■Fコストについて 4  (No.384)

Fコストが下がらない理由を考えてみる。(続き)

  3.改善できる仕組みになっていない

実行力が伴わないもう一つの要因は,改善できる仕組みになっているかどうかである。

一つは,Fコスト削減がどれだけ優先度を高く,組織を上げてできているか,である。改善メンバーで分析まではできても,そのメンバーでは実行力がない場合は,元の機能組織に改善を促すことしかできない。しかし,各々の機能は,必ずしもFコスト改善が最優先課題ではない。したがって,改善課題が拡散されているだけであって,期待される効果は上がらないままになってしまう。これではFコスト削減にはならない。その対応として,改善する組織を作って徹底的にそのミッションで仕事をする人を充てるのも一方策である。但し,実行力を伴うメンバーを充てないと,人数の問題ではない。ここでも,投資対効果でどれだけの人が充てられるかどうかである。

もっと厄介な問題は,担当者が改善を目指していないことである。「そんなことはない,現場担当まで一生懸命改善しようとしている」とお叱りを受けるかも知れないが,実態を良く把握して欲しいので敢えて述べる。例えば,実際の作業者が,外部社員になっていませんか?彼らは改善することと,自分の仕事があることと裏腹の関係で仕事をしている。作業改善,合理化=「自分たちの職がなくなる」ことである。こんな中で担当者に改善を要求しても無理である。外部社員でなくとも,社員でも自分の所属が不安定な状態で,改善と云われても,先ずは自分の職の安定を考えることが先決である。こうした実態は,上では判らないが現場では起こっていることがよくある。改善を提案,実行することが,担当者のメリットに還元される仕組みを作っておかないと改善は進まない。

また,現場に厳しく追及すると,「改善すべきと言っているがやってくれない」と云う応えが帰ってくる。この現象を,現場は考えていないから単に言い訳している,と理解するか,本当に改善しようとしているが,なかなかその意見が反映されず,そこに問題が潜んでいる,と理解するかでは大きく違う。現場にはいろいろな問題点が見えているはずである。見過ごしてしまっているかいないかの問題はあるにしても,解決策は現場からである。その現場の意見を素直に取り込み,効果が予測できれば実行できるように,設備の改良や,治工具の改善をすることが必要である。些細なことでも,こうした地道な積み上げが必要である。

  4.Fコストは工場の体質を表している

「タスクフォースや組織を作ることで効果が上がると安心してしまう」罠にはまっていないか?確かに,何もしないより具体的な改善活動をするチームを作ることで,一見効果が出ることがある。しかし,そのチームの分析力や実行力がどれだけあるかを見極めないと,活動は熱心にやっていても効果が上がらない。毎週会合をやっているかいないかが,活動になってしまっている。目的は,Fコストを下げることで,毎週会合することではないはずである。

能力のない人を何人か集めて会議はできても,効果は上がらないのは自明である。これを見抜くのは,トップ含めた組織責任者がどれだけFコストに関心を持っているかである。当事者は熱心に間違いないと思ってやっている。しかし,効果が出ないのは,その視点が違っているとか,そのメンバーではできない問題が潜んでいるからである。これを効果を出せと叱咤激励しても無理な話である。効果がでない原因を,全体を俯瞰して探り当てることが必要である。これは,トップの仕事である。

「新製品は歩留が悪い。だからFコストが悪化する」このことは事実である。だから,新製品の歩留改善は,現状能力の歩留までは比較的速く,そのレベルまで行く。「鉄は熱いうちに打て」の諺があるように,固まりきっていないものを改善するのは容易である。しかし,固まりきったもの,即ち,慢性的不良の歩留を改善することは並大抵の努力ではできない。新製品の歩留云々が叫ばれるが,Fコストの額でみて,新製品の割合がどれだけ占めているのか。新製品の歩留悪化は目立ちやすいが,全体の比率で見ると少ないことが多い。但し,額が少ないから新製品は歩留は悪くても仕方ないと思ってもらっては困る。

本当にFコストを下げるためには,この慢性的不良にメスを入れなければ改善できない。これは工場の体質を変えることと同じである。それほど難しいことであることを肝に銘じて改善に当たって欲しい。

 

どれかに思い当たるふしはありませんか?

Fコスト改善が進まないことを現場の責任に押しつけてしまっていないか?

[Reported by H.Nishimura 2014.08.04]


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