■伝統産業から学ぶ 1 (No.271)
5月から大学の講座を受講している。「京(みやこ)カレッジ」と云って,京都の大学の講座の一部を市民にも開講しているものがあり,どんなものか興味があり,今年度は試みに2つの講座を受講することにした。その一つが,「京都の伝統産業の場・もの・ひとから学ぶ」と云う講座であり,その内容含め,感じることを少し触れることにする。
講義の概要・到達目標(募集要項より)
京都のものづくりの歴史と職人文化,伝統産業の現状について,講義と見学を実施します。伝統産業の5カ所の工房を訪ね,職人はどのような材料と道具,技術を用いながら,いかなる思いを抱きつつ,ものづくりに携わり,伝統を今に引き継ごうとしているかを目の辺りにします。こうした一連の現場体験を踏まえて,京都の伝統産業の今日的な意味と,職人の新たな役割について明らかにする,総括的な講義を行います。
受講の動機(志望理由)
受講申し込みに際し,なぜこの講座を受講するのか,その理由を書く欄があり,選考基準にもなるようで,次のように書いた。
「これまで電気製品の設計・製造に携わり,物づくりの知識・経験を積んできた。そうしたことから京都の物づくり,職人文化,伝統産業にも興味があり,是非この機会に学び,広く物づくりについて考察してみたい。」
いろいろな講座が並んでいたが,今更工学系の勉強をしても,と云う気があったのと,座学でじっと学ぶより,現場での観察から得られるものが多いのではないか,と。京都の近くに住んでいながら,殆ど上辺だけの知識しか持ち合わせず,じっくり学ぶきっかけができれば良いのではないか。特に,効率を重視した産業製品のものづくりにしか携わって来なかったので,それとは180度違ったものづくりの現場からものづくりの伝承として新たな発見があるのではないかとの期待もあった。
そもそも伝統産業とは何か,についても,清水焼,西陣織,京友禅など数え上げれば一杯あることは判っていても,どれ一つまともに説明できる知識はないし,その必要もなかった。これからも,説明する必要性はないが,固有の技術をどうして伝承され保存されようとしているのかには,技術者として興味が沸く。
伝統産業なので少なくとも何世代か技術の伝承が繰り返され,価値ある製品に仕上がる過程に,所謂職人技なるものが盛り込まれていくのであろう。同じものを再現良く,良質の品質で,安価に(コストメリットを顧客が感じる),大量生産する産業品と違い,どちらかと云えば一品モノを,手作りで良質に作り上げる技は,神業のようにも映る。多分,設計図面がきっちりあって作ると云うより,伝承で伝えられた技,カン,ノウハウなど暗黙知の塊がぎっしり詰まったものづくりのように感じている。それらが,一世代だけでなく伝統産業として育成されているその基となるものは何なのか,現場から学びとって見たいと思っている。
受講対象者
初めての講座が5/9から始まり,京都造形芸術大学 瓜生山エクステンションセンターまで行った。大学の構内に入るのは随分久し振りであり,どんな受講者がおられるのが興味津々だった。
若い学生は居なく,殆どが年輩者,若い女性(30代,40代)も数人は見かけるが,男性は定年後と思われる人ばかりで,20数名中,男性が10名程度のようである。名前とどこから来ているかとの自己紹介があり,大半は京都市内在住で,近郊の京阪神からが10名足らずのようである。詳しい自己紹介は全くなかったので,どのような動機で受講されているのかは全く判らない。共通点は,伝統産業に関心があるくらいで,私と同じような目的があると思われる人は少ないようである。
5月6月の8回の講座なので,5,6カ所の伝統産業を見学させてくれるところの現地を巡回するようである。講師の話では,伝統産業はこじんまりしたところが多く,見学者を一度に20人以上も受け容れてくれるところはごく限られているようである。だから,20人を超える受講者が揃って見学できる工房を見学させてもらうようである。
(続く)
伝統産業のものづくりは職人の技の伝承
[Reported by H.Nishimura 2012.05.21]
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