■日本のリーダー論 2  (No.298)

次は,日本企業のトップリーダーについて述べてみる。

  大企業ではサラリーマン社長が多い

日本の大企業のトップの多くはサラリーマンのリーダーである。サラリーマン社長は社内の競争を勝ち抜いてきた人なので,頭は切れるし,要領も心得て世渡り上手な人が多いようである。ただ,優秀なリーダーかと問うと,必ずしもそうではないことがある。それも,時代によっても違うし,おかれた経済状況によっても,トップになる人は違ってくる。高度成長期など業績がぐんぐん上がっているときは,業績の最も良い事業を担当しているトップが社長になるケースが多い。

一方,現在のような景気が低迷していて赤字状態などの企業では,抜本的な改革を推進してV字回復させることができるような人が抜擢されるケースもある。この場合は安定期のマネジメントをやるのではなく,進む方向を明確に打ち出し,社員一丸となってV字回復するための戦略を着実に実施できるリーダーシップを発揮できる人がトップになることを望まれる。こうしたとき社長になった人は,社運を賭けたような場面にも動じない腹の据わった判断が求められる。

大企業ではトップに上り詰めるまでにいろいろな経験が試される。大きな組織の長を何度か経験させられる。特に,海外会社の社長などトップとして判断する場面が多い経験を積むことが不可欠とされる場合が多い。つまり,トップの社長としての判断が的確にできるかどうか試される場面である。こうした経験を上手く乗り越え,しかもチャンスが上手く働く運も伴って始めてトップの座を射止めることになる。そこまで辿り着く間には,足の引っ張り合いとまでは行かなくとも,隙あらばと上を狙って居る人がそこらじゅうに居ると云っても過言ではない。

社長にもいろいろなタイプが居られるが,競争に勝ち抜いた,運の強い人であることには違いない。だから,ワンマンなリーダーシップを発揮して活躍するタイプと云うより,社内調整の上手い目線を常に上に置き,直属又はそれ以上の上司に信頼の厚かったことから,社外に対する発信力よりも社内に対する発信力が強く,どちらかと云えば保守的なタイプになりやすい。もちろん業績維持・拡大は最大使命なのでそれに全力投球するが,改革・革新的なこと,つまり前世代を否定するようなことはなかなかできない。

また景気などに左右されず,大企業のトップとなると,かなり大きな組織を動かす必要があり,組織マネジメントと云うか,組織力を如何に有効に活用させることができるか否かが非常に重要な役割になってくる。派閥とまでは行かなくとも,必ずしも全員が一致して社長の思い通りに動くかと云うと,なかなかそうはいかないのが実態である。人が動く以上指揮命令が通じやすいグループとなかなか通じないグループがあり,そうした組織間の問題を抱えながら業績を上げることに務めなければならない。

即ち,サラリーマン社長としての限界が自ずと生じることになってしまう。無事赤字を出さず,業績を上げて次の人にバトンを渡したい,或いは,会社の安定した状態を維持したいなど,責任感は強いが,根はやはりサラリーマンである。大胆なリスクを取った行動は慎んでいることが多い。だから,リーダー的と云うより,マネジメント中心の活動が多い。したがって,トップリーダーとしてぐいぐい企業を自分の思い通りにし,後生まで名を残すような日本の企業のトップリーダーには成り得ないのである。

  オーナー社長のリーダーシップ

中小企業ではまだまだ多いが,大企業でもオーナー社長が権力を振るっている会社も中にはある。このオーナー社長の場合は,権限の届く範囲も行き届いているせいかワンマンな社長が多いように感じる。サラリーマン社長に比較し,同意を得る人数も少ないからか,決断が早く,時代に即応したスピード感もある。

つまり,オーナー社長の場合は,何と云っても自分の会社であり,私物ではないが,こんな会社にしたいとの思いは強い。かっての日本の企業家リーダーである松下幸之助,本田宗一郎,井深大などはいずれも創業者であり起業家である。中小企業から大企業へと育て上げた人々で,その一声が社内の末端まで浸透するスピード・権力は今の大企業には少ない。

日本経済が混迷している現代,元気の良い企業の多くが,オーナ社長か或いは創業者など,会社として進むべき方向が明確で,且つ変革に対して前向き,決断が早いことが良い結果を生んでいる。その点が,組織問題など大企業病的な悩みを抱える多くの大企業と違うところである。

そうしてみると,新たにチャレンジしている起業家の中に,次の松下幸之助のような人が出てくる可能性が高いようにも感じるのである。現に,私が知らないだけで,日本にも世界に通用するような立派なリーダーがおられるのかも知れない。

日本のスティーブ・ジョブスよ,出てこい!!

 

[Reported by H.Nishimura 2012.12.03]


Copyright (C)2012  Hitoshi Nishimura