■消費税増税  (No.341)

安倍総理が来年4月からの消費税を5%から8%に増税する結論を出した。

  消費税の増税に関する賛否両論

デフレからの脱却が進み,ここのところ経済が上向き傾向にあることはいろいろな経済指標からも頷ける。ただ,消費者にとっては消費税が上がることは,即家計の支出に響くことでありありがたくはない。消費税は17年間据え置きされており,世界各国の消費税率を見渡しても日本ほど低い税率のところはない。ヨーロッパ各国は20%前後の消費税になっている。

国の赤字が膨らみ税収が伸びない中,社会保障費の増加は年々増すばかりであり,消費税を上げなければならない背景は多くの日本人が理解を示しており,今回の増税は致し方ないと思っている人も半数以上に達している。ただ,低所得者層や年金受給者層にとっては影響は軽くはなく,何かを節約しなければならないことになる。

賛成派の多くは,国の赤字をこれ以上増やすことは,次の世代への負担増を増すばかりで,財政の健全化を図る必要があるとの主旨に賛同,賛同とまでは行かなくとも致し方ないと思っている人々である。一方,反対派の人々は,根っから反対を唱えている人は少なく,今,この時期に増税するタイミングなのか,疑問を呈している,或いは,増税の前に,国会議員自らの歳費削減や定数削減など,やるべきことをせずに弱い国民に一方的に負担を強いるやり方に怒りを覚えている人々である。

つまり,日本という国として考えるならば消費税増税はやむなしと云うのが大半である。ただ,自分自身の生活を中心に考えると,消費税増税は大きな負担増であり,やって欲しくないと云うのが心情である。したがって,日本の国全体,将来の日本を考える余裕などさらさらない人々にとっては,消費税の増税は反対なのである。毎日の生活が大事であり当然のことである。政治は弱い人を助けることも大事であるが,同時に日本の国をどうするかの方がより大事なことは云うまでもない。

ただ,大義名分はその通りであっても,歳費の節税など自分の身を切ることを少しもしようとしないのは,政治家として如何なものかと思う。政治家とは,そんなレベルなのかもしれない。国家の命運を担っているなどと思っているのはごく一部なのかも知れない。期待すること自体ムダなことかも知れない。

私自身,年金生活者としては消費税増税は痛い話であるが,将来,次の世代の日本を考えるならば消費税増税は当然の結論であると思っている。やるべきことをしない政治家に腹立たしい気持はあるが,我が身は堪え忍んでも将来に明るい希望の持てる日本にしていって欲しいと願っている。

  消費税増税による経済への影響

消費税増税の目的は,社会保障など膨らむ予算に対する是正措置であって,増税で経済が萎んで税収が落ち込んでしまえば,何のための増税か判らなくなってしまう。初期の目的を果たせないことになってしまう。過渡期の一時的な落ち込みは致し方ないにしても,デフレに戻ってしまうようなことになれば元も子もなくなってしまう。その危険性を孕んでいる。

そこで政府は5兆円規模の経済政策を行い,経済の落ち込みをしないようにと検討がなされている。法人税の減税など企業が元気になり,景気が下向きにならないようにしようとするものである。ただ,企業のメリットが従業員の給料にまで跳ね返ってくるにはそう容易いことではない。次の製品に対する投資や設備投資に廻るのならまだしも,企業の内部留保で留まっているようでは困るのである。21世紀当初のように企業は儲かって内部留保を蓄えたが,従業員の給料は上がらなかった事実がある。つまり,給料に跳ね返ってくるのは一番最後であることが多い。

従業員の給料に跳ね返ってきて,収入が増えてこそ,購買意欲が増し,景気が上向くのであって,政府の狙い目はそうなのであるが,企業の考え方一つに委ねられており,景気向上の保証は何処にもない。今年度は円安の影響もあって輸出企業を始めとして,予想以上の利益が確保できそうである。来年の4月,消費税のアップのタイミングで,ベースアップできる企業がどれほどだろうか?期待はしたいが,多くは望めないだろう。

  消費税増税より優先するものは

上述したように,消費税が増税されることは致し方ないことだと思っている人が大半である。ただ,一番弱い,何も言えない消費者にだけ負担を押しつけていると感じている人が多くいることは事実である。

要は税金の収入が少なく支出が多いので多くの借金を抱えているのだから,収入を増やすこと,つまり消費税を上げることだけでなく,支出を減らす方策も,目に見える形,即ち,国民にも納得できるようなことが行われなければならないのである。議員定数を減らし,歳費を削減することも必要だし,余分な公共事業などムダな税金のバラマキは止めて欲しい。或いは,公務員の天下りなど,役職を点々とすることで退職金を貰うような付加価値を生まない仕事を無くすなど,支出を減らす方策は数え上げれば限りがないほどある。

収入源,支出源,双方バランスを取って対策が行われてこそ,国民は納得できるのである。どちらの対策も先送りされてきたから今日のような事態になってしまっている。優先順位は消費税のアップではない。税金の無駄遣いにも同時にメスを入れる必要がある。

真に将来の日本を考え憂うのであれば,自らの身を切るようなことをしてこそ公僕だと胸を張って言えるのではないか。弱い者に負担を強いる前にやるべきことがあることを十分考えて欲しいものである。

また観点を変えると,昨年の80円/ドルからすれば円安に振れ,ここのところ100円/ドル前後で落ち着いている。円高が経済を疲弊させていたことは事実で,日銀の思い切った金融政策も効を奏して経済が上向いている。この状態を少なくとも維持されないとすべてが狂ってしまう。消費税が増税する気運が高まったのも円安によるところが大きい。円安と云うより,円の実力相応なところでバランスされているからである。これが大きく狂わないようにするのが,何よりも一番重要な経済施策である。これは厳守してもらわないと困る。

  軽減税率の導入

消費税の高いヨーロッパ諸国は,軽減税率が導入されている。即ち,消費税としては20%前後であっても,食費など最低限の生活に必要な品には,低い税率(0%〜数%)が定められている。これは低所得者層に対する配慮で,税負担をできるだけ公平にしようとするものである。消費税が5%の低い税率では検討することは不要だったかも知れないが,消費税が10%以上に上がっていく過程では十分検討に値する内容になってくる。

導入するに当たっては,生活必需品として消費税を抑えるものとそうでないものの区分をどこで区切るか,或いは複数税率をどのように処理するか,いろいろな課題はあるようだが,社会福祉・介護医療のあり方含めて,安心して暮らせる日本をどのようにして構築するか,真剣に検討して欲しい。

すべての国民が納得できる案を待ってみてもいつまで経っても決まらない。国民の公平な税負担を考えるならば,一時的に低所得者に一定額の給付をするような暫定的なことを検討するよりも,恒久的な軽減税率の導入を検討することの方が重要ではないか。

消費税がアップされ国民の生活はどうなるか?

消費税の増税分が本当に社会福祉に充てられるのか?

 

[Reported by H.Nishimura 2013.10.07]


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