■ロンドンオリンピック TV観戦記 1  (No.282)

ロンドンオリンピックの前半戦が終了した。予想以上のメダルラッシュに日本中が沸いている。

  サッカー男女の活躍で始まる

女子のなでしこは予定通り,予選リーグを初戦のカナダに2−1で勝ったのを手始めに,スエーデン戦を引き分け,南アフリカ戦も引き分け,決勝トーナメントに駒を進めた。第3戦の南アフリカ戦では,主力メンバーを温存して決勝トーナメントの戦いを見据え,控えの選手を大幅に投入して戦った。これは監督の戦術で,選手全員を一度ピッチに立たせゲーム感覚を取り戻させ,決勝トーナメントでのハードな戦いを選手層の厚さでカバーしようとするものでもあった。主力選手で勝とうと思えば十分に勝てる試合を,金メダルを狙う戦術上,予選リーグを2位通過でアメリカと同じゾーンに入ることを回避し,更には1位通過すると次の試合会場が500Kmも離れたところで,その移動だけでも選手の疲労を増すので,敢えてそれらを熟慮した監督の作戦であった。その作戦は見事に効を奏し準々決勝のブラジル戦を2−0でもぎとり,準決勝まで進んでいる。(万が一,ブラジル戦で負けていたら,マスコミは監督の采配が間違っていて,選手のモチベーションを下げたと喚いただろう。しかし,事なきを得た。)

一方,男子の方は大方の予想を覆し,初戦に優勝候補とされるヨーロッパチャンピオンのスペインを1−0で破る大金星を挙げ,その波でモロッコにも1−0,ホンジュラス戦は引き分けたが,無失点で予選リーグを1位通過した。決勝トーナメントの準々決勝のエジプト戦でも,その勢いは止まらず3−0で撃破した。深夜までテレビ観戦するほど熱心ではないが,夜の8時からのエジプト戦はずっと見ていても明らかに日本の方が優勢で危ない場面は殆ど無かったと云って良い。若さで勢いに乗った姿,試合を重ねる度に成長していくチームとはこのようなものなのかと感心させられた。女子のなでしこよりもメダルに近い気がするほどである。

  メダル獲得総数は多いが,金メダルは未だ2個

前半戦を終わった段階で,金2,銀12,銅13の合計27個で,既に北京オリンピックの26個を上回り,国別でも中国,アメリカ,イギリス,ロシアに継ぐ5番目である。金メダル数を優先した順位では,金メダルがまだ2個なので,15位になる。オリンピックの始まる前の予想では,金メダルが10数個と云われていたが,どうもそこまでは届かないようである。その大きな理由は柔道男子で,オリンピック種目になって以来,初めての金メダル0である。確かに柔道は日本のお家芸と云われ,一本投げの技の美しさは見事であったが,そうした時代からは隔世の感で,見ている我々日本人も多くが情けなく感じていると思われる。

確かに他の競技はメダルを獲れば褒め称えられるのに対して,柔道は金メダルを獲って初めてメダルを獲ったと云えるようで,銀,銅メダルでは敗者同然で見られるようである。しかし,この現象は裏を返せば,柔道が世界に広まったことで,日本のお家芸ではなくなっていることで喜ばしいことなのである。フランスなどの柔道人口は日本のそれよりも明らかに多くなっていると云う。要は他の競技同様,世界レベルを戦うことに変わってきているのである。

ただ,日本人にとって世界の柔道を見ていると,詳細なルールは知らないが,技の掛け合いよりもポイントの稼ぎ合いで,少しの間,攻めないと指導されポイントを失うため,組み手争いなどに終始して,しっかり組んで投げ技を競う場面は殆ど無い。これでもオリンピック毎にルール改正が行われ,少しは日本選手に有利になったとか?篠原監督が認めていたが,投げ技の切れよりも力負けだとか。確かに,他国の選手は,強引な力業で攻めてくることが多い。しかし,それでも以前は日本選手の投げ技のスピードが優っていたようである。しかし,研究され投げ技の切れの良さを見せる前に,力ずくに屈している日本選手が多かったように映る。

  メダル獲得数の多さは,競泳陣の活躍

アトランタオリンピックでは競泳はメダル0に終わり,それから立て直しが始まっている。戦後では04年のアテネ大会の8個を上回り11個を獲得した。これはアメリカ(金16,銀8,銅6)に次ぐ獲得数である。中国でも10個(金5,銀2,銅3)だった。但し,日本は金メダルは0である。

報道で耳にする限り,競泳チームとしてのまとまりも非常に良かったようである。入江選手のコメントでも判るように,「競泳陣は27人で一つのメドレーリレーをしているようなもので,最終競技の400mメドレーリレーの最終泳者がゴールにタッチするまでリレーが続いている」と,チームプレイに徹している様子が伺えた。互いに切磋琢磨すると同時に,励まし合って実力以上のものが発揮できたようである。

北島選手は世代交代でメダルは獲れなかったが,チームの中心的存在でみんなの心の支えになっていたようで,それ以上に若手が活躍したことで良い結果をもたらすことになった。実際のチーム事情がどうだったか外からは判らない。しかし,テレビの報道を見る限り,選手全員で応援席で応援するなどチーム一体となった盛り上げは,競技者にパワーを与えていたことには感心させられた。

競泳だけではないが,今回のオリンピックの強化に50億円強の費用が国から出ているようである。特に,選手の環境でリラックスさせる施設を選手村のすぐ側に作り,日本食を始め,トレーニングルームを完備させたり,日本での環境に近い状態で競技に臨めるコンディションを作り出していると聞く。確かに,異国で環境が異なると身体の調子が狂うのは人間誰しも起こることである。そうしたことを回避させ,実力通りの成果を出させる施設があったことも,メダル獲得数が上がった一つの要因でもある。

これから後半戦に向かうが,特に,チームプレイでの結束でまだまだ活躍があり,メダル獲得が期待され,我々日本人に大いなる感動を与えることがこの一週間あり,楽しみである。

[Reported by H.Nishimura 2012.08.06]


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