■日本のリーダー論 3 (No.299)
次は,自分の身近な存在としてのリーダーを考えてみる。
上司としてのリーダー像
一番身近なリーダーは自分の上司である。そのリーダー像となると,前述の日本国のリーダーや企業トップのリーダーと少し趣が変わってくる。つまり,前者は理想像や建前のリーダーであることが多いが,上司としてのリーダーとなると本音の部分が出てくる。言い換えれば,直接に指導・育成される立場となるので,革新的なリーダーよりも現実的,部下の面倒見の良いリーダーを求めるようになる。自分を中心としてのリーダー像を描くことになる。
つまり,実際自分が従って行動を伴にするリーダーとは,自分自身を引っぱっていってくれる人であり,自分がこの人に付いていこうと思う人である。そうなると,リーダーの理想論は横に置いておいて,自分が進む方向を的確に示してくれ,その方向に向かって進むことで自分の成長があり,将来に期待を抱けるような指導をしてくれる人になってくる。自分の将来を委ねられる人としてのリーダーである。
大上段に構えて日本のリーダーはと尋ねると国や企業のトップなど建前のリーダー像が浮かぶが,実際多くの人はリーダーと云うと,身近な上司的なリーダーを描き,自分を導いてくれる人を想像することが多い。一方で,自分がリーダーとなった場合,或いはリーダーとしての立場にある場合,果たすべき事は何かとリーダーとしての役割を考えることが多い。そのように身近な,親しみあるリーダーとしての存在である。
リーダーの役割
リーダーである以上進むべき方向(目標)を明確にすることは重要なことである。これはリーダーには必ずフォロワー(組織では部下)が居て,リーダーの指揮の下で目標に向かって行動することになっている。従って,進むべき方向や目標を明確にしないとフォロワーが自分勝手な思いで行動するようなことになっては,目標を達成することは困難であり,力を合わせての協働作業ができないことになってしまう。
次に,リーダーはチーム力を活かし全体最適を図ることである。何事も一人でやるには限度があり,チーム力を結集させて活動することが求められている。そのトップに立つリーダーは,チームとして力を発揮できるように務めなければならない。それには,個人の個性を活かし,伸ばすことが大切だし,全体の調和を取った全体最適になるようなリーダーシップを発揮することが求められる。
このことは,フォロワー(部下)の能力を引き出し,育成指導することに繋がる。つまり,リーダーの下でフォロワーが育たないようなことではリーダーの役割を全うしているとは云えない。但し,逆は真ではなく,部下が育ったからリーダーの役割を果たしているとは云えない場合がある。何事も為しうるのは人の努力の賜物であり,人が育ってこそ,組織は強く大きくなり,次の世代の優秀なリーダーが生まれることになる。このように人の育成はリーダーとしては必須の役割である。
このようなリーダーシップを発揮するには,率先垂範することが欠かせない。つまり,いろいろ言うだけで自分自らは何もしないようでは,人は付いてこない。自らが進んで実践し,手本となるようなことを指し示して,初めて部下が付いてくるのである。何でも自分がやらないと気が済まないと云うのではなく,いつでも自らもできる姿勢を持ちながら,必要なときには,リーダーとして前面に出て活動することができる人にはフォロワーからの信頼も厚く,活き活きとした集団となる。
物事はいろいろな場面で判断を必要とすることが多い。そうしたとき,リーダーは素早く的確な判断をすることが求められる。情報を部下に収集させることはあっても,また部下からの判断に対する情報や助言があっても,最終的な判断はリーダーが行う。それもタイミングを逃さないように素早く行うことが求められる。特に,昨今は情勢が混沌としていて,絶対的に正しいこと,或いは絶対的に勝ち目があることなどは少なく,混沌とした少ない情報の中での判断が求められる。その判断の採否が将来を決めることも多くなってきている。
情報が行き交う中で,リーダーの一挙一動に対して,部下に安心感を与え,信頼を得ることは重要なことである。部下に危機感を感じさせ鼓舞激励することは必要だが,無闇に不安感を募らせるようなことがあってはならない。リーダーが自信を持って行動することが,部下が安心して追随できることにつながるのであって,物事を先送りにしたり,情報により右往左往するようなリーダーは部下がその背中を見ており,不安感を抱くようでは上手く行くことは少ない。
リーダーに必要な特性
ハーバード流 リーダーーシップ「入門」より
- 情熱
- 決断力
- 確信
- インテグリティ(誠実さ)
- 適応力
- 強靱な精神
- 共感
- 自覚
- 謙虚さ
が挙げられている。これらを一つひとつ説明することは別の機会にするが,身近なリーダーを思い浮かべて各々の項目を見てみると,なるほどと思われる項目ばかりで,立派なリーダーと思われる人は,殆どの項目を兼ね備えていることがわかる。
これらの特性は,持って生まれたモノもあるが,各々が歩んできた人生の中で身に付けられたモノが多いと思われる。いきなりリーダーになるわけではなく,フォロワーとして,或いはサブリーダーとして歩む中で,各々が自然と,或いは努力して身に付ける特性なのである。
身近なリーダーからリーダー像を描いてみよう
理想的なリーダーよりも現実的なリーダーが求められる
[Reported by H.Nishimura 2012.12.10]
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