■大飯原発再稼働と計画停電  (No.279)

国民の議論の対象となっている大飯原発の再稼働が始まった。一方,我が家にも計画停電の通知が届いた。国民を二分している原発再稼働と計画停電について考えてみる。

  大飯原発の再稼働反対運動

首相官邸前や大飯原発の地元で多くの再稼働反対派の集会が開かれている。国会の事故調査委員会からの報告が発表され,福島の原発事故は地震・津波による天災と云うより,人災であったとの報告がなされた。つまり,3.11以前から,天災による安全に対する不備が指摘されていたにも拘わらず,放置されたままであった実態,特に,安全を重視すべき役割を担った規制側である原子力安全・保安院などが,原子力における専門技術的な見地などに関して,東京電力の方が優っており,事業者の虜になっていたことが示され,稼働優先,利益優先に行われた結果,安全対策が蔑ろにされていたとのことである。

福島の事故の検証も十分できていないままでの再稼働は反対である。これほど悲惨な事故を発生させ,まだ終結もしない状態での再稼働は反対である。など,それらの言い分は尤もであり,納得いく反対意見である。ただ,反対だけでは,解決にならない。現在の電力需要から電力が不足する事態は回避できない。国民の節電意識の高揚だけでは乗り切れる状況ではない。だから,安全面を検討した最低必要限度の原発再稼働をする判断をした政府見解は正しいと思う。

確かに,福島の原発事故の原因究明,及びその対策が万全でないことは不安材料である。原因究明が完全に行われ,対策が十分行われてからの稼働が本来の姿であることには違いない。しかし,時間軸で考えることが必要で,それを待っていては夏の電力不足は不可避であり,再稼働すべきかどうかの判断が素早く必要となり,今できる最善の安全対策を検討した中での,再稼働はやむを得ない措置であると思う。

原発再稼働,賛成,反対の二極対決の構図ではなく,電力事情を考慮したより安全な,そして安定した電力供給が行われる姿に,全国民が一致団結することの方がより建設的ではないかと思う。福島の悲惨な状況を判らないからそう言えるとの批判は甘んじて受けるが,電力会社の経営,地元原発関係者の生活などと云った部分最適な見地ではなく,将来の安心・安定した日本国として如何にあるべきかを問われている状態である。単に安全材料が無いから反対と唱える前に,電力不足で経済が成り立たなくなってしまう日本からの回避を含めて,日本の将来を全国民がよく考えてみることである。

  計画停電について

7月に入って,我が家にも計画停電の通知のハガキがきた。グループ分けのお知らせである。節電要請15%(前前年度比)もなかなか厳しい要求である。でも,何となく計画停電は起こらないのでは無いかとの淡い期待感がどこか片隅にある。実施されたことも無いので,どんなことになるか想像が付きにくい。個人的には真夏の暑い最中の2Hの停電はたいへんだろうな,くらいの感覚である。それよりも,日本経済への大打撃の方が気になる。

おそらく計画停電が実施されるまでは多くの原発再稼働反対派の人は,節電などで乗り切れると考えている。しかし,いざ計画停電が実施され我が身に不自由さが降りかかり,想像もしていないことが起こって来ると,やはり電力は必要で,停電は困ると云う意見に変わってしまうのではないかと思う。今考えるべきことは,計画停電が実施されたときの日本全体に及ぼす影響の大きさである。そんなことまで考えていられないと云った,自分中心的な考えの人がまだまだ多い。

原則,原発は減らしていくと云う考えと,即,原発不要とは違っており,前者は殆どの人がそう考えているが,即原発不要と云う人の意見が結構多いのは,やはり福島の事故の悲惨さを目の辺りにしたからであろう。計画停電も困るが,原発は危険だから再稼働も困るとの意見は判るが,両者が成り立つ解は無い。二者択一を迫られている場合でどちらを選ぶかである。

計画停電が実施されれば,一般大衆も困るが,一番打撃の大きいのは企業,特に中小企業の経営だろう。大企業は,恐らく関西圏から他の地方と云っても,日本国中が電力不足に襲われることになるから,海外へ事業移管していくことは容易に想像される。そうなると,停電で仕事ができなくて困るだけでなく,中小企業は,益々国内での仕事が無くなり,倒産するところも続出することになるだろう。その結果,日本経済の低迷は益々酷くなり,日本経済が成り立たなくなってしまうだろう。

計画停電が計画されるだけでも,企業経営者は頭を痛めており,これが実施されるとなると,本当に酷い状態が現実に起こり,海外へ出て行くところは増える。一旦そうした流れが始まるとくい止めることが難しくなり,そうなる流れが起こらない前に阻止されねばならない。既に,今,その瀬戸際に追い込まれているとの認識が必要である。原発の危険性による若い世代への影響を云々している多くの人は,計画停電に伴う日本全体の経済の疲弊による若い世代への影響をどのように感じられているのだろうか。原発反対はブームのような流れで,大衆迎合とまでは云わなくとも,我々自身が次の世代のことも十分考えた判断をしないと,大きなツケが廻ってくるのではないかと思う。

  今後の行方

再稼働実施が始まり,多少のトラブルはあったものの稼働しはじめ,電力供給に少しは貢献し,節電要請も緩和されることになった。安全面については,関係者を配置させ,万が一のトラブルにも素早く対応できる措置が取られている。これで安心とするには心許ない点が残るが,計画停電の発生確率が低くなり,何とかこの夏を乗り切れるのではとの期待感は大きい。

福島の事故の原因究明は,政府事故調査・検証委員会もそろそろ最終報告が出てくる頃である。各々が違った角度から検証して,原因究明と同時に再発防止に全力を挙げて欲しい。真の原因は人災との単純な割り切りではなく,天災・人災など複数の要因が絡み合って起こったもので,偏った見方をするのは良くないと感じている。人災だと誇張して人に於ける解決策で油断することがあってはならない。昔の人が言っているように,天災は忘れた頃にやってくる。自然を安易に見ることなく,事実の積み重ねから,的確な対策が採られ,再稼働している原子力発電の安全に貢献して欲しい。

節電努力は,個々の家庭はもちろん,多くの企業でもいろいろな方法で取り組みが行われている。それに引き換え,政局は選挙を控えた我が身のことで必死である。日本経済が良くならない元凶が政治にある。最近の政局を見ているとあきれてものが言えない状態である。日本経済の立て直しは最優先事項であり,待ったなしの状態である。政局にうつつを抜かす政党ではなく,経済の立て直しができ,日本の将来を安全・安心なものに委ねることができる政党を選びたいものである。それは一人ひとりの確固たる認識から始まる。

 

[Reported by H.Nishimura 2012.07.16]


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