■Fコストについて 5 (No.386)
Fコストが事業計画など重要な取り組みとされる理由はなぜ?
Fコストの改善分は利益
これまで4回に亘ってFコストについて述べてきた。Fコスト改善が重要なテーマとして取り上げられる一番の理由は,その改善分がすべて利益につながるからである。新製品を開発しても製品の売り上げがすべて利益になるのではなく,原材料や固定費などを引き算して残った分が利益で,新製品で利益を上げるには,余程原価が抑えられた製品であるべきで,これは並大抵のことではない。
もちろんFコストの改善も,口で言うほど容易なものではない。しかし,掛けた労力に対して改善できた部分は確実に利益に反映できるもので,改善を狙ってみる価値は十分にある。事業計画の改善テーマとして,Fコストの改善が必ずと云って良いほど取り上げられるのは,ムダを省く以上の価値があるからである。
しかし,技術者にとっては新製品開発とFコスト改善のテーマを比較すると,やはり新製品開発に目が向く。技術者にとってFコストの改善は目立たない,裏方のような仕事に映る。確かに,Fコスト改善は企業にとっては新製品開発同様,利益を稼ぐ重要な仕事であるが,顧客を喜ばす,顧客に感動を与える仕事にはなかなか結びつかない。技術者としての評価事態も低いことが多い。
技術者にとって新製品開発と云うどちらかと云えば華々しい仕事ばかりではない。工場のメンテナンスや作業改善など地道な仕事もあり,それらは決してレベルの低い仕事ではない。工場にとっては新製品開発同様に,必要不可欠な重要な仕事であり,企業の利益はこうした地道な改善の積み重ねである。特に,Fコストの改善は工場のムダを省く有効な手段であり,技術者にとっても重要な仕事であるには変わりない。
体質改善にはうってつけのテーマ
Fコストが発生していること自体,そこにムダが発生している。企業としての体質の悪い部分が現れている。つまり赤字経営の企業などでは,こうした部分が垂れ流しになっていて手が付けられていないことが多い。品質が悪いとその後始末に追われ,限られた技術者でやりくりしようとすると,緊急事態のことの振り回される。そうなると,先に手を打って改善しようとしていた仕事などは後回しにされ,結果的には改善されないまま進んで行くことになり,こうした悪循環はよく見られる姿である。
ムリ,ムダ,ムラを省くとしたテーマがよく取り上げられる。トヨタなど自動車メーカが大きな利益を上げている下支えをしている活動である。一人の力では大したことはできないことでも,ラインで生産を担当している一人ひとりまでもがこうした取り組みをすることで大きな成果に繋がっている。日本の物づくりの根幹とも云える。
やはり大きな影響を与えるのは,トップの考え方であり,特に体質改善はトップの指揮如何で如何様にも変わる。Fコストの改善などを積極的に取り上げ,評価するような風土ができていれば,赤字経営が続くようなことは起こり難い。末端の一人ひとりまで浸透していく風土はトップの姿勢の反映でもある。
Fコストを最少にする施策
端的には品質を良くすることである。不良品を如何にして少なくするか,である。よく行われている方法は,使う部品やパーツを良品で組み合わせることである。パーツの一部に不良品が混じっていればそれを組み立てた製品は不良品となってしまう。部品で不良品としてはねることと製品になってから不良品としてはねるのでは,明らかに後者の方がコストが掛かる。つまり,不良品は部品段階で選別廃棄,又は手直しして製品として不良品を作らないようにすることである。
市場での不良は工場内での不良品以上にコストが掛かるのは言うまでもない。しかし,市場不良は予測がつかない場合が多い。リコールなどとんでもない損失が発生したことを耳にすることがよくある。ハインリッヒの法則と云うのがあり,重大な事故の背後には29の軽微な事故があり,その背景には300の異常があると云うものである。つまり市場不良などはなかなか予測がつかないと云われるが,その背後に29の出荷検査不良が見つかっており,さらには工程には300の異常があると推定される。即ち,工程の異常を素早くキャッチし,さらには出荷検査不良を確実に減らす方法を取っておれば,市場不良の発生には繋がらないのである。
ソフトウェアのバグ(不良)に関する修正費用が工程によって指数関数的に増加することは一般的に知られている。コーディングで発生したバグが,ユニットテスト,ファンクションテスト,システムテスト,市場の工程を経るが,後になればなるほど修復に掛かる費用が増大し,指数関数的に増えることが一般的に知られている。したがって,多くのバグを如何に早い段階でデバッグできるかが,ソフトウェアの品質を上げ,Fコストを抑えることができることになっている。だから,ソフトウェアではバグが存在することを前提に,レビューやテストを確実に行うプロセスが形成されている。地道なことであるが,確実にプロセスを踏むことが最大の効果をもたらしている。
Fコストを疎かにするな!!
[Reported by H.Nishimura 2014.08.18]
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