■環境変化への対応  (No.267)

今年度の入社式でのトップの訓話にも,変化に対応できることを求めているものが多い。

  なぜ,変化への対応が重要なのか?

高度成長期には,どこの会社も同じように先を競って,目指すところは同じで良かった。つまり,目的地が明確になっていたので,何処へ行こうかと迷うことはなかった。違いはあっても,どの会社もある程度頑張れば成長している時代だった。ただ,がむしゃら(我武者羅)に頑張っていればそこそこの成果が得られていた。現在の会社幹部は,そうした時代を勝ち抜いてきた人達である。

そうした会社幹部が,若い人に変化への対応を求めるのは何故か? 自分たちの若いときの時代と違って低成長時代にあって,頑張れども進む方向を間違えると会社を揺るがす事態になりかねない今日である。つまり,若い人に求めている以上に,幹部たち自身が変化への対応に窮しているのが実態である。身につまされているから,ついついそうした言葉になっているようにも感じられる。

もともと,社是やビジョンに,変化に対応しないと生き残れない,とする会社も多い。ダーウィンが言ったか言わなかったかは定かでないが,彼の進化論の説の中から引き出した言葉として,IBM社長だったガスナーが言った言葉がある。
「最も強い者が生き残るのではなく,最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは,変化できる者である」

小泉首相も同じ言葉を使って,所信表明を行っている。
「いよいよ,改革は本番を迎えます。我が国は,黒船の到来から近代国家へ,戦後の荒廃から復興へと,見事に危機をチャンスに変えました。これは,変化を恐れず,果敢に国づくりに取り組んだ国民の努力の賜物であります。私は,変化を受け入れ,新しい時代に挑戦する勇気こそ,日本の発展の原動力であると確信しています。進化論を唱えたダーウィンは,「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは,変化に対応できる生き物だ」という考えを示したと言われています。

以上のように,改革や変革を訴えるときに,必ず使われる言葉であり,当に,現代社会では,従来のままでいれば現状維持も難しく,衰退していくに外ならない状況下で,改革や変革は会社にとって必須要件になっているのである。

  変化に対応できるか?

変化への対応は会社全体としてもだが,我々個人としての仕事にも大いに関係することである。

すべての仕事(プロジェクト)において,当初計画通りに進むことは先ず無いと考えてよいだろう。つまり,経過時間と共に環境変化が伴い,当初検討していた内容から修正を余儀なくされることがしばしばある。そのとき,そうした変化に対応できるやり方ができるか否かは,仕事を上手く進める上では非常に重要なことになる。

自分を中心に物事を見ていると,なかなか環境変化が掴めない。変化を感じた頃には随分取り残されてしまっている場合が多い。それはリスクに対する対応に顕著に現れる。変化に敏感な人は予めリスクを予測し,事前にリスクが発生したときの対応方法を検討してある。ところが変化を読めない人は,リスクが大きな問題となってから初めて対応方法を検討し始める。これでは同じ対応でも,後者の方が後手後手に廻って受ける被害が大きいのは明らかである。

変化にもマクロ的変化とミクロ的変化があり,比較的にミクロ的な変化は把握が容易であり,対処の方法も直接的な対応で済むことが多い。数学的に言えば,ミクロ的な変化とは微分的な変化でその変化自体が判りやすく(感じやすく),対処方法も限られたものであったり,ときには無視しても良い軽微な,或いは突発的で自然と元に戻るようなものであることもある。ところが,マクロ的な変化は積分的な変化で,なかなか変化に気づくタイミングが遅くなる。結構おおきなうねり的な変化であり,それに対応できないと企業の生死を分けるようなものであることさえある。

  変化に対応できるようになるには?

変化に対応できるとは,変化に単に追随することでもなく,変化に流されることでもない。ある目標(目的)があってそれに向かおうとしているときに起こる内的・外的環境変化であって,目標も目的もない状態では変化でも何でもない,状況の流れに過ぎない。要は,目標や目的に向かう計画的な行動に対して発生する変化に対して,如何にして目標(目的)に向かう軌道修正を加えられるかどうかである。

つまり,先ずしっかりとした目標(目的)を見失わないことである。この目標(目的)が曖昧になってしまうと,変化に流されたままで所期の目標(目的)に到達しえないことになってしまうことが多い。目指す目標(目的)が明確でこそ,変化した状況に対して,進む道筋を修正することができる。現状と目標とのギャップに新たな課題が出てくるかも知れない。そうした課題の解決策を見出してこそ,変化に対応できていると言える。

 

変化に対応することは仕事の必須要件

 

[Reported by H.Nishimura 2012.04.23]


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