■日本のリーダー論 1 (No.297)
NHKの番組で,日本のリーダーについて有識者並びに一般の参加者を集めて議論がなされていた。日本の景気の低迷,政治活動の混迷はここ数年続いており,そこから脱出する糸口さえ見つけられない状況に陥っており,それらを嘆く声が多い。番組でも,強いリーダーシップを持った日本のリーダーを待望する声が出ていた。
ところが議論の内容を聞いていると,日本国のトップのリーダー像を描いている人も居れば,企業のトップのリーダー像,或いは職場の上司としてのリーダー像を描いて話をする人も居る。それに,個人の建前と本音が交錯すると,リーダー像が散漫になって議論が噛みあわない。ここでは,それらを整理した上で述べることにする。
先ずは,日本国としてのリーダーから始める。
強いリーダーが日本には居ない
政治が混沌とする中,強いリーダーシップを発揮できるリーダーを求める声は多い。日本の国のトップがころころ替わり,本当に日本のことをどれだけ良くしようと考えているのか判らない状態がここ数年ずっと続いている。デフレ脱却などお題目は唱えられているが,その成果は一向に見えない。国民全体が憂鬱な状態に陥ってしまっている。
そうした状態の中で,強いリーダーシップを以て日本国を引っぱってくれるリーダーが欲しいと願っている人が多いのは当然のことである。戦後の歴代首相は,いろいろ問題があった人も居るが,何となく印象的には,強引に自分の思うところを主張し,それを成し遂げてしまうタイプが居たように感じている。それは吉田茂に始まり,岸信介,池田勇人,佐藤栄作,田中角栄など日本という国をどのようにしようとするかビジョンを高らかにした政治家だったように感じる。そして実際に,日本を世界の名だたる経済大国に仕上げた人達である。
もちろん,首相独りの力を以てできた訳ではないが,そうした我が国の歩みを経験してきた50歳代以上の人にとって,ここ数年の日本国の落ちぶれた様ははがゆいどころのことでは済まされない。中国の台頭など,日本が相対的に弱くなってしまった要因は外的な変化も大きいが,そうした外的変化を先読みした対応ができなかったのは,日本を預かる政治家にも起因するところが大きいと思われる。ただ,日本が台頭した1960〜70年代とは違い,世界全体に行き交う情報量も様変わりし,変化するスピードも全く違ったものになっている。
こうしたグローバル社会を前にして,日本の島国的な発想で対処しようとしても,不可能な時代になってしまっている。即ち,以前は地道に努力すれば必ず報われる,みんなで同じ方向向かって頑張れば,それだけの成果が出ていたが,現在では,そのような時代では無くなっているのである。どちらに向かって進めば良いか,それが問われているのである。だから,リーダーの進む道の方向付けが重要になってきているのである。
果たして国民の多くが願う強いリーダーとはどんなイメージなのだろうか?
強いリーダー像とはどんなものか
ここ最近の数代の首相の逆のイメージと言ったら一番判り易い様な気がする。言ったことが守れない,思いつきの発言で官僚・部下を迷わせる,短期間で投げ出すなど,どこでリーダー教育されたのだろうかと疑わざるを得ない状況である。
世界中が混沌としている今日,やはり第一は,ビジョン(方向付け)が明確にできるリーダーの存在だろう。日本が何処に向かって進もうとしているのか,日本の将来ビジョンを国民の前に明らかにしてくれる人が出てきて欲しいのである。政略にうつつを抜かしたり,他党の批判ばかりしているような政治家は要らない。特に,衆議院選挙を前にして,得票数を伸ばすことしか考えていないリーダーなどを目の辺りにすると,そんな政治家は早く引退して若い人に委ねて欲しいと願うばかりである。
原子力発電をゼロにするか否か,消費増税の賛否,TTP参加の可否など,今回の衆議院選挙の論点がいろいろ取り沙汰されているが,各々は確かに重要な論点ではあるが,これらはいずれも日本の将来ビジョンを語るには不十分であり,日本のリーダーである首相を目指す人ならば,こうした各論を通じて日本国を将来どのようにするのか,明確に語って欲しいものである。自民党の安倍総裁が経済の立て直しを主張して,元気な日本を再び取り戻すような発言があるが,これでもビジョンとしてはまだまだ不十分で,もっと各党の党首はこのような論点を打ち出して欲しいものである。
また,もう一方でリーダー像としては,ぶれないリーダーが求められている。これも,前総理の菅直人,鳩山由紀夫に代表されるように,思いつきの発言が多く,その都度言っていることが食い違って,国民をあたふたとさせている。アメリカを怒らせてしまっていることにもなっている。他人の意見や民衆の反応などに敏感で,自分の考えの筋が一本通っていないから,ブレが生じてしまうのであろう。こうした人は,リーダーを支える参謀やフォロワーとしては十分力を発揮することができるのだが,トップのリーダーとしては能力不足と言わざるを得ない。
頑固で他人の言うことを聞かない人も困るのだが,日本国のトップがブレると,その部下たる国民の多くの人が右往左往することとなり,デメリットの方が大きい。やはり,上に立つ人,特に多くの部下を抱えた人は自らの信念を強く抱き,周りの多少の変化や影響にビクともしない心構えが重要である。
(続く)
総選挙を前に一度じっくり日本国のリーダーに相応しい人物を想定してみよう!!
[Reported by H.Nishimura 2012.11.26]
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