■ソフトウェア技術者の教育 1  (No.370)

STAP細胞を発見したとされる小保方さんの研究者としての無知な部分が露呈されているが,それは氷山の一角であって,企業でも若い技術者の教育が蔑ろにされていることを目の辺りにする。特に,ソフトウェア技術者には,外部委託も多く,特に顕著になっている。

  技術者教育の実態

企業などでの技術者教育は十分行われているのだろうか?そんな疑問が,昨今の若い技術者の振る舞いから思い起こされる。技術者の前に,社会人としての社員教育が入社早々行われるが,最近の実態は把握できていないが,それなりに時間の長短はあったとしても行われているように思われる。特に,大企業では新入社員が大勢,研修所などへ行き交う光景から,想定される。昔も今も変わらないが,中小の企業になればなるほど,社員教育に時間を掛けるよりも,実践で働いて貰って,その中で教育して行くと云うことが行われている。

それでは技術者として,どんな教育プログラムがあるのかと云うと,昔のように実験計画法や品質管理の基本,統計手法などと云った実験などで基本的な手法として身に付けておくべき技法をきっちり教えているかと云うとなかなかそうでもない実態がある。基本的なことをじっくり教える時間が取れなくなってきている。基本的なことより実践的な技法が優先されている。実践でなかなか使うことの少ない基本的なことはつい回避されてしまっている。必要なときに必要な人が学べば良いとされているようにも見える。

技術者教育は即効性のあるものではない。しかし,基本的な教育が蔑ろにされてしまうと,やがては技術者としての基本的なことが判らない人が研究開発や設計に従事することとなり,技術の土台となるべき基礎教養が無い集団となり,何か困難に遭遇すると脆く崩れてしまう事態が起こる。実践には一見役立つように見える技術者であっても,基礎教育が欠落していると応用が利かなく,視野の狭い技術者になってしまう。それは,組織にボディブローとして弱体化させ,蝕んで行くのである。

  外部委託業者での教育

それでもまだ正規の社員は何かに付け教育される機会があるが,人材派遣会社など他社へ入り込んで仕事をしている人達は,殆どまともな教育を受ける機会を奪われてしまっている。要は人材派遣としての仕事となると,教育などは二の次で,実践的な仕事に就かされ,それに明け暮れする毎日になってしまう。つまり,仕事をしながらいろいろなことを身を以て覚えて行くことになる。だが,実態は身に付くことは少なく,消耗するだけの毎日なのである。

そうした人材派遣会社では,社員としての教育もいい加減で,最初の一日程度の簡単な内容で済ませているところが多い。社員と云う感覚ではなく,仕事をするコマの一つでしかない。特に,ソフトウェアの仕事では若い人が多く,与えられた仕事をこなして給料を貰うワーカーになりきってしまっている人が多い。最初は仕事を覚えることで精一杯なのでそれでも満足感はあるが,或る程度仕事ができるようになってくると,同世代の仲間などの状況と比較するなどして,その差を歴然と感じ,だんだん不安を覚えるようになってくる。

人材派遣会社では,仕事の段取りをするマネジャ的な人は居るが,一般企業の上司と部下に当たる教育をしてくれる上司の存在が希薄である。希薄と表現したのは,或る仕事に就くと,仕事の指示や進捗をチェックする上司は必ず居るが,その上司はあくまでも仕事上の上司で,育成など成長を助言する立場での上司ではないことが多い。仕事の出来不出来を判断するが,目標を定めたり,計画を立てたり,成長過程で必要なアドバイスを親身になって指導してくれる立場ではないことが多い。そうした役割そのものを上司に与えていない。

  ソフトウェア技術者の教育について

最近の技術者の大半はソフトウェア技術者になっている。もちろん,従来のハードウェア技術が無くなった訳ではないので,ハードウェア技術者である人も結構居る。ハードウェア技術者の教育については,従来通りきっちり道筋が出来上がっているが,ソフトウェア技術者にとっては,必ずしもきっちりとした技術者教育の道筋があるのか,疑問に感じている。

そこで,今回からソフトウェア技術者の教育について,これまで感じてきたことを,述べて見ることにしたい。

(続く)

技術者教育の欠落は組織力を弱体化させる

 

[Reported by H.Nishimura 2014.04.28]


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