■世界遺産を考える 1 (No.407)
昨年9月から,大学の後期の授業で「世界遺産論」を受講している。一般大学生と一緒になって大学の講義を受けている。以前にも述べたことがあるが,京カレッジと称して,京都の多くの大学が一般人にも大学の授業が受けられるようにと,一部の授業を開放しているものに参加している。技術とは縁遠い話題ではあるが,お付き合い願う。
なぜ,世界遺産を学ぼうと考えたのか?
私自身,風景写真を趣味で撮り続けている。その中には,世界遺産に登録された文化遺産もあり,その素晴らしさに感激を覚えながらシャッターを切っている。近隣の京都・奈良にはそうした寺社仏閣が多い。或いは,海外旅行に出掛けたときなども,世界遺産に登録されている風景や建物に魅了されることもしばしばあった。それら数千枚に及ぶ写真を大切に整理保存はしているものの,ただ美しい・感動するなどで終わってしまっている。
昨年春,募集があり,大学の講義を選んでいる中で,「世界遺産論」と云う講義に目が留まり,世界遺産と云う制度の意義と問題点を,文化的安全保障や文明論の観点から触れ,一方的な講義ではなく,個人的見解を述べさせ,問題を共有し討議を行う,とあったので,興味が沸いて受講しようと思った次第である。
興味の中身は,何となく知っている世界遺産,有名なところで観光客が集まる場所としての世界遺産から,もう少し掘り下げて世界遺産を見るようになれば,今までの写真とは違ったアングルも浮かび,世界遺産の再発見にもなるだろうとの期待感も伴っている。また,改めて世界遺産を巡ってみようと考えている。
先ずは,世界遺産をネット上などから整理してみる。
世界遺産とは?(日本ユネスコ協会連盟 HPより)
1972年のユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて定義されている。
●文化遺産:顕著な普遍的価値を有する記念物,建造物群,遺跡,文化的景観など
●自然遺産:顕著な普遍的価値を有する地形や地質,生態系,絶滅のおそれのある動植物の生息・生育地など
●複合遺産:文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えているもの
世界遺産の登録基準
世界遺産リストに登録されるためには,「世界遺産条約履行のための作業指針」で示されている下記の登録基準のいずれか1つ以上に合致するとともに,真実性(オーセンティシティ)や完全性(インテグリティ)の条件を満たし,締約国の国内法によって,適切な保護管理体制がとられていることが必要です。
世界遺産の登録基準
( 1)人間の創造的才能を表す傑作である。
( 2)建築,科学技術,記念碑,都市計画,景観設計の発展に重要な影響を与えた,ある期間にわたる価値感の交流又はある文化圏内での価値観の交流を示すものである。
( 3)現存するか消滅しているかにかかわらず,ある文化的伝統又は文明の存在を伝承する物証として無二の存在(少なくとも希有な存在)である。
( 4)歴史上の重要な段階を物語る建築物,その集合体,科学技術の集合体,あるいは景観を代表する顕著な見本である。
( 5)あるひとつの文化(または複数の文化)を特徴づけるような伝統的居住形態若しくは陸上・海上の土地利用形態を代表する顕著な見本である。又は,人類と環境とのふれあいを代表する顕著な見本である(特に不可逆的な変化によりその存続が危ぶまれているもの
( 6)顕著な普遍的価値を有する出来事(行事),生きた伝統,思想,信仰,芸術的作品,あるいは文学的作品と直接または実質的関連がある(この基準は他の基準とあわせて用いられることが望ましい)。
( 7)最上級の自然現象,又は,類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
( 8)生命進化の記録や,地形形成における重要な進行中の地質学的過程,あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった,地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
( 9)陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化,発展において,重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
(10)学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など,生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。
※なお,世界遺産の登録基準は,2005年2月1日まで文化遺産と自然遺産についてそれぞれ定められていましたが,同年2月2日から上記のとおり文化遺産と自然遺産が統合された新しい登録基準に変更されました。文化遺産,自然遺産,複合遺産の区分については,上記基準(1)〜(6)で登録された物件は文化遺産,(7)〜(10)で登録された物件は自然遺産,文化遺産と自然遺産の両方の基準で登録されたものは複合遺産とします。
日本の世界遺産(2015.1現在,18件)
登録名 登録年 備考 法隆寺地域の仏教建造物 1993.12 姫路城 1993.12 屋久島 1993.12 自然遺産
屋久島国立公園白神山地 1993.12 自然遺産 古都京都の文化財 1994.12 白川郷・五箇山の合掌造り集落 1995.12 原爆ドーム 1996.12 負の世界遺産 厳島神社 1996.12 古都奈良の文化財 1998.12 日光の社寺 1999.12 琉球王国のグスク及び関連遺産群 2000.12 紀伊山地の霊場と参詣道 2004.12 知床 2005.07 自然遺産
知床国立公園石見銀山遺跡とその文化的景観 2007.06 平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺産群− 2011.06 小笠原諸島 2011.06 自然遺産
小笠原国立公園富士山−信仰の対象と芸術の源泉 2013.06 富岡製糸場と絹産業遺産群 2014.06
国内の暫定リスト(世界遺産候補地 ユネスコ暫定リストに記載)
暫定登録名 候補年 明治日本の産業革命遺産−九州・山口及び関連地域 2015 長崎の教会群とキリスト教関連遺産 2016 国立西洋美術館・本館 2016
暫定登録名(北から順) 候補年 北海道・北東北の縄文遺跡 佐渡鉱山の遺産 武家の古都・鎌倉 彦根城 飛鳥・藤原の宮都と関連遺産群 百舌鳥・古市古墳群 宗像・沖ノ島と関連遺産群 平泉の文化遺産−拡張申請
ここまでは,世界遺産の整理であり,もっと詳細を知ろうとすれば,インターネット上でいろいろな知識が得られるので,検索してみてください。講義の内容に触れる前に,下準備として世界遺産の知識として整理してみたものである。
次は,講義の中で学んだこと,感じたことについて続けて述べてみる。
(続く)
世界遺産と称するだけあって,世界に誇れる日本の宝に触れてみる
[Reported by H.Nishimura 2015.01.12]
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