■ロンドンオリンピック TV観戦記 2 (No.283)
約2週間のロンドンオリンピックが終わった。メダルラッシュに沸いた2週間だった。
メダル数比較
過去3回のオリンピックのメダル数比較
2012ロンドン 38個 2008北京 25個 2004アテネ 37個 金 7 金 9 金 16 男 体操 1
ボクシング 1
レスリング 13 男 柔道 2
水泳 24 男 柔道 3
水泳 2
陸上 1
体操 17 女 柔道 1
レスリング 34 女 柔道 2
レスリング 2
ソフトボール15 女 柔道 5
レスリング 2
水泳 1
陸上 19 銀 14 銀 6 銀 9 男 8 男 4 男 5 女 6 女 2 女 4 銅 17 銅 10 銅 12 男 10 男 5 男 8 女 7 女 5 女 4
2004年のアテネ大会とメダル数の合計は38個と1個上回ったが,その内容は大きく違う。金メダルの数が激減している。
これは柔道で男子の金メダルが0,女子の金メダルも1個。それに比べ,アテネでは男子3個,女子5個と合計8個の金メダルを獲得している。この差が金メダル数の差となって表れている。
女子団体の活躍(卓球・バレー)
今回のロンドンオリンピックは女子の活躍が目立った。そう思ってメダルの男女を比較して見たが,上の表のように女子が優勢のデータにはならない。それは団体戦でのメダルが多かったからである。サッカーに始まり,卓球,バレー,バトミントン,アーチェリーなど,バレーを除く種目で,初めてオリンピックでメダルを獲得した競技が多かったからでもある。
卓球は中国の壁が厚かったとはいえ,堂々と銀メダルを獲得。準決勝でシンガポールを破り,決勝へ進んだ快進撃は,日本の卓球ファンならずとも,多くの感動を与えた。地力がついてきているとはいえ,チームワークの良さ,勝負強さなど,見ている人を大いに奮い立たせるものであった。
また,バレーでも銅メダルを掛けた韓国戦では,詳細なデータ分析の基に戦略を立て,韓国の弱点を徹底的に攻め,韓国向けに強い選手の先発起用など打つ手がずばり当たったようだった。どうみても体格では見劣りし,特に小柄な選手が六人中二人も入った状態で,ボールを拾いまくり,またサーブで相手の攻撃パターンを崩し,先行を許さず3セットを奪取した力は,オリンピックを目指して練習してきた集大成でもあったようである。
簡単に述べたが,日本人は欧米各国とは明らかに体格の差があり,個人技の種目ではなかなか同等に戦えない。ところがチームプレイとなると,如何にチームワークが良いかどうかが,勝敗の分かれ目になることがある。このチームワークの良さが日本人が得意とするところであり,今回のオリンピックでも,特に女子に於いて秀でたものがあったように感じる。もちろん,選手個々の地道な努力の積み重ねがあってこその話ではあるが。
なでしこジャパン
なでしこジャパンの活躍は一際立っていた。ワールドカップで優勝したときから,オリンピックで金メダルを獲ると高らかに唱えていた。正直,私自身は,金メダルを目指して努力する姿は素晴らしいが,そう簡単に金メダルは獲れるものではない。ヒョッとするとメダルが獲れない可能性だってあると読んでいた。ワールドカップの優勝がフロックでは無く,実力が備わってきているのは理解できるが,オリンピックの決勝リーグのトーナメントの一発勝負は運も味方しないと勝ち進めるものではない。
予選リーグは予定通り,危なげもなく勝ち進んだが,決勝リーグのブラジル戦はまずまずの戦いで勝ち進んだが,準決勝のフランス戦はどちらに勝ちが転んでもおかしくないタフな試合だった。特に,後半のフランスの怒濤の攻めには一瞬目を覆いたくなるほど,きわどい守りだった。これがなでしこジャパンが持っている勝負運と云われるものかもしれない。運と決めつけると,選手には申し訳ないが,よく守り抜いたとの一言で尽きよう。或いは,絶対に金メダルをとの,強い思いがなでしこジャパンの方にあったようにも感じる。
決勝戦は朝早く起きてテレビ観戦をした。個人技に優るアメリカに先制されるのは覚悟の上だったが,後半にもすぐ追加点を獲られるのは痛かった。その後の反撃で1点を返し,なおその後も惜しいシュートが何本か見られた。日本の目指したパスサッカーの集大成ができた試合だった。だが無情にもそのままで90分の時間が過ぎ,ゲームセット。最後にアメリカに敗れはしたものの,互角の戦いだった。金メダルを目指した試合が終わってしまい,その場で起きあがれない選手もいた。戦いきった戦士の姿だった。
表彰式の笑顔はグランドで戦っているときの姿とは一転,すがすがしい笑顔が溢れていた。本当にご苦労様と云いたい気持にさせられた。日本中を感動の渦に巻き,オリンピックを盛り上げる大きな役割を果たしたと云える。メダルは金には届かなかったが,初めてメダルを獲得できた思いは澤選手が一番感じていただろう。
ここでも澤選手の活躍について述べてみる。今回のオリンピックでは,それほど目立った,派手なプレー(ワールドカップ決勝での同点ゴールのような)は目立たなかったが,要所でのプレーは一流だった。最後の決勝戦のアメリカに対してのゴールも,澤選手が演出した。自らが積極果敢にゴールを狙い,そのこぼれ球を大儀見選手にアシストして獲得したものだった。また,準々決勝でのブラジル戦では,相手の意表を突く素早いリスタートで,大儀見選手がディフェンダーの裏を抜けてゴールしたものだった。いずれも,澤選手ならではのプレーで他の選手とは一日の長があったところだ。勝負は相手との駆け引きで,如何に隙をつくか,或いは,弱点を攻めるかなど,スポーツ全般で見られることであるが,なでしこジャパンは少なくとも,監督の采配含めて,戦術的にも優れた超一流の技であった。
オリンピックでの日本人の活躍は国民全体に大いに元気づけた
[Reported by H.Nishimura 2012.08.20]
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