもらえるもので,力強くなければ効果がない。このバーニング・プラットフォームのメッセージを上手く発信することで企業改革が上手く進んだケースは多い。このように,そこにいる当事者全員のおしりに火を付けて,危機感を煽ることが上手く作用することで,自らがどのようにすべきかを真剣に考えるようになり,その力が改革に結集すれば力強いものになる。しかし,このメッセージをどのような形で示すかは容易ではない。単に危機感を煽るだけでは,不安感になってしまう恐れもあるからである。単にバーニング・プラットフォームの状態を想定して事に当たろう,などと呼びかけても,それだけでは効果は出ない。
行くも地獄,下がるも地獄,と云った状況は,そう多くある事態ではない。しかし,その判断一つで命にも関わる大きな決断が迫られている状況であり,判断が正しかった(この場合海に飛び込んだ)としても,そう容易く助かる訳ではない。凍える海で堪え忍ぶことは想像を絶する過酷なことである。改革とは,そのような過酷なことを乗り越えなければ達成できないものなのであると云うことも教えている。
技術者のバーニング・プラットフォームとは?
技術者の仕事は,どちらかといえばこれまでの積み重ねで確実に目標に向かって進んで行くことが多い。地道にデータを積み上げ,確実に再現ができる方法を選ぶ。新製品開発でも,新しいことに挑戦することはあっても,改革のようなこれまでのやり方をぶっ壊すような過激な方法を採ることは先ず無い。着実に目標とのギャップを埋めながら目指す地点に到達することを心掛ける。
要は,与えられた時間・予算・マンパワーなどで,効率の良い仕事をして結果を出すことが求められる。プロジェクト・マネジメントなどを駆使し,計画したことを予定通りに着実にこなしていくことが役割であり,評価の対象となる。新しい発見など,ときには非連続な部分もあるが,殆どが連続的な内容で占められている。そこでは,命がけで取り組まないとできない仕事などは先ず無い。
しかし,いろいろな仕事を経験すると,ときに行くも地獄,下がるも地獄と云った切羽詰まった出来事に出くわすことがある。そうした場合,技術者の習性としてはこれまでの実績を活かした方を選択し,踏み留まって頑張ろうとするケースが多い。これで持ち堪えるケースもあるが,多くの場合タイミングを逸し,結果的に先延ばししただけでダメになってしまうことになってしまう。要は決断がなかなかできないのである。技術者だけではなく人間の習性でもある。
担当者として仕事をしているときはこれで良いかも知れないが,責任者として部下を抱えて仕事をするとなると,一つの判断ミスが経営全体に大きな影響を及ぼすこともありうる。バーニング・プラットフォームのような状況は,しばしば起こることではなく,重大な岐路に立たされたときに初めて起こることで,経験が無いことが殆どである。だからこそ,日頃の小さな判断でも,どちらを選択すべきかを十分検討し,結果を予測し,判断が間違っていないか検証を常にやっておくことが必要である。
人は咄嗟のときには,意外な力を発揮することはあるが,やはり普段からの判断を疎かにせず,きっちり突き詰める訓練が重要で,そうした経験が,いざというときにも発揮できるのである。判断が的確で,しかも早い人は,リーダシップを発揮できるし,部下からも信頼される。優柔不断では結果が付いてこない。
バーニング・プラットフォームでの取り組みも必要!!
[Reported by H.Nishimura 2015.05.11]
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