■ソチ 冬季オリンピック (No.361)
2014年冬季オリンピックがソチで2週間に亘って行われ,金メダル 1個,銀メダル 4個,銅メダル 3個で終わった。その間,いろいろなドラマがあったが,想い出しながらその感想を述べてみる。
羽生選手の金メダル
19歳で初めてのオリンピックであり,世界選手権でも優勝するなど伸び盛りの羽生選手には期待が集まっていた。大きな期待に押しつぶされる選手が居る中で,彼は団体戦で男子選手として一番最初に演技して堂々と1位に輝き,日本チームを元気づけると共に,これはいけそうな予感をさせてくれた。団体戦では惜しくもメダルを逃したが,その経験は個人戦で活かされた。
個人戦のショートプログラムでは,4回転ジャンプを始めとして,溌剌としてミスのない演技をみせ,これまでにない100点を超える素晴らしい出来映えだった。日本人としては,スラーッとした体つきでこれまでは体力にやや心配があったようだが見事克服し,後半にも加点が大きいジャンプを入れるなど,見ている方にも十分な安心感を持ちながら見られる演技だった。もちろん,深夜に行われていたのでライブで見ていたのでなく,結果が判ってから見たのではあるが。
ショートの点数が伸びたのに対して,フリーの演技は冒頭のジャンプで転ぶなど,やや精彩を欠くように感じられたが,解説者に依れば守りではなく,減点を恐れずチャレンジングな演技をして点数を稼がないと勝ち目は無いとのことである。男子の殆どの選手が転ぶなどミスを連発していたが,オリンピックだからと云うのではなく,限界に挑戦する演技を試みた結果だったようである。
金メダルを獲得した後でのコメントでも,素直にすみませんと,自分の演技が物足りなかったことを悔やんでる姿は,清々しく且つ1位に奢ることなく,冷静なものだった。他の選手のミスもあり,フリーでもトップで金メダルとしては十分なもので,日本中の期待を見事に達成してくれた。今回のオリンピックは10代の若者が活躍する場面が随所に見られたが,確実に世代交代が進んでいる印象を与えた。
スノボーの平野,平岡両選手
日本中のメダルの期待を驚かせてくれたのが,スノボーハーフパイプ男子の中3,高3の二人の選手だった。これは時間的に予選の試合はライブで見られたので,見ていてハラハラドキドキしていた。既に二大会連続優勝で,今回も金メダル有力候補の,アメリカのショーン選手が居る中で,神業のような回転を各選手が試みていた。
試技が2回でそのうちの高い点数で競う競技で,チョットしたミスが命取りになるような競技で,難度の高い技を見せないと点数が上がらず,ハイリスク,ハイリターンの競技のように思えた。予選を見てヒョッとしたらメダルが期待できるかもと思いながら眠り,翌朝,二人の快挙を知った。
中3の平野選手,高3の平岡選手,共に小さい頃から家族の支えを下に確実に才能を開花させ,世界でも十分戦える状態になっていたようである。始まる前には,おはよう朝日で上宮高校の制服姿で出演し,メダルの期待はされていたが,どこまで戦えるかは,正直言ってよく判らなかった。ただ,高校生でオリンピックに出る実力があるのだなあと感心すると共に,スノボーのハーフパイプと云えば,日本では10代の選手が活躍するスポーツだと思っていた。
結果は,ショーン選手を抑えて,15歳のオリンピック最年少のメダリストになった平野選手の高い演技力とそれに続いた平岡選手の勝負強い演技力が際立ち,日本で今回のソチのオリンピックで最初のメダリストとなり,日本中を感動の渦にさせてくれた。
葛西選手の銀メダル
10代の選手が目立つ中,41歳と云う最高齢の葛西選手が,後僅かで金メダルを逃し,銀メダルに輝いたことは,金メダル以上の感動を与えてくれた。何しろ,今回のオリンピックが7度目,個人としてはメダルを獲得したことが無いと云う,悲運の彼に,今回は女神が舞い下りた。並み居る競合の中,しかも若いエネルギッシュな選手が台頭する中で,41歳のおじさんが非常に頑張り,その姿は感動ものだった。
よく聞けば,中学時代に世界の強豪が集うワールドカップのテストジャンパー選ばれ,テスト飛行の距離が,正式な競技の優勝者よりも優っていたと云う,天才少年だったそうである。長野では本来は団体の金メダルの一員だったが,その前にケガをしてメンバーから外されたと云う不運もあったが,いつかは個人のメダルをと練習に励み,結果がついてこないオリンピックにもめげず,ワールドカップではレジェンドと呼ばれるほどのジャンパーになっていたようである。
年齢にも拘わらず良くやった,ご苦労さん,と云いたいところだったが,銀メダルの後のコメントが,4年後,8年後のオリンピックでも,メダルを狙っていくと云うのだから,その精神力や前向きな力強さには圧倒されてしまう。
メダルを逃した選手
金メダルの有力候補として世間から注目を浴びていた女子ジャンプの高梨沙羅選手は4位,フィギュアスケート女子シングルの浅田真央選手は5位に終わった。期待が大きかっただけに日本中がガックリと云う状況ではあるが,4年に一度のオリンピックで金メダルを獲得することが如何に難しいことかをマザマザと示した。
ワールドカップで常勝しながら,世界選手権で優勝しながら,オリンピックでなかなか成果の出ない選手は数多く居る。特に一発勝負のような競技では,何が起こるか判らない。もちろん,金メダリストは棚ぼたではなく,日頃の訓練の賜物であることには違いないが,勝負の分かれ目は実に微妙なものがある。決してメダルを逃したから,実力が劣っていたとは云えないものがあるものの,運を味方に付けた勝負勘の強い,或いは,強烈な声援のプレッシャーからストレス・緊張を感じるどころかそれを味方に付けるような精神力を持っている者が,勝ち運を掴んで行くようにも感じられる。
メダル以上の感動を与えてくれたと絶賛する声がある中で,やはり一番悔しい思いをしているのは本人だろう。その気持ちを表に出さず,実力がまだまだ足りないなど,冷静なコメントをしてくれていたが,その悔しさは誰にも云えないものだろうとヒシヒシ感じられる。この悔しさがバネになって盛り返した選手も多いので,是非,もう一度頂点を目指して頑張って欲しいと願うばかりである。
その他のメダリスト
銀メダルは他に,スキー・ノルディック複合の渡部暁斗選手,スノボー女子パラレル大回転の竹内智香選手だったが,共に金メダルにはほんの少しの違いで,金メダルに匹敵する活躍だった。
また,銅メダルのスキー・フリースタイル 女子ハーフパイプの小野塚彩那選手も,今回初めてオリンピックの正式種目になることを知って,3年間でここまで仕上げてきた努力家だそうである。スキー・ジャンプの男子ラージヒル団体も各自が負傷をこらえて一致団結して頑張った結果だったことも素晴らしかった。
彼ら,彼女らも,これまで並大抵ではない努力の積み重ねが,今回の結果をもたらしてくれた裏話を聞くにつけ,拍手を送りたいと素直に感じた次第である。
多くの感動をありがとう
[Reported by H.Nishimura 2014.02.24]
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