■製品品質と技術者 4 (No.367)
製品品質と技術者の関わりについて続きの話をする。
ソフトウェアの品質は設計者で決まる
前述したように,ソフトウェアの品質とは,殆どの部分がソフトウェアの設計段階で決まると言って良い。つまり,ハードウェアの品質保証と違って,品質保証部門が製品として信頼性を含めて最終製品で確認することでは,ソフトウェアの品質確保は難しいのである。ソフトウェアの品質保証は,設計段階に設計者と一緒になって,品質を作り込むことをしなければならないのである。
ところが,このソフトウェアの品質保証,即ちSQC部門の人材が不足している。設計人材が少なく,外部委託の設計に頼っている状態では,設計者のベテランがSQCを担当に廻る例はそれほど多くはない。幹部自体も,SQC部門よりも,開発の人材補強を明らかに優先しており,品質は二の次になっているのが現状である。ただ,SQC部門が充実したからと云って,製品品質が上がる訳でも無い。SQCが如何にして設計プロセスに入り込むかであり,これがなかなか難しいのである。結局は設計者自身が先導するプロジェクトマネジメントが上手く廻っているか否かが,製品品質のカギになっているように思われる。
だから,ソフトウェア設計者のリーダになろうとする場合,プロジェクトマネジメントを学ぶことは必須となっている。PMBOKなど世界的な指導書もあり,多くのリーダがこれを学んできている。逆な言い方をすれば,プロジェクトマネジメントは,本来,ハード,ソフトに拘わらず,プロジェクトを進める上でのマネジメントなのだが,実態はソフトウェア設計者が一番熱心に学んでいるとも云える。
製品品質は設計者が作り込むもの
繰り返しになるが,製品品質の要は設計者であり,設計者が製品品質を疎かにしているような企業では,良い品質の製品は生まれない。品質を担保する品質部門(呼び名は違っても)は,製品としてのトータル品質を見守る部門だが,製品そのものの品質,特に設計品質は設計者しか担保することができないと云っても過言ではない。特にソフトウェアは,設計品質がすべてであり,品質を確保するプロセスが確立できていないと品質の良い製品が生み出されない。これは前述したとおりである。
品質と云うと品質管理なり,品質保証なり,品質を専門とする部門がある。だから,品質は専門家に任せれば良い,と云う論理は今では成り立たない。嘗ての自動車会社の検査部門が市場における品質責任を一手に引き受け,責任と権限を持っていたが,昨今はどのようになっているかは知らない。私の想像の域だが,自動車にもソフトウェアなどが入り込んでいる現在では,検査部門だけで市場品質を一手に引き受けるには荷が重すぎるのではないかと思う。もちろん,従来のように市場品質に絶対の信頼をもって製品を送り出す意気込みはあって欲しいのだが・・・。責任の所在を明確にすることは組織としては重要なことであるが,実態を伴った権限と責任になっていることが重要なのではないか。
設計者が品質を重要視することは大切なことではあるが,全社的なスローガンで叫ばれている品質第一をそのまま鵜呑みにするのではなく,きっちりとした品質向上のプロセスを厳格に遵守し,愚直に品質を作り込むことを怠ってはいけない。それは品質第一でも何でもない。製品品質として当然なプロセスを行うことでしかない。それが着実に守られれば,品質第一と叫ぶ人が居なくても品質は十分担保される。品質,品質と叫んでいる企業は,未だに愚直に品質を確保し続けることができていない証なのであろう。
やはり,技術者は失敗することを恐れないで欲しい。初めて挑戦することに失敗はつきものである。ただ,同じ失敗は繰り返さないで欲しい。失敗から学ぶことも多い。その過程で技術者は成長を遂げていくものである。設計者の諸君は,今一度製品品質について考えて欲しいと思って考察してみた次第である。
製品品質は設計者が作り込め!!
[Reported by H.Nishimura 2014.04.07]
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